安易に借金 裕福なスイス人
不景気、失業者の増加を背景に、スイス人も借金をする人が増加しているという。
スイスの国民一人あたりのGDPは3万6632ドル(UBS銀行資料)と世界有数なのだが、不景気で失業者も増加し、借金を抱える人が増えているという。しかし、収入の減少が直接の理由とされるのかは疑問のようだ。
不景気と失業。豊かなスイスでも不景気を理由にして借金をする人が増えている。
負債者にアドバイスを行い、借金地獄から救う活動をするスイス負債者援助協会によると、過去3年間にわたって、助けを求める人が増加しつづけているという。
豊かなスイスでも借金をするほど生活に困っている人の中には、はじめは軽い気持ちからという人も多くなっているようだ。
軽い気持ちで借金
スイス負債者援助協会では、今年は、すでに6月末までで220件の相談を受けた。去年と今年3月末までの15ヶ月間では相談件数は350件だったことからも分かるように、今年になって急増している。
不景気が理由といっても、失業し、失業保険の支払期限が過ぎたため収入がないという貧困に悩む人のほか、贅沢な生活スタイルを変えることができず、借金を重ねる例が目立っている。借金の返済のために節約するより、更に借金をする人ケースがいまの特徴。借金をしながらも車をリースし、通販で洋服を買う。スイス版のサラ金のようなローンに手を出して、税控除を狙おうとするなどする人もあるという。「このごろのスイス人は、簡単に借金をするようになった。いつのまにか大金の借金に首が回らなくなり、問題が大きくなってから相談に来る人が多い」とスイス負債者援助協会のユルク・クシュヴィント氏は、昨今の負債者の特徴を指摘している。
スイスでは1割の家庭が借金問題を抱えている。しかし、問題があっても、相談にくる人は少数と前出のクシュヴィント氏。 同援助協会では、相談にきた人でも生活スタイルを改善する意志のある人で、定期的収入のある人だけに節約方法など家計のアドバイスをしている。
借金が滞納の原因にもつながる
借金は滞納の原因にもなると、アルガウ州では、1ヶ月ごとに納税する制度を検討中という。
スイスでは、サラリーマンの納税も、自営業と同じく自己申告。前年の所得を一人一人申告して、次の年に数回に分けて納税する。日本のように月給から自動的に差し引かれる源泉徴収とは違うので、分割しても1回の支払額が大きくなる。負債を抱える人には大きな負担になり、滞納につながる。
失業者数の実際の姿
8月7日に連邦経済省経済事務局が発表した7月の失業率は、3.6%と2月から変動は見られない。しかし、人数でみると6月より1200人の増えた。
失業者保険制度が7月から変更になり、これまで520日間あった支給期間が400日に短縮された。 大手銀行UBSの分析によると、失業保険をもらっている人が失業者として登録されるため、数字から見た失業率は今後減少するが、実際の失業者数は今後も増加の見込み。雇用の伸びはGDP伸率が1.2%以上でなければ、期待できないという。
贅沢に慣れてしまったスイス人。定期収入のある人でも失業しかねない昨今では、余裕のあるうちから生活スタイルを根本的に見直して、「借金地獄」を未然に防ぐことが問われている。
スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)
2002年の統計(UBS資料)
スイスのGDP 2億6900万ドル
日本のGDP 3兆9440万ドル
スイスの1人あたりのGDP 3万6632ドル
日本の1人あたりのGDP 3万953ドル
労働統計(連邦経済事務局)
民間企業の平均月給(税込み2000年)5163フラン
平均労働時間 41.7時間(週)
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。