中国企業は農薬シンジェンタをはじめ、数多くのスイス企業大手を買収した
Keystone
ドリス・ロイトハルト通信相は、スイス紙とのインタビューで、中国企業がスイスの「戦略的に敏感な」企業を買収する可能性について懸念を表明した。
このコンテンツが公開されたのは、
アールガウ州の日刊紙アールガウアー・ツァイトゥングに13日付けで掲載されたインタビュー記事で、ロイトハルト氏は「ドイツが行ったように、我々も中国企業による企業買いあさりの対応策を議論しなければならない」と明かした。
ロイトハルト氏は、スイスは相互主義に基づき、スイス企業も中国で条件なしの企業買収が認められる場合は、中国に同様の許可を与えるべきだとしている。現在、スイス企業は中国で、中国企業との合弁事業のみが許可されている。スイスと中国の企業が平等に交渉することが重要だと主張する。
≫なぜ中国はスイスの企業を買収するのか?
また、スイスにとって戦略的に重要な企業の場合は、スイス競争委員会はそれぞれのケースを検討し、また所有権の大部分をスイスが所有すべきとの考えを示した。
スパイの危険性
欧州でモバイルネットワークの構築を進めている中国企業について、ロイトハルト氏はスパイの危険性への懸念は認識していると発言。デジタル時代に完全な安全性はないとしながらも、「否定的な報告はない」と述べた。消費者は無警戒であってはならず、データを保護するための予防措置を取る必要がある。
ロイトハルト氏によると、中国のデジタル経済は非常に革新的であり、国は研究開発に多額の投資をしている。「中国が偽造の世界チャンピオンと見なされる時代は終わった」
ここ数年、スイスで中国企業による合併買収が数多く行われ、注目を浴びた。2016年には中国化工集団(ChemChina)が農薬大手シンジェンタを433億ドル(436億スイスフラン)で買収している。
現在、ロイトハルト氏は中国南部のテクノロジー企業を訪問している。
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
スイス経済相、中国の買収規制は「不公平」と批判
このコンテンツが公開されたのは、
5~9日に訪中したヨハン・シュナイダー・アマン経済相は、中国がスイスの企業を買収できるのにその逆ができない現状は不公平だと指摘した。
もっと読む スイス経済相、中国の買収規制は「不公平」と批判
おすすめの記事
増加する中国のスイス企業買収、歓迎の一方で懸念も
このコンテンツが公開されたのは、
スイスには昨年、中国から多くの観光客や投資マネーが押し寄せた。国内のホテルや企業が中国資本に買収されその波は今後も続きそうだ。ホテル産業は歓迎ムードだが、スイスが「家宝」を売り飛ばす事態になるとの批判も出ている。(SRF/swissinfo.ch)
もっと読む 増加する中国のスイス企業買収、歓迎の一方で懸念も
おすすめの記事
中国はスイスの大親友
このコンテンツが公開されたのは、
中国からはほぼ毎月、何らかの派遣団がスイスを訪れている。経済、金融、研究、環境や気候、文化、そして人権と、分野は多岐にわたる。このような両国関係の基礎を築いているのは、相互に寄せる敬意と信頼だ。
2016年4月、当時の連邦大統領ヨハン・シュナイダー・アマン氏が公式訪問で北京を訪れた。それから1年も経たないうちに、今度は中国の習近平(シーチンピン)国家主席がスイスの首都ベルンを訪れた。これほどの短期間に、国家元首が相互に訪問することはいたって珍しい。
連邦外務省アジア太平洋地域課のヨハネス・マティアッシー課長は「これは中国がスイスを重視している証だ」と言う。「今回の訪問が単なる表敬訪問ではなく、実質的な意味を伴う重要な訪問であることは明らかだ」
もっと読む 中国はスイスの大親友
おすすめの記事
中国企業がスイスを選ぶ理由
このコンテンツが公開されたのは、
スイスには今後数年、多くの中国企業が上陸する、と東軟グループ(Neusoft)の会長兼最高経営責任者、劉積仁(リュー・ジレン)会長は予想する。
数々の中国企業が昨年、スイス企業の合併・買収(M&A)を成立させニュースの見出しを飾った。バーゼルに本拠を構える農業バイオ大手のシンジェンタを、過去最高額の433億ドル(当時レートで約4兆8千億円)で買収した中国の大手国有企業「中国化工集団(ケムチャイナ)」もその一つだ。
さらに多くの中国企業が安定した政治、技術的なノウハウ、強固な金融システム、低い法人税率といったメリットを享受しようと、スイスに欧州支社を置こうと計画している。自由貿易協定(FTA)や1月中旬の習近平国家主席のスイス訪問は、両国間の外交関係が最良な状態を保ちつつ、一段とその傾向が強まることを物語っている。
もっと読む 中国企業がスイスを選ぶ理由
おすすめの記事
スイス投資に酔いしれる中国企業
このコンテンツが公開されたのは、
中国企業によるスイスへの昨年の投資額は48億ドル(約5400億円)と、前年の4倍に達したことが、法律事務所ベーカー&マッケンジーの調査で分かった。430億ドルにのぼった中国化工集団(ケムチャイナ)による農業バイオ大手シンジェンタの買収案は、規制当局の審査結果待ちにあり、同調査では除外している。
活発な中国投資の全体像を外観すると、同社の調査では中国による欧州全体への2016年の直接対外投資(FDI)は総額460億ドル(前年比90%増)、対北米では480億ドル(189%増)となった。
昨年、中国の海航集団(HNAグループ)はスイスの旅客機関連サービス、ゲートグループ・ホールディングやSRテクニクスを買収。その前に同社はスイスポートを買収していた。その他、近年の巨額取引としては、Haers社によるアルミ製ボトル製造のシグ(Sigg)社買収がある。
他の中国企業はスイス企業を買収せずにスイスに投資してきた。中国のソフトウエア大手、東軟グループ(Neusoft)は09年以来、欧州の拠点をアッペンツェルに置いている。東軟の劉積仁(リュー・ジレン)会長は先月の世界経済フォーラム(WEF)で、「最先端のサービス分野への多角化を図り、中国のFDIは今後数年でさらに増えるだろう」とスイスインフォに語った。
「中国において、スイスは透明性が高くて親しみやすく、ビジネス環境のさまざまなランキングで上位を占める安定した国、というイメージだ。海外展開を考えている中国企業は、今後さらにスイスに進路を向けるようになるだろう」
ベーカー&マッケンジーによると、中国企業による欧米への投資額はこの10年間で26億ドルから940億ドルに増えた。その過半は過去3年で急増した。
だが同社は、各国の規制当局が買収案件をより厳しく監視し、中国当局も資本の海外流出を抑えようとするため、中国によるFDIの増加ペースは減速するとみている。同社の調査では、昨年は欧米で計740億ドル以上に値する30の買収提案が阻止された。
ベーカー&マッケンジー中東アフリカ・中国グループのトーマス・ギレス会長は「政治的・規制的な監視の目はより厳しくなり、政治的なリスクの精査と規制への対応は、全体的な買収戦略として非常に重要になる」と話す。
もっと読む スイス投資に酔いしれる中国企業
おすすめの記事
中国のスイス企業買収、「スイス製」と「中国製」を合併する難しさ
このコンテンツが公開されたのは、
中国にとって欧州は、一層魅力的な投資の対象になっている。農業バイオ大手シンジェンタ、商品取引マーキュリア、航空機の地上支援スイスポートなど約70社あまりのスイス企業が、すでに中国企業によって合併・買収(M&A)された。一方で、中国勢の一連のM&Aは一部のスイス人、そして中国人の間でも怒りや懸念を生み出し、さらに文化の違いをいかに克服するかという問題を浮き彫りにしている。
もっと読む 中国のスイス企業買収、「スイス製」と「中国製」を合併する難しさ
おすすめの記事
中国製列車がゴッタルドベーストンネルを走る日は来るか
このコンテンツが公開されたのは、
中国製鉄道車両は遅かれ早かれ欧州市場で高いシェアを占める。そう確信するスイス在住の鉄道専門家で経営コンサルタントのツイ・ジュンさんにインタビューした。
もっと読む 中国製列車がゴッタルドベーストンネルを走る日は来るか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。