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迷走する国民党

国民党、国民に3つのノーを突きつけられた上、内部闘争に揺れる swissinfo.ch

政権政党であり、連邦国民議会の最大政党でもある国民党が、内部分裂を起こしている。事の始まりは昨年末にさかのぼる。4年ごとに行われる全州議会と国民議会の合同連邦議会による閣僚の信任投票で、国民党を代表するクリストフ・ブロッハー司法相が不信任になったことだった。

後任としてグラウビュンデン州の国民党員エヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ氏が当選したが、あくまでもブロッハー氏を推す国民党は、政権政党から抜け、野に下ると宣言した。

国民党の縮小化

 内閣選挙直後、国民党は司法大臣に就任したヴィトマー・シュルンプ氏を国民党議員で構成する議員会議から締め出し、さらに6月1日には、同氏を支持し続けるグラウビュンデン州の国民党もろともヴィトマー・シュルンプ氏を強制離党させることを決定した。しかし、ヴィトマー・シュルンプフ氏はあくまでも国民党員であることを主張している。

 一方、サムエル・シュミット国防相は6月2日、自発的に離党を発表した。2000年の就任当時から国民党路線に合わないと同党から批判されていたこともあり、同僚のヴィトマー・シュルンプフ氏の強制離党に同調したのは当然の成り行きと見られる。

 今年に入り、新党発足の動きがグラウビュンデン州のほかベルン州の国民党員などから出てきた。国民議会での国民党員数は62人。第2政党の社会民主党より19人も多い。野に下ると宣言した国民党が、第1政党の座を守り続けることができるかどうかは、離反する党員がまとまって1つの新しい党を作るという動きになり、いかにより多くの議員の同調を得るかによる。

連立に亀裂か?

 スイスの内閣は7人の閣僚で構成される。国民党 ( SVP/UDC ) 、社会民主党 ( SP/PS ) 、急進民主党 ( FDP/PLD ) 、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) の連立で、その配分は連邦議員数に比例しそれぞれ、2人、2人、2人、1人。昨年の総選挙では緑の党 ( Grüne/Les Verts ) も20議席と議員数を伸ばし、閣僚ポストにあと少しで手が届く状態だ。

 スイスの政治の安定はこうした大連立にあるが、2人の閣僚が無所属となったことでこの安定は続くのだろうか。政治評論家ミヒャエル・ヘルマン氏は、連立党の構成数で見れば大連立は崩壊したが
「連邦内閣が幅広い支持を得ていることには変わりない。引き続き中道右派と中道左派で構成されている。中道路線のキリスト教民主党と急進民主党が大きく左や右に寄るような勇気はないだろう」
 という意見だ。

 国民党がグラウビュンデン州とヴィトマー・シュルンプフ氏を離党させた日には、国民投票も行われた。今回国民に問われた3項目はすべて国民党が支持したものだった。しかし、国民には3項目とも「ノー」をつきつけられ、同党は完敗した。スイスのメディアからは、有権者は党内闘争に嫌気がさしていることや、これまで国民に強力に訴える力があったブロッハー前閣僚の投票前の宣伝活動が、すでに効をなさなくなったとも評された日だった。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

政党別議席数

国民議会議員 
国民党 ( SVP/UDC ) 62
社会民主党 ( SP/PS ) 43
急進民主党 ( FDP/PLD )31
キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) 31
緑の党 ( Grüne/Les Verts ) 20

全州議会議員
国民党 7
社会民主党 9
急進民主党 12
キリスト教民主党 15
緑の党2

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