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ルツェルン・フェスティバル慈善活動 膨らむ「箱舟」で日本に音楽の癒しを

移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」は、空気で膨らます構造で出来ている

移動式コンサートホール「アーク・ノヴァ」は、空気で膨らます構造で出来ている

日本の津波のニュースを聞いたルツェルン・フェスティバル芸術総監督のミヒャエル・ヘフリガーさんは、演奏家たちを集めて「ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ」プロジェクトを立ち上げた。この音楽祭は、バルーンでできた可動式コンサートホールが特徴。松島で13日まで開催中。

空気で膨らむコンサートホール「アーク・ノヴァ」のデザインは、建築家の磯崎新氏と、彫刻家でデザイナーのイギリス人、アニッシュ・カプーア氏が手掛けた。アーク(Arc)は「箱舟(方舟)」、ノヴァ(Nova)は「新しい」を意味する。音楽を中心とした芸術を詰め込んだ「舟」で被災地を巡り、復興を支援しようという構想だ。

「アーク・ノヴァ」プロジェクト初の開催地である松島には、世界中から演奏家、指揮者、アーティストらが集合。被災地の文化面の復興を支援し、人々に癒しを届けようとしている。松島を訪れていたヘフリガーさんに、今回のプロジェクトについて話を聞いた。

swissinfo.ch : 現地の様子はどうですか。

ミヒャエル・ヘフリガー : コンサートホールはとてもセンセーショナルだ。あのような建物を、これまでこうした(文化的)活動が行われたことのない土地に持ってくることは、すごいことだ。現地を訪れたことのない優秀なアーティストや演奏家と共に、まるでUFOが東北地方に着陸したかのようだ。(スイスの)ルツェルン・フェスティバルはとても文化的な環境の中で、75年間成長してきた。だが、今回のものはそれとは違う。とても面白いプロジェクトだと断言できる。

デザイン面、建築面から見て、このコンサートホールはとても興味深い。中は暖かく、強度もあるため、パフォーマンスには理想的だ。外観とその内部は圧巻で、まるで舞台装置、ステージのようだ。

The inside of Isozaki and Kapoor's inflatable concert hall

The inside of Isozaki and Kapoor's inflatable concert hall

( © Lucerne Festival Ark Nova 2013)

swissinfo.ch : 今回のプロジェクトは、2年前に津波の被害を受けた日本の人々のために何かをしたいというあなたの願いから誕生しました。プロジェクトはどのように進んでいきましたか。

ヘフリガー : 震災に苦しむ人々のために誰かが何かしなくてはいけないという気持ちがあった。私は日本とつながりがあるため、日本を他の地域よりも身近に感じていた。実際に持続可能な活動を行うためのアイデアを、友人の梶本眞秀氏(梶本音楽事務所社長)と、長年の友人である磯崎氏と共同で形にしていった。カプーア氏がこのプロジェクトに加わったのは、磯崎氏のアイデアだった。

(Lucerne Festival)

swissinfo.ch : 音楽と文化は、震災からの復興においてどのような役割があると思いますか。

ヘフリガー : (音楽や文化は)震災後の人々の精神面に焦点を置いたもので、家を建て直したり、食料を届けたり、人を死の危機から救う援助とは異なる。我々は音楽や芸術を通して、被災地が新しいアイデンティティ、希望、精神を見つける手助けをしようとしている。被災地の人々の気持ちが軽くなるよう、「アーク・ノヴァ」はたくさんの喜びや、ポジティブなもの、楽観的なものを運んでくる。

swissinfo.ch : アーク・ノヴァの名前の由来は?

ヘフリガー : 東北地方の古い伝説がある。変わった船がやってきたり、見知らぬ人がとてもポジティブなものを持ってきたりする話だ。東北を訪れ、その土地の人が知らないプロジェクトを運んでくるというのが今回のフェスティバル。伝説はより洗練された描写となっている。

swissinfo.ch : フェスティバルの計画を進めていく中で、日本や現地の状況について学んだことは何ですか。

ヘフリガー : 東京での打ち合わせが多かったが、そこでは震災の影響はあまり感じられなかった。東北には4、5回行ったことがある。2012年1月に初めて訪れたときはひどい状況だった。現在は徐々に復興してきているが、倒壊した建物はまだ多い。

このプロジェクトが津波から2年後に開催されて大変良かったと思う。人々が新しいことに向かい、このような祭りを楽しんだり、参加したりする余裕ができたからだ。1年前だったら早すぎたかもしれない。自分の置かれた状況に人々は頭がいっぱいだったと思う。

被災者は再びポジティブなものを欲している。いつも自分たちの問題や被害についてばかりではなく、自分たちに関して何かポジティブなものを聞きたいと思っている。被災地は重い負担を抱えているが、(こうしたイベントへの参加は)その苦労を乗り越えるのに良い方法だ。

swissinfo.ch : フェスティバルを松島で開催した理由は何ですか。また、将来的にはどこが最終開催地になりますか。

ヘフリガー : 現在、松島のインフラはとてもよく整備されており、町も建設やプロジェクトを支援する用意があった。松島の被害はさほど大きくないが、町の周りは倒壊したところが多い。そこで、計画ではまず松島でプロジェクトを開始し、その後、他の場所を回っていくことになっている。

我々の目的は、世界中を回って素敵なショーを開くことではない。東北地方に焦点を絞り、そこでプロジェクトを3年間行うことだ。目標の一つは、芸術面の内容を充実させ、より中身の濃いものにすること。また、今年の経験を基に、このコンサートホールに最適なプロジェクトを企画することだ。今後は、建築デザインを反映した、多分野にまたがったプロジェクトを立ち上げたり、プロジェクトの芸術的方向性を定めていったりできると思う。1年目の今年は、建物が準備できるかどうかに注視した。

swissinfo.ch : 観客の反応はどうですか。また、すべての人に開かれたフェスティバルはどのように実現していますか。

ヘフリガー : 観客のほとんどが、ターゲットだった地元の人たちだ。プロジェクトは国際メディアで注目を浴びており、建築家も有名なので、そうした理由でこのフェスティバルに駆けつけてくる人はいるだろう。しかし、これは現地の人のためのプロジェクトだ。もちろん観光面での副次的効果は、被災地にとって良いことだ。

チケットは2千~5千円。ワークショップ・パフォーマンスなどの無料パフォーマンスもある。目標は、地元の人が簡単にアクセスできるイベントの開催で、VIPのためのイベントではない。


(英語からの翻訳・編集 鹿島田芙美), swissinfo.ch


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