8月15日、カブールの米国大使館上空を飛行するヘリコプター
Copyright 2021 The Associated Press. All Rights Reserved.
アフガニスタンの首都カブールが反政府勢力タリバンに制圧されたのを受け、同地のスイス外務省の事務所に残っていた3人のスイス人職員が退去した。
このコンテンツが公開されたのは、
2021/08/17 06:56
イグナチオ・カシス外相はツイッターで、外務省開発協力局(DEZA/DDC)の事務所職員3人が、15日夜から16日朝にかけて「(スイスの)パートナーの助けを借りて」アフガニスタンを脱出し、スイスに移送中だと発表した。
ドイツの通信社DPAによると、スイス人職員は、カブールにあるドイツ大使館職員40人と一緒にアメリカの飛行機に搭乗した。そして、カタール・ドーハに上陸した。
スイスの国務長官は13日、アフガニスタンの治安が悪化したため、開発協力局の職員を非難させ、事務所を一時的に閉鎖する方針を発表した。同事務所は2002年、タリバン政権崩壊後の人道支援の拠点として設置された 。スイスはカブールに大使館を置いていない。
カシス氏はツイッターで、スイスの人道的査証(ビザ)を得た約40人の現地採用職員とその家族合わせて約230人を避難させるため「全力で取り組んでいる」と述べた。
ロイター通信によると、スイス外務省はまだアフガニスタンに残っているさまざまな救援機関のスタッフ26人を避難させる手段を手配している。
空港は混乱
カブール空港は避難したい市民が殺到し、混乱している。外国人の出国も一筋縄ではいかない。
スイス外務省は16日の声明で「出国したいアフガン人と外国人が自由に妨げられることなくそうできるようにしなければならない。道路、空港、国境はそのために開かれている必要がある」と述べた。
また現地で起きている暴力についても懸念を示した。闘争に加わっている人々に対し、国際人道法や人権、特に民族少数派や女性・少女の権利を守るよう呼びかけた。
タリバンは過去10日間で国土の大半を制圧。米国が20年駐留した米軍の撤退を発表した5月から始まった動きは最終章に入った。
アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は15日、タリバンの勝利を認め国外に脱出。多くの外国機関が国外退去している。米軍は混沌とするカブール空港の鎮圧に急いでいる。
スイス・インターナショナル・エアラインズは16日、「ダイナミックな」政治情勢のため、現在アフガニスタン空域の飛行を回避していると発表した。
一時的入国を
スイス国内では16日、アフガニスタンの難民申請者を支援し、家族の再統合を促すための声が上がった。
亡命者を支援する弁護士団体は、既にスイスにいるアフガニスタン人には難民申請中かどうかに関係なく、一時的な滞在資格を与えるべきだと主張。またすでにスイスにいるアフガン難民に家族の呼び寄せを許可するよう求めた。スイスでは難民申請中の人は家族の呼び寄せが認められず、一時的滞在許可証の保持者は最低3年間待たなければならない。
特に未婚女性と少女を優先するよう呼びかけている。スイス難民援助機関(OSAR)とアムネスティインターナショナル・スイス支部も先週、同様の要求をした。
緑の党と社会民主党は16日、スイス当局に対し、人道的ビザを使ってスイスにいるアフガン難民の家族の呼び寄せを助けるよう要請した。また国際的な割り当て制の一環として、難民1万人の受け入れ・保護を求めた。
スイスは11日、難民申請を却下されたアフガニスタン亡命者の本国送還を「同国の状況の変化により、追って通告があるまで」停止すると発表した 。
アフガニスタンへの募金活動
スイスの人道的連帯・収集プラットフォーム「幸福の鎖」は、アフガニスタン危機の影響を緩和するための寄付を募っている。
「アフガニスタン」と明記し、ウェブサイト(www.glueckskette.ch)またはオンライン決済(口座番号IBAN CH82 0900 0000 1001 5000 6)でご寄付できる。
「幸福の鎖」はswissinfo.chも所属するスイス公共放送協会(SRG SSR)も出資。民間のメディアや企業とも連携している。
おすすめの記事
ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
このコンテンツが公開されたのは、
2024/05/06
スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。
もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
2024/05/03
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
2024/05/01
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/26
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/23
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/23
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/19
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/17
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/16
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
2024/04/10
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
続きを読む
次
前
おすすめの記事
スイスアルプスの絵に故郷を見出すアフガニスタン人
このコンテンツが公開されたのは、
2018/05/20
トゥーン美術館で開かれている展覧会「Uphill」。スイスアルプスを描いた絵画に、アフガニスタン難民と彼らを支えたスイス人ボランティアは何を思ったのか。
もっと読む スイスアルプスの絵に故郷を見出すアフガニスタン人
おすすめの記事
1枚の写真に秘めた望郷の思い
このコンテンツが公開されたのは、
2017/09/30
写真家ヴィヴィアン・オルミさん(57)がピノチェト独裁政権下のチリを逃れたのは20歳のとき。その時に持ってきた1冊の写真アルバムは、祖国の思い出が詰まったかけがえのないものとして57歳になった今でも大切にしている。そのような経験を持つオルミさんが、スイスに住む若き移民38人を、彼らが大切にするものと一緒にカメラに収めた。
もっと読む 1枚の写真に秘めた望郷の思い
おすすめの記事
アフガン難民一家、スイスで生きる
このコンテンツが公開されたのは、
2016/12/02
スイスインフォは、アフガニスタンから子供たちを連れてスイスに辿り着いたサジャディ家(仮名)の軌跡を、2015年から断続的に取材している。内戦の続く故郷を捨ててから5年余り。ベルンで暮らす一家のその後を追った。
もっと読む アフガン難民一家、スイスで生きる
おすすめの記事
「アフガニスタンは忘れ去られた」
このコンテンツが公開されたのは、
2015/11/20
スイスでは最近、アフガニスタンからの避難者が増えている。そのほとんどはバルカン地域を通る「民族移動」の流れに乗ってやってくる。7人家族のサジャディ家もこのルートを通ってスイスにたどり着いた。10月20日からベルン近郊で、慈善団体「救世軍」が運営する保護施設に暮らす。
もっと読む 「アフガニスタンは忘れ去られた」
おすすめの記事
スイス軍、アフガニスタンから撤退
このコンテンツが公開されたのは、
2007/11/22
スイス軍が参加する国際治安支援部隊 ( ISAF ) の役割は治安維持だ。しかし、現在は自衛のために発砲も辞さない状況となっている。スイス軍からは少人数が参加しているのみでもともとシンボル的な存在だが、憲法や法律を尊重す…
もっと読む スイス軍、アフガニスタンから撤退
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。