アルプスのあり方、変わり方

グリムゼル:印象的な山岳風景と水量豊かな貯水湖はどちらも有用 swissinfo/L. Koch

アルプスは観光の宝庫として、そして厳しい生活圏としても変化の渦に巻き込まれている。そんな中、スイスが残したいアルプス環境についての調査が実施された。

このコンテンツは 2007/09/17 15:26

調査を行った研究者たちは、地域特有の発展を奨励している。訪問客の評価は住民への付加価値として生かされなければならない。

1729年、アルブレヒト・フォン・ハラーが叙事詩『アルプス』を発表した。これがスイス山岳地帯の人気の走りだ。今では、毎年1億2000万人もの人々がアルプスに憩いを求めてやってくる。だが、この不毛の地は、アイスマンが発見されたことにより、およそ5000年もの昔からすでに狩りや採集の生活圏として利用されていたことも明らかになっている。

農業と林業の衰退

アルプスでトレッキング。歩きながら辺りをよく観察し、一息入れて土地の人々とおしゃべりをしてみると、アルプス一帯が変化の真っ只中にあることに気がつく。山岳農家はグローバル化に苦しみ、若者は都会へと出て行き、牧草地は荒れ果てて、種の多様性は低下を続けている。

それと同時に、観光や気候の変動による重圧も増すばかりだ。たとえば登山鉄道の経営陣は、冬の積雪量が減少しているため、より高い山頂の開発を狙っている。

国家研究プログラム「価値と付加価値に挟まれたアルプス環境と生活圏 ( NFP48 ) 」 の研究チームは、先日行った最終報告の中で、これからの発展の見通しを明らかにした。研究者たちは、気候の変動や高まる社会の要望のほかに、農業と林業の衰退もアルプスの環境と生活圏に大きな影響を与えると予測している。

スイスインフォは、「スイス連邦基金国家研究委員会」の派遣員としてNFP48に参加したパウル・メッセルリ氏に話を聞いた。彼は、「求められているのは需要に焦点を合わせた新しい環境設計だ」と言う。

各地の「色」を大切に

この調査結果の中心をなすテーゼは、「大勢のアルプス訪問客の評価は、この地域の住民への付加価値として生かされるべき」というもの。ベルン大学の経済地理学と地域発展の教授でもあるメッセルリ氏は、その例として地元住民への直接支払いや補助金、「原産地統制呼称 ( AOC ) チーズ」などの販売品を挙げる。

その際に重視すべきことは、地域を発展させるときの重点の置きどころだ。プログラムを率いたベルナルト・レーマン氏は、「至るところで同じものを提供してもあまり意味がない」と端的にまとめる。「多数の場所で少ないものを提供せずに、少数の場所で多くのものを」がモットーだ。

メッセルリ氏も、「たとえば、人口雪を降らせる地域を1つにまとめることも大切。そうすれば、残りの地域を別の保養やレジャーに利用できます」と話す。

自然公園は例外に

過疎化のために発展が望めなくなった地域では、何世代にもわたって利用されてきた耕地を自然の手に帰してやるべきだ。「しかし、自然公園に指定するかどうかは地元の住民が決めることで、外部の人間が口を出すべきではありません。それにはまた、交通機関や宿泊施設も必要です。このようなインフラが整っていなければ、素晴らしい公園があるというだけで、訪れることも滞在することもできませんからね」とメッセルリ氏。

しかし、アルプスのすべての休閑地が山岳地域の頼みの綱となるわけではない。求められているのは、価値ある自然が回復し、自然体験ともうまく結び付けられる場所だけだ。

建築ブームは不要

だが、このように需要に合わせた環境設計を行えば、新しい鉄道などの建設を増やすことにならないだろうか。「いいえ」とメッセルリ氏は断言する。彼は、「スイスアルプスクラブ ( SAC ) 」が行っている山頂地域を新開発から守る運動を支援しているのだ。

「ヨーロッパの中心に位置するスイスには、公共交通機関で快適に訪れられる氷河や山頂がどこよりもたくさんあります。この切り札は手放せませんけれどね」

興味深い発電技術

しかし、メッセルリ氏の頭の中にあるのは伝統的な耕地だけではない。たとえば、ベルナーオーバーラントのグリムゼル地域にある2つの貯水湖も、文明の力や技術がはっきりと目に見える素晴らしい「ハイテク山岳地帯」だ。水力の活用もまたアルプス圏の付加価値に属すると彼は言う。

「グリムゼルは、訪問客の評価から付加価値が生み出されている模範的な地域です。発電所の経営陣は、観光客に技術施設の魅力を気づかせる術 ( すべ ) を知っています。地域の人々もまた、訪問客に地元の天然資源を紹介したり、製品を販売したりし始めたところです」

swissinfo、レナート・キュンツィ 小山千早 ( こやま ちはや ) 意訳

「国家研究プログラム ( NFP 48 ) 」のテーゼ

アルプスの環境は何千年という時間が育んだ文明の成果である。

環境設計の目的は、食物確保と自然災害 ( 雪崩、洪水 ) 予防である。

共有財産であるアルプス環境の重要性は高められなければならない。

アルプス環境は有益な資源である。

住民は、訪問客の評価を付加価値へと変換させなければならない。

原産地統制呼称 ( AOC ) チーズなどの市場向きの製品と市場向きではない財産 ( 種の多様性など ) やサービスの理想的なミックスを各地で見つけなければならない。

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政治とアルプス環境

NFP48の研究者たちは、政府当局に対して、アルプス圏の計画策定と開発をより適切に調整するよう奨励している。

連邦と州は、アルプス環境の利用と保護の両立を山岳地域に委任している。

山岳地域の住民はそれに対し、補助金や直接支払いなどの新しく定められた補償を受けている。

地元の人々は、自分たちの「製品」であるアルプス環境について、つまり自分たちがどのようなサービスや製品を提供するかについて自己決定する。

アルプスの環境および生活圏に関する政府の価格調整には、地元の住民の教育が不可欠である。

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