The Swiss voice in the world since 1935

人はいつスイスの一員となるのか?

Katherine Hermans

6月の国民投票で、新たな移民制限案「人口1000万人のスイスに反対」の是非が問われる。結果のいかんに関わらず、この議論は「一体何をすれば、スイス社会に統合された存在とみなされるのか?」という問いも提起する。

おすすめの記事

スイスでは、国民党(SVP/UDC)の「人口1000万人のスイスに反対」イニシアチブ(国民発議)について議論が繰り広げられている。住宅、インフラ、交通、公共サービスへの負担、そして経済における労働力の必要性など、多くのことが合理的な観点からその是非が論じられている。

▼国民党の移民削減案の詳しい内容は以下の記事へ

おすすめの記事
暑さによるストレス?チューリヒの湖畔の夏の風景。

おすすめの記事

スイスの政治

「人口1000万人に反対」案、スイスで6月国民投票

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの有権者は6月14日の国民投票で、国内人口に1000万人の上限を設けるイニシアチブ(国民発議)の是非を問われる。保守政党が提案した新たな移民制限案の主なポイントをまとめた。

もっと読む 「人口1000万人に反対」案、スイスで6月国民投票

しかし、移民というのは決して単なる数の問題ではない。それは感情の問題でもある。変化、新参者、そして誰がこの社会に属するのか、という問いに人々がどう反応するか。パスポートは法的な問題を明確にするかもしれないが、感情的な問題に責任を負うものではない。

「リサイクルもするし、スイスドイツ語もわかる」

私はスイスに住んで20年近くになる。ずっとここで働いている。スイス人の子どもが2人いて、子どもたちは地元の学校に通う。(ごみの)リサイクルもするし、投票にも行く。

私は週に一度、地元の団体でボランティア活動をしている。学校行事の後に椅子を片付けたり、新しいご近所さんにケーキを届けたり、留守の時に猫に餌をあげたりと、近所付き合いのちょっとした手伝いをしている。

スイスドイツ語もわかる。標準ドイツ語で返事をする時も、時々「gell」や「öppis」といったスイスドイツ語を挟む。やりすぎないように気をつけながら。

この国に馴染むには、だいたいこんな風に生活しているものだと思っていた。わざわざ言うほどのことではないだろう、と。

「書類上だけのスイス人」

ところが最近、近所の人たちと地方選挙について話していたときのことだ。まさにスイスがうまく機能している理由を物語るような会話だった。人々は情報に基づいて議論し、市民意識が高く、現実的に考え、地域に根ざした生活を送っているのだ。

しばらく耳を傾けてから、私も一言発した。するとすぐに、「そんなこと言わないで。あなたは書類上スイス国民なだけなんだから」という返事がきた。

皆が笑った。

私も笑った。悪意はなかった。まるで当たり前のことのように、何気なく会話に織り込まれた言葉だった。しかし、それは私に自分が何者なのかを思い出させた。

書類上はスイス国民。スイス人、でもそれは書類上だけ。

公式のゴールラインの向こう側

20年近くも住むところで、いざ自分の帰属意識が、一部の人々の目にはまだ仮のものに見えているのだと気づくのは、奇妙な感覚だ。

必要な条件をすべて満たし、パスポートを取得し、働き、税金を納めていても、公式のゴールラインの向こう側に、スイス人らしさの別のカテゴリーが存在することを常に意識させられる。

もちろん、スイスに限った話ではない。多くの国は、市民権があればそれで全てが解決すると考えている。しかし実際には、ゴールポストはただ移動するだけなのだ。

私の出身地であるオランダには、「真のオランダ人ではない人」を指す言葉がある。たとえオランダで生まれ育ったとしても、そういう人たちは「アロフトーネン」と呼ばれる。そしてもちろん、他の多くの国でも、移民たちは「あなたは本当はどこから来たの?」という質問を何度も耳にする。

社会的な承認は遅れている

問題の真髄はおそらく、適切な書類を持っているかどうかではない。なぜ多くの社会が、そこに属する者とそうでない者を区別する方法を探し続けているのか、ということだ。

帰属を明確にするはずのパスポートが、しばしば管轄を明確にするに過ぎないのはなぜか。形式的な承認は与えられても、社会的な承認は遅れるのはなぜなのか。

排除というものの奇妙なところは、それが必ずしも扉をバタンと閉めるような形で訪れるとは限らないということだ。時には冗談のように、もっと巧妙な形で訪れることもある。だからこそ、それについて口にすると、過敏すぎるように見えてしまいがちなのかもしれない。

ここには感謝すべきことがたくさんある。どうか信じて欲しい。私は本当に感謝している。

スイスは私に仕事、山々、ヤス(スイスのカードゲーム)、そして効率性を誇りとするこの国で家族を育てる機会を与えてくれた。しかし、スイスで外国人として生きるということは、しばしば二つの真実を同時に抱えることを意味する。ここでは居心地の良さを感じることはできるが、その感覚は必ずしも相手から同じように返されるとは限らない。

だからこそ、さきほどの言葉が私の心に深く刻み込まれているのだ。

決定的な問いが一つ残る

それは、その言葉が特に侮辱的だったからではない。むしろ、多くのことを気づかせてくれた。それは私に、社会統合には皆が同意するゴールラインなど存在しないことを改めて思い起こさせた。あるテストに合格すれば誰もが頷き、「そう、これで君は完全に仲間だ」と言うようなものなど存在しないのだ。真の仲間であるという最後のお墨付きを、常に自分だけのものとして取っておくーーそういう人たちはいるのだ。

もちろんスイスには、経済成長、インフラ整備、そして国の将来について議論する権利がある。しかし、民主主義国家は人々を受け入れ、パスポートを発給し、参加を促す一方で、彼らを完全に受け入れることを躊躇う可能性がある。私が言いたいのは、スイスが特に排他的だということではない。

むしろ、市民権が必ずしも社会的な承認を保証するものではないということだ。投票箱の枠を超えて、スイスはいつかこの問いに向き合う必要があるだろう。すなわち、帰属意識とは人々が成長していく過程で培われていくものなのか、という問いに。

著者の見解は、必ずしもSWI swissinfo.chの見解を反映するものではありません。
 

おすすめの記事

10言語で意見交換
担当: Jaberg Samuel

「人口1000万人」上限案は現実的?

スイスはどれくらいの人口を支えることができるとお考えですか?熟練労働者の不足への対処として、移民受け入れ以外にどのような手段があると思いますか?

125 件のいいね!
71 件のコメント
議論を表示する

独語からのAI翻訳・校正:宇田薫

スイスインフォではコンテンツの一部にDeepLやGoogle 翻訳などの自動翻訳ツールを使用しています。自動翻訳された記事(記事末に明記)は、編集部が誤訳の有無を確認し、より分かりやすい文章に校正しています。原文は社内の編集者・校正者によるチェックを受けています。自動翻訳を適切に活用することで、より深い取材や掘り下げた記事の編集にリソースを集中させることができます。スイスインフォのAI活用方針についてはこちらへ 

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部