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セガンティーニ展、9年越しの夢開花

代表作「アルプスの真昼」には光が溢れている Segantini-Musuem St. Moritz

「作品と共に関西空港に降り立つまでは、セガンティーニ展が日本で開催されるという実感が湧かない」と同展を企画したチューリヒ在住の久保州子(くにこ)さん(60)は言う。

このコンテンツは 2011/07/07 14:56
里信邦子(さとのぶ くにこ), swissinfo.ch

無理もない。イタリア生まれの画家ジョヴァンニ・セガンティーニの作品に感動し、日本での展覧会を思いついてから9年の歳月が流れた。やっと開催にこぎ着けた矢先、東日本大震災が発生。絵を貸し出すスイスとイタリアの政府が放射能被害を心配して「絵は日本に行かない方が安全」と勧告し、展覧会は一旦中止になったからだ。

セガンティーニとの出会い

NHKの番組撮影コーディネーターとして2002年にスイス・サンモリッツのセガンティーニ美術館を訪れ、代表作の「アルプス三部作」を見たのが運命の出会いだった。「人が誰もいず、ちょうど外から光が差し込み、目の前の風景画と外の風景が交じり合い、一瞬自分がどこにいるのか分からなくなった。深い衝撃を受けた」と久保さんはそのときを振り返る。

また、絵の細部まで眺めることができた。印象派的ないわゆる「分割法」といわれる方法でアルプスの透明な光に照らしだされる対象の細部まですべて表現しようとしたセガンティーニの手法が納得できた気もした。光り輝くアルプスの山頂には金粉が使ってあり、キラキラ輝いていた。

そのとき、滋賀県、静岡県、東京都でこれから行われる「アウプスの画家セガンティーニ -光と山-展」の開催が久保さんの心の中で決まった。

ドラマチックな人生

展覧会企画は、まず主催者探し、貸し出す側との交渉など山のような仕事がある。しかし、こうした困難を乗り越える原動力は、絵との初めての出会いで得た感動と、その後センガンティーニの経歴を調べていくうちに分かったその劇的な一生だった。

「とにかくセガンティーニは不幸な生い立ちだった。7歳のときに後妻である母親が亡くなり、父親は先妻の娘にセガンティーニを預けて放浪の旅に出て頓死。この異母姉はろくにセガンティーニの面倒を見ず、彼は12歳で家出。孤児同然だった」と久保さんは言う。

しかし、ミラノの装飾画家の助手になってからその才能が開花。画家として輝かしい人生を歩き始めることになる。その後セガンティーニは「光を、アルプスの透明な光を求めて山を上へ上へと登っていった」。

最終的には1894年、家族とイタリアからスイスのグラウビュンデン州マロヤ(Maloja)に移住。亡くなる前にはそこからかなり離れた標高2731メートルのシャーフベルク(Schafberg)の山小屋で下絵を描き、それをもとに「アルプス三部作」の一つ「自然」を仕上げようとしていた。

最期は、この作品に最後の筆を入れるため再び山小屋に三男を連れて登ったときだった。「腹痛が起こり息子が医者を探しに雪の中を下山するが、医者が到着したときは腹膜炎が進行し、すでに危篤状態だった。臨終の言葉は『ぼくの山が見たい』つまりアルプスが見たいだった」と、久保さんの話は熱を帯び、とどまるところを知らない。

セガンティーニの人生にある意味で「のめり込んでいる」。展覧会が成功し、一段落したら伝記を書きたいと思っている。ドイツ語、イタリア語の関係資料は全て集めてある。「今は時間がないだけだ」と久保さんは言う。

かえって実現すると思った

実は久保さんは美術を専門にしていたわけではない。むしろ音楽会の企画などをやっていた。しかしあるとき、グラウビュンデン州の絵本作家アロイス・カリジェに魅せられ、東京ほか4会場で巡回展を企画。そのとき知り合ったクール美術館の館長、ベアット・シュトゥツァー氏がセガンティーニ美術館の学芸員を兼任していたという縁もあった。

ところで、放射能被害を心配して展覧会が一旦中止になったときはがっかりしただろうとの問いに対し「もしこれが、初めての障害ならさぞかしがっかりしたと思う。しかしあまりにいろいろあったので、かえって実現するのではないかと思った」という意外な答えが返っててきた。

いや、実現させようともっと努力を続けたと言った方が正しい。久保さんは、「イタリアの貸し出し人に東京ではなく関西にまず絵は到着する。これを見てほしいと関西の放射線量が記入されたグラフを、菓子箱と一緒に持って行った」と話す。

そうしてついに昨日7月6日、チューリヒ空港からセガンティーニの作品約40点と共に日本に向けて飛び立った。

「アウプスの画家セガンティーニ -光と山-展」

ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858~1899)はスイスアルプスの画家として、また象徴主義芸術を代表する画家として知られている。

スイス・サンモリッツにあるセガンティーニ美術館の全面的な協力を得て開催される。油彩、習作、素描など約60点を展示。日本では33年ぶりとなる。

皮切りの滋賀展が佐川美術館で7月16日~8月21日、静岡展が静岡市立美術館で9月3日~10月23日。最後の東京展が損保ジャパン東郷青児美術館で11月23日~12月27日。

4月29日から東京で開催が予定されていたが東日本大震災で一旦中止された。

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