金融

フィンテックでスイスの金融業界は生まれ変わるのか

米フェイスブックが打ち出した仮想通貨構想「リブラ」は、世界中のお金の流れを変えるプロジェクトとして注目を集めた。プロジェクトの拠点となったスイスの金融業界にも大きな波紋を呼んでいる。

このコンテンツは 2020/11/21 09:00
Skizzomat (Illustration)

プロジェクトを主導するリブラ協会は、スイスのジュネーブに本拠を置く。

本拠となったスイスでは、リブラとどう向き合っていくか、大きな議論が生じた。これまでの伝統的なお金の流れから外れた新しい形式のデジタル通貨が誕生すれば、これまでの銀行ビジネスが通用しなくなり、スイス経済の屋台骨の1つが壊されるリスクがある。一方で、デジタル通貨を使った効率的な金融サービスが生まれ、リテールバンキング(個人向け銀行業務)が再興する可能性もある。

連邦政府は、一般市民向けのデジタル通貨を中央銀行が発行したとしても、それが「現時点でスイスに追加的な利益をもたらすことはない。その代わり、とりわけ金融の安定性に対する新しいリスクとなりうる」と考える。

スイスで急成長中の仮想通貨・ブロックチェーン業界では、受け止め方が異なる。多くの企業や団体が仮想通貨の促進や、新旧金融業の融合に勤しんでいる。

こうした動きのなかで、スイスには得る物も失う物も多くある。ボストン・コンサルティング・グループによると、スイスが抱えるオフショア資産(国外居住者の資産)は2兆3千億ドル(約240兆円)超。世界のオフショア資産の3分の1に相当し、世界一の保有量を誇る。それがスイス経済に占める存在感も大きく、国内総生産(GDP)の約1割は金融業界から生まれる。

立法・規制当局は、リブラの成否に関わらずデジタル通貨への移行は避けられないと考え、体制整備を急ぐ。機を逃せばデジタル資産が他の国に流れ、世界の金融市場におけるスイスの地位を揺るがすという懸念があるからだ。

消費者がモノを買うときの「支払い手段」は通貨が持つ機能の1つにすぎない。 デジタル通貨はトレーディングや企業の資金調達、投資を商品として売るための手段をも大きく変えようとしている。

このためスイスは、銀行や企業、金融市場のインフラに関する法律の改正作業を進めている。規制当局は頻繁に仮想通貨のスタートアップ企業らと意見を交わし、来るデジタル金融市場で個人投資家を守る方法を模索している。また仮想通貨企業に銀行業の営業許可を与えた。

関係者が一致しているのは、仮想通貨・ブロックチェーン分野においてスイスが世界を主導していく必要がある、ということだ。数百社の新興企業がインキュベーター(起業支援)やコンサルタント(顧問)、法律事務所に支えられている。スイスには世界をリードするブロックチェーン事業の膨大な資産を保管する専門の財団もある。

スイスのフィンテック業界を長年取材しているswissinfo.ch英語編集部のマシュー・アレン記者のニュースレター(英語)はこちらから登録できます。(Special interest newslettersのFintechを選択)

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