スイスの視点を10言語で

スイス人の目から見た東京のストリート・ファッション

スイスファッションの窓口であるFashionshow.chを立ち上げたパスカル・グレコ氏(右)とシャルル・ヒエロミニ氏が『東京ストリート』のDVDを手に。 swissinfo.ch

ジュネーブで開催されているブックフェアの一環として5月4日から「ジャパン・漫画・フェスティバル」で日本文化が紹介される。そこで放映される『東京ストリート』を撮影したファッション撮影専門のパスカル・グレコ氏にインタビュー。

漫画だけでなく、ヨーロッパで何故、日本文化が流行するのかについてファッションショー専門の撮影家、グレコ氏がファッション界から考察する。

 パスカル・グレコ氏は男性モデルとしてファッション界に入った。小さい頃からの撮影好きが高じて、ファッションショーの裏方を撮影しているうちに、同じく撮影家のシャルル・ヒエロミニ氏と出会った。2人でスイスのファッションデザイナーを新しいメディアを通して助けるサイト、Fashionshow.chを立ち上げた。これより、2人の冒険が始まり『東京ストリート』を撮るに至った。

swissinfo :東京の街をありのまま撮影した『東京ストリート』はどうやって生まれたのでしょうか。

グレコ : 東京には「スイス・ファッションショー」でスイスのデザイナーたちを紹介する企画で訪れました。ファッション関係の仕事をしている我々にとって、東京の街を歩いている若者のファッションをみてインスピレーションが湧きました。相棒のシャルルと自然と街を撮ることになったわけです。

流行やブランド物に溺れる「ファッションの犠牲者」と言われるかもしれないが、ファッションが凝っていて、「狂いがない」と感じました。男性も女性と同じように時間とお金をかけたファッションをしているところは、他の都市では見られません。日本にしかブティックを出さないデザイナーブランドがたくさんあるのが、その証拠でしょう。

swissinfo : 『東京ストリート』に登場するコスプレ姿などもですか。

グレコ : コスプレは服の文化の極端な表現ですが、これは日本でしか見られない。原宿の交差点で7、8人の外国人カメラマンが待機して若者を待ち受けているのには驚きました。実はこのようなストリート・ファッションが雑誌に載って、世界中のファッション界に働く人の刺激になっているのですよ。

個人的な意見を言えば、女性のファッションが「可愛い」過ぎて子供っぽく、センシュアル ( 官能的 ) ではないのが残念だなあと思いますが。

swissinfo : スイスのファッションはこれに比べてどうですか。

グレコ : スイスではエキセントリック ( 奇抜 ) な服装には抵抗があるようです。いつも型にはまっている。スイスでもチューリッヒの方がスタイリッシュで独自のデザイナーがお店を構えていますが、ジュネーブは銀行員や保険屋などが多いので真面目なスタイルが多い。強いて言えば男性の背広姿が一番、冴えているといえます。お金持ちの都市だから有名な高級ブランドに傾倒しがちです。

スイスファッションが注目されなかった理由は市場が小さいからです。今でこそ、ローラン・メルシエなど有名なデザイナーが頭角を現してきましたが、スイスのグラフィック・アートや家具デザインほど有名ではありません。

swissinfo : それでスイスのファッション・デザイナーを助けるためにスイスファッションのサイトを立ち上げたのですね。

グレコ : そうです。スイスのデザイナーたちはお金がなく、細々と活動しているので、無料で外国からアクセスできる窓口をつくりました。我々のサイトを見れば間違いなく、スイスの才能あるデザイナーの作品が見られます。

swissinfo : 『東京ストリート』はストーリーがなく、ストリート・パフォーマンスやコスプレや露店などを淡々と写していますが。

グレコ : フランス語圏では大好評でした。こちらでドキュメンタリーを見た人の95%は「日本に行きたい」という反応が返ってきました。日本人には日常なので「それがどうした」ということなのかもしれませんが。

東京ほどカメラを写して面白い街はないと思います。建築にしろ、ファッションにしろ、音楽でもロンドンでも見られないものに巡り合えます。例えば、僕たちが写したアカペラを歌っていた4人のグループは後に「レディ・ママレード」という名前でデビューし、有名なレコード会社からCDを発売したと聞きました。

swissinfo : ジャパン・漫画・フェスティバルがジュネーブで開かれることも含めて、ヨーロッパでは日本ブームなのでしょうか。

グレコ : 日本は独特の強い文化を発信していると思います。中国でさえ、それほど強い特徴の文化を持っていない。さらに日本人は親切で他人に敬意を持って接する点が、スイス人が日本を好きな理由だと思います。ルイ・ヴィトンの店に入っても、笑顔で迎えてくれるのは日本だけではないでしょうか。

swissinfo、 聞き手 屋山 明乃 ( ややま あけの )

パスカル・グレコ氏はシャルル・ヒエロミニ氏とともにスイスの若いデザイナーを育てる目的のウエブサイトFashionshow.chを立ち上げた。

スイスを代表するデザイナー、ローラン・メルシエの他、ダニエル・ヘルマン、ニュイ・ブランシュ、ヘンリッヒ・ブランビヤ、トラン・ヒン・フー、アンヌ・セシル・エスピナッシュなどを紹介する。

2006年、日本で行われた東京ファッション・ウィークの「スイス・ファッションショー」の際に東京に滞在した2人は、今回、ジャパン・漫画・フェスティバルで上映される『東京ストリート』を撮影した。

『東京ストリート』は東京の路上をテーマに撮影した細切れのクリップで、一つの場面から電車マークをクリックして違う場面に「乗り換え」できるようになっている。ドキュメンタリーではなく、ありのままの東京の街を写したもの。ミントのファッションショーや文化服装学院などファッションがテーマだ。

- ジュネーブのパレクスポで開催されているブックフェアの一環として、5月4〜6日まで開催される「ジャパン・漫画・フェスティバル」では日本の漫画だけではなく、ビデオゲーム、カラオケや茶道など広く日本文化を紹介する。

- 『東京ストリート』は5日は15時、6日は16時に放映される。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部