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アフリカの影響力拡大 各国が関係強化を模索

アフリカの多くの国では人口のほぼ半数が25歳未満と若い
アフリカの多くの国では人口のほぼ半数が25歳未満と若い Afp Or Licensors

今世紀末には、世界の3人に1人がアフリカに住むとされる。それに伴い、アフリカ連合(AU)の重要性も高まる。スイスはすでに外交的接近を進めている。

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「アフリカは未来だ」とよく言われる。その理由の一つは、アフリカ大陸が今後、世界人口の多くを抱えることになるからだ。国連の予測によれば、2100年までに人類の約3分の1がアフリカに住んでいることになる。

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こうした人口動態の変化は、アフリカを外交・経済・地政学的に魅力的なパートナーへと押し上げている。

スイスの新しい「アフリカ戦略」の冒頭文は以下の文句で始まる。「アフリカ(中略)は今後数十年にわたり、世界の発展に決定的な影響を与える存在となる」。このような戦略文書は今や多くの国が打ち出しており、アフリカとの外交関係強化に本腰を入れていることの証左となっている。

過去10年の間に、世界中で200以上の外交使節団がアフリカに新設された。その多くはグローバルサウスの国々によるものだ。

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こうした代表部の一部は、エチオピアの首都アディスアベバに設けられている。ここアフリカ連合(AU)の本部所在地でもある。AUはアフリカ全54カ国をメンバーとする大陸規模の組織であり、経済・政治統合を目的とする。そういう意味ではEUのアフリカ版とも言える。また平和・安全保障の推進にも焦点を置く。だからAUの重要性が増している。

デリジ・エリック・デギラ氏
デリジ・エリック・デギラ氏 Dêlidji Eric Degila

国際関係学者のデリジ・エリック・デギラ氏(ジュネーブ国際開発研究大学院)は「アフリカ連合は、アフリカの利益を推進するための主要アクターとして確立されている」と話す。確かに、AUは国連やEUと同様多くの課題に直面してはいるが、2002年にアフリカ統一機構の後継組織として設立されて以来、その存在は不可欠なものになっているという。「2023年にAUがG20に加盟したことは、その重要性の高まりを表している」

アムステルダム大学のウエリ・シュテーガー助教も「AUはこの20年間で発言力を強め、外交力を蓄積し、大きな潜在力を備えるようになった。この潜在力は、それに相応しい野心と共存している」

ウエリ・シュテーガー氏
ウエリ・シュテーガー氏 Foraus

しかし、2人は資金調達に根本的な問題があると指摘する。シュテーガー氏は「私の計算によると、ある年には、AU予算の最大70%がEUから拠出されていた。脱植民地化からの解放を掲げる組織として、これは矛盾した状況だ」と話す。
多くのAUプロジェクトはほぼ完全に外国資本に依存し、本部ビルも中国から寄贈された。
デギラ氏は「外国資本に依存する組織では自立性を欠く。アフリカ諸国は、AUの自立的な資金調達に本気で取り組む必要がある」と話す。

スイスもAUに接近

スイスは比較的多くの在外公館を持つため、各加盟国との二国間関係において良好なネットワークを築いている。またAUとも関係強化に長年取り組み、複数の下部組織にも加盟している。
シュテーガー氏は「スイスは、比較的少ない労力で巧みに影響力を行使するという賢明なアプローチをとっている。例えば、AUの安全保障議題に関する『オラン・プロセス』を支援している」と話す。
これは、人口増加に伴いアフリカが将来的に経済大国となる可能性があることを見越しての動きでもある。2100年には、世界の労働力の40%以上がアフリカ人になると見込まれている。デギラ氏は「アフリカには労働力という形で大きな潜在力がある。長期的に人口減少に直面する欧州にとって、それはチャンスだ」とみる。

ただし、そのためには欧州側がアフリカ移民を安全保障の観点だけでとらえないことが求められる。

アフリカの移民の約85%は大陸内移動であり、残りはほとんどが合法的なルートで世界中に散らばっていく。多くの場合は留学であり、これは「頭脳流出(Brain Drain)」問題にもつながる可能性があるという。 欧州への規則的な移住ルート(滞在許可と就労許可を組み合わせたもの)は長期的にみてより効果的だ。そのためには欧州への「政治的・メディア的な大量移住の恐怖」から脱却する必要がある、とデギラ氏は言う

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スイスは、アフリカの金融機関との関係構築にも積極的だ。

具体的には、アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)の欧州事務所をジュネーブに誘致しようと働きかけている。この多国間金融機関はアフリカ開発銀行の関連組織であり、アフリカの国際貿易におけるシェア拡大を目指している。ジュネーブに拠点ができれば、ジュネーブの国際的な地位がさらに高まり、スイスの金融市場にとってもアフリカとの直接的な接点ができる。

また、スイス政府はアフリカ開発銀行(AfDB)の保証資本の増額にも財政支援という形で参加する方針だ。政府発表では「アフリカへの連帯の表れ」を強調した。しかし、非アフリカ28カ国の一員として、その銀行内での自国の影響力を確保することも視野に入れる。これは、重要な国際金融機関に参加するというスイスの外交方針から見て一貫した姿勢と言える。

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アフリカはスイスにどう見られている?

アフリカの諸機関や当局にとって、スイスは好ましいパートナーと見なされている――と、デジラ氏とシュテーガー氏は口をそろえる。スイスは植民地主義の過去を持たず、透明性のある政策を掲げ、中立的な国として認識されているという。

ただし、中立性に関しては近年、懐疑的な見方も出ている。両専門家は、アフリカ大陸ではスイスが中立性を放棄したとの見方が広く浸透していると指摘する。これは一部、ロシアが「スイスが欧州の対ロシア制裁を採択したため、もはや中立ではない」と主張していることに関連している。アフリカでは、この主張がロシアのプロパガンダを通じ広範に拡散されている。

「しかし、それ以上に影響しているのがガザでの紛争だ。スイスが沈黙を保っていることは偽善的だとみなされている」とシュテーガー氏は指摘する。これはスイスの信頼性を損なうだけでなく、ダブルスタンダードだと批判される西側全体にも悪影響を及ぼしている。

中立の意味に対する理解の違いもある。「アフリカでは中立はしばしば非同盟と同義視されるため、歴史的背景から異なる解釈が存在する」とシュテーガー氏は説明する。非同盟は両陣営(ロシアと「西側」諸国)への等しい距離を基盤とするのに対し、スイスの中立性は国際法尊重を中核とする法的な理解に基づく。「スイスはこの点において、引き続き一貫した啓発活動を続けていくべきだ」とシュテーガー氏は話す。

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スイスは信頼を維持できるか?

デギラ氏は、信頼性の点にも触れ「スイスはアフリカ諸国との関わりにおいて現実的なアプローチを採用している」と話す。世界中の地域同様、アフリカ大陸も民主化の後退、人権や法治、統治の退歩といった波に直面した。「アフリカ大陸ではクーデターが相次いだ。しかしスイスの批判はほとんど聞かれなかった」という。

こうした「現実主義的な外交アプローチ」は、政治学者としては理解できるとデギラ氏は言う。アフリカは現在、パートナー国を選ぶ余地が増え、批判が過多になれば関係を断つこともできるようになった。しかし、これまで模範的な存在とみなされてきたスイスが明確な立場を示さないことは懸念材料だという。

外交的・政治的資本は信頼性に大きく依存する。信頼性が低下すれば自国の重要性も低下する、とデギラ氏は言う。「スイスは、現実的な外交姿勢と自国の価値観を両立させる道を見出すべきだ」

編集:Benjamin von Wyl、独語からのDeepL翻訳:宇田薫

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