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古代エジプトに魅せられたジャコメッティ

「緑の頭 ( Grüner Kopf ) 」( エジプト紀元前400年ころ ) とジャコメッティの「ローターII/III ( Lother II/III )」。何かを悟ったかのようにたたずむ

(Keystone)

20世紀のスイスを代表する芸術家アルベルト・ジャコメッティ ( 1901~1966 ) といえば、針金のような人物の彫刻で象徴される。キュービズムやシュールレアリストとの交流があったジャコメッティだが、実際は古代エジプト美術に魅了されていたという。

100フラン紙幣の裏に印刷されているジャコメッティ作の「歩く男」が、古代エジプト彫刻に影響されていることを明かす展覧会「ジャコメティ、エジプト人展 ( Giacometti, der Ägypter ) 」が、現在チューリヒで開催中だ。

一生の目標

 グラウビュンデン州で生まれたジャコメッティは1920年のフィレンツェで、古代エジプト美術に遭遇したという。その後キュービズムやシュールレアリズムにも接したが、芸術家としての一生の目標としたのはエジプト美術だった。

 展覧会場の最初の部屋に展示されているエクナトン ( 古代エジプトのファラオ、アメンホテプ4世、紀元前1467~1350ころ ) の像とその横に掛けられたジャコメッティの自画像は、いずれも顔が細長くあごが尖っている。ジャコメッティはエクナトン像のスケッチを残しており、2点を並べて展示し、ジャコメッティが古代エジプト彫刻に影響されたことをより明らかにした。

 古代エジプトの彫刻は地面を表すような台の上に置かれているが、ジャコメッティの「歩く男 ( Homme qui marche 1947年 ) 」といった彫刻も長方形の台の上を歩く。
「ジャコメッティもエジプト美術も、人物像が乗っている台は人物が存在する空間を表したものであり、歩いているようで止まっている、 止まっているようで歩いているといった人の動きを表すもの」
 とドイツの「ベルリン美術館 ( Staatliche Museen zu Berlin )」 の古代エジプト学教授ディートリッヒ・ヴィルドゥンク氏は言う。よって「こうした作品は、展示会場の壁面に対して平行に置かれなければ意味がない」。ヴィルドゥンク氏はジャコメッティと古代エジプト美術の関係に魅了され、ベルリンの古代エジプト博物館でチューリヒの展覧会に先駆け今年2月中旬まで、ジャコメッティの12点の彫刻を展示した。

 ジャコメッティは死の床にあっても、エジプト彫刻の写真集を見ながらスケッチをしていた。
 「そもそもエジプトの彫刻は、死んだ人が生き返ったときに戻る場所として作られた。ジャコメッティはそうしたエジプト美術の内面に惹 ( ひ ) かれた」
 と展覧会のキュレーター、クリステァン・クレム氏は語る。展覧会場の最後の部屋に置かれた「緑の頭 ( Grüner Kopf ) 」( エジプト紀元前400年ころ ) と比較されるジャコメッティ晩年の作「ローターII/III ( Lother II/III )」の目は、表面が荒々しい胸部とは対照的に、死を見つめるかのようで、静かで澄んでいる。

それぞれを再発見

 「ジャコメッティの古代エジプトへの傾倒は、芸術家が一時的にギリシャ彫刻やローマ、ルネサンスに影響されるといった、類 ( たぐい ) のものではない。一生、古代エジプト美術に魅せられ、研究し続けた」
 とヴィルドゥンク氏はジャコメッティにとっての古代エジプト美術を位置づける。ジャコメッティの作品と並べられた古代エジプトの彫刻は
「これまでのように考古学的な見地からとらえるのではなく、芸術としての価値が見出されていく。すべての芸術作品は、それが作られた時には現代芸術だったということも忘れてはならない」

 2月中旬まで開催されていたベルリンでの展覧会では、ジャコメッティの作品が古代エジプトの彫刻にすっかり溶け込んでしまい、見学者は「( 展覧会の意図を ) 気づかなかったかも知れない」とヴィルドゥンク氏は明かす。一方、チューリヒの展覧会では
「訪れる人に、新しいジャコメッティと古代エジプトを発見してもらえるのではないか」
 とクレム氏も期待の言葉を述べた。

 小規模ながら、ベルリン美術館の質の高い古代エジプトの彫刻と、ジャコメッティの本場クンストハウスが選んだスイスの彫刻家の作品をゆったりとした雰囲気の中で比較できる展覧会である。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

アルベルト・ジャコメッティ略歴

1901年10月10日、グラウビュンデン州に生まれる。父は画家だった。
ジュネーブの工芸学校で彫刻を学んだ後、1920年からイタリアを旅行するが、フィレンツェで、古代エジプト美術に遭遇したといわれる。1922年、ロダンの弟子アントワン・ブルデールからパリで本格的に美術を学び、キュービズムやシュールレアリズムに接した。一時シュールレアリズム的作品を作るが、最終的には写実的な彫刻に戻った。その後故郷とパリで創作活動を行うが、1966年、故郷で没する。

100フラン紙幣の表にジャコメッティの肖像、裏に彼の代表的作品「歩く男」が描かれている。

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「ジャコメッティ、エジプト人」

クンストハウス ( Kunsthaus )にて開催中。
2月27日~5月24ク日ンストハウスでは2007年5月に「アルベルト・ジャコメッティ、アバンギャルドの夜明け」が開催されて以来のジャコメッティ展。
展示作品のうち古代エジプト彫刻はベルリン美術館所蔵。ジャコメッティの作品は、クンストハウスやジャコメッティ基金などスイス国内のコレクション。
開館時間 土、日、火 10~18時、水~金 10~20時、月曜日休館
入場料 18フラン ( 約1500円 )、割引券12フラン( 約1000円 )
交通手段 チューリヒ中央駅から3番のトラムでクンストハウスで下車

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