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スイスの「ドリトル先生」馬とお話しする

動物健康バランスセンターの創設者、ウルス・ビューラー氏と患者(馬)。 swissinfo.ch

大きな馬から小さい金魚まで「動物の声を聞いて」治療にかかる。そんな、風変わりな方法で動物を癒す、スイスのドリトル先生がいる。

ドリトル先生の正体は実業家だ。気に入った動物治療がないため、相続した大企業の社長を辞め、ザンクトガルン州のウッツヴィルにホリスティック医療を実践する動物健康バランスセンターを開設した。

 地元のウッツヴィル村では「馬の先生」とか「ホースウィスパラー」(馬に囁く者)と呼ばれ親しまれているウルス・ビューラー氏。ロバート・レッドフォード監督の映画『モンタナの風に吹かれて』で馬の治療に関わる主人公、ホースウィスパラーを思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、ビューラー氏は馬だけでなく、犬や猫から金魚までどんな動物も治療する。基本は「患者の声」を聞いての治療だから、スイス版の動物の言葉が話せる『ドリトル先生』(英ヒュー・ロフティング作)の方が近い。

動物にとって夢のセンター?

 このセンターを訪れる動物には例えば、傾いて泳いでいる金魚がいた。ビューラー氏は「水槽のポンプの電子スモッグがバランスを取れなくする原因だ」と診断。ちょっとした機械装置で電子スモッグの量を減らしたところ、金魚は真直ぐ泳ぐことができ、完治したという。

 ビューラー氏は「我々は動物に何が必要で、どのような治療法が良いかを訊ねる。この二つの正しい組み合わせが見つけられれば成功率は高い」という。3年前に開設した動物健康バランスセンターは肉体と精神を一体として考えるホリスティック医学(全体観的治療)が基本だ。病気は何らかの働きかけによって、患者自身の自然治癒力が活発になれば癒されるものであるという全体論的な考えに基づく医学思想だ。 

 センターは複数の建物から成り立っている。動物達は診断によって音、色と光による治療を受けたり、外からの電磁力を遮断し、自らの体が発散するエネルギーを反映する病棟に行ったりする。ポジティブなエネルギーを増やすと考えられている石英(クオーツ)が張ってある病棟もある。

転職のきっかけ

 同センター開業のきっかけは1992年、ビューラー氏の馬が障害ジャンプ大会の前日にびっこを引き始めたことだ。関節炎との獣医の診断に納得がいかなかったビューラー氏はホメオパシーを主にホリスティック医療を実践する獣医に馬を連れて行った。同獣医の診断は馬の食事を変えることだった。ビューラー氏がこの忠告に従ったところ10日後には完治し、この馬はその後8年間も競争を続けた。この経験がビューラー氏にとっては啓示のようだった。ところが、この素晴らしい獣医が引退してしまい、代わる人がいなくなってしまったため自分がやるしかないと決意した。 

 同氏が、祖父が創立したビューラー機械会社(社員6,000人)の社長職を退いた当初は多くの人が心配した。現在は重役会のメンバーではあるが、動物治療の方に熱心だ。

電子振動治療法

 モダンで気持ちの良い治療ホールで「患者」について「この馬は皮膚病と足が悪くてやってきた。一度、治ったのに尿の不調でまた戻ってきたんだ」と説明するビューラー氏。「結局、この馬は炎症や感染の体質があるということで振動療法をすることにした」と語る。振動療法(バイオ・フォーメーション)とは電子装置で振動を送り、患者の免疫機能を刺激する。これによって抗生物質なしで炎症を減らすことができる。ビューラー氏の信条は「生きとし生ける者は自ら治す力がある」だ。「我々は必要なサポートと環境を与えることしかできない。もし、治療が上手く行かなかったら僕が良い質問をしなかったか、答えの解釈が正しくなかったということだね。だって自然の摂理というのはなんとも見事周到にできているからね」と語った。


スイス国際放送   デール・べクテル と ミケエレ・アンディーナ(ビデオ) 
屋山明乃(ややまあけの)意訳

‐動物健康バランスセンターはウルス・ビューラー氏がザンクトガルン州のウッツヴィルで2001年から始めた。

‐動物健康バランスセンターは治療によって幾つもの建物に別れており、音や色による治療、波動法、運動療法、電子振動治療、動物コミュニケーションやマッサージなど様々な治療が行われている。

-ホリスティック医学について:精神・体・環境がほどよく調和し、最良の生の質を得ている状態を健康と考える。自然治癒力を癒しの原点におき、患者が自ら癒し、治療者はあくまでも援助するという考えで、様々な治療を選択・統合し、最も適切な治療を行おうとする。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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