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テロ、報復攻撃、経済打撃….スイス人の精神的影響は?

ハイジャック機が世界貿易センタービルに突入する戦慄の映像、ツーク州議会の銃乱射事件、スイス航空破たん、米軍アフガニスタン空爆と、過去1ヵ月間驚愕から立ち直るヒマもなく立て続けに襲う事件に、スイス国民は精神的に参っているのだろうか?

「人々は次に何が起こるかと不安に思い苛立っている。」とウルリケ・エーレルト・チューリッヒ大学臨床心理学部長はいう。5000人以上が死亡した世界貿易センターの繰返し放映される地獄絵を見た人は、しばらくの間急性ストレス障害に悩むことがあるという。このような時はできるだけ家族と過ごすようにと、エーレルトさんはいう。スイス人は一般的に他の国民よりも身の安全に確信を持っている。「スイス人は、中立政策を固持するスイスにいる限り守られていると思っている。が、国外へ出ると、不安になる人が多い。」とエーレルトさんはいう。

10年前の湾岸戦争と、今回の米同時多発テロからアフガニスタン空爆までの一連の報道の違いは、今回は我々と同じ民間人が犠牲となっている様をテレビで、しかもライブで見ているという事だと、エーレルトさんは指摘する。10月7日、米軍が報復攻撃を開始した時、人々は様々な反応を示した。精神科医でスイス精神医学・心理療養医学界長を務めるテディー・ハブシュミッド氏は、患者30人に、アフガニスタン空爆についてどう感じているか質問した。すると、重度の患者は自分の世界に生きているため、他の世界で何が起きているのか全く気付いてもいなかった。が、軽度の患者は大変大きな影響を受け、スイスとアフガニスタンを混同して恐怖におののき、自分達が爆撃されると怖がっている。

一方、テレビで惨劇を見た子供達の中には、一時的に興奮した子も多かったとエーレルトさんはいう。が、落ち着くと子供達は、事件について両親に質問をするようになる。「保護者は子供達に真実を伝え、精神的に影響を受けているようであれば、テレビで見た事を絵に描かせるとよい。」とエーレルトさんはアドバイスした。

が、スイス人を最も精神的に痛めつけたのは、スイス航空の破たんだ。そのインパクトは、テロよりも、空爆よりも大きい。遠いアフガニスタンの戦争よりも、自国スイスの国営航空の破たんの方を心配するのは、当然の事だとエーレルトさんは語った。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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