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スイス経済に活況が戻る

スイス株式市場でも強気の姿勢の企業が目立ってきた Keystone

少なくともスイスの大企業にとって2005年は笑いの止まらない年となった。上位150社の利益総額は645億フラン(5兆8000億円)。銀行の貸し出し額も当初の予想を上回った。

株価も堅調に上昇を続けている。上位150社の株式指標平均は前年比30%増を記録した。

 5年前の2000年、すでにスイス経済は1970年から数えて第4番目の活況を経験したが(上位150社の利益総額は574億フラン:5兆1000億円)、今回の利益総額はこれを大きく上回る。しかも経済アナリストは、世界経済の回復に伴って今後2年間のスイス経済も明るい見通しだという。

世界的好況の恩恵

 スイスの主要日刊紙、ターゲス・アンツァインガーがフォントベル銀行に依頼した調査によると、上位150社の2005年の利益総額は前年と比べて13%増加した。「この好況の背景には、米国や中国、日本、他の欧州諸国の経済回復が大きく影響しています」とフォントベル銀行のチーフ・アナリスト、トマス・プティール氏がスイスインフォのインタビューに答えた。

 思えば長く暗い時代だった。「過去3〜4年、スイスの企業はリストラに苦しんだものです。多くの部門を縮小する一方で、ちょっと利益が出れば債務を返済するか売却した自社株を買い戻すか、ということに奔走していました」とプティール氏は振り返る。「ところが2005年には、様変わりです。この一年で、200億フラン(1兆8000億円)以上の資金がベンチャー企業の買収に使われました」

 銀行の融資も2005年は予想を大きく上回った。スイス最大の銀行、UBSの2005年第3四半期の純利益は、前年同期比71%増の27.7億フラン(2479億円)にも達した。笑いが止まらないわけだ。

当然株価も上昇

 ダウ・ジョーンズによると、スイスの平均株価も1997年以来最高のレベルとなった。「米国株価と比べて、スイスの株価は実際の価値よりも低く評価されていました」とプティール氏は説明する。「ドルが強くなり、米国の金利は上昇しました」

 一方、この好況は長く続かないと分析するのはロイ銀行のアナリスト、アンヌ・ブルジョワ氏だ。「私たちは2005年の好況が消費回復や失業率の低下に貢献すると見ています。けれども2006年下半期には金利上昇が影響して、好況にも影を落とすのではないでしょうか」

 フォントベル銀行のプティール氏はもっと楽観的だ。2006年の上位150社の利益総額は729億フラン(6兆5000億円)、2007年にはさらに805億フラン(7兆2000億円)にまで増加すると見ている。「世界経済は今後、成長基調に乗るでしょう。確かに金利は少々高いですが、大きなインパクトを与えるほどではありません」


swissinfo、マシュー・アレン 遊佐弘美(意訳)

去年12月、スイス中央銀行は公定歩合を0.25%上げた。経済省経済管轄局(SECO)は2005年のスイスの経済成長率を当初見込んでいた1.3%から1.7%に上方修正した。
スイス商工会議所(economiesuisse)は、2006年の経済成長率を1.5〜2%と予想している。

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