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在外邦人 外国籍を取得したら? 移民国家・スイスのルール

日本・スイス国交樹立150周年記念イベントに出席する皇太子とブルカテール大統領

2014年、ヌーシャテルで開かれた日本とスイスの国交樹立150周年記念イベントに出席した日本の皇太子さまとスイスのブルカテール大統領(当時)。日本国籍を持つ重国籍の子供たちは将来、どちらかの国籍を選択しなければならないのが原則だ

(Keystone)

スイスなど国外に住む日本人が、外国籍を取得すると日本国籍を強制的に喪失することを定めた日本の国籍法第11条は違憲だとして、国を相手取り東京地方裁判所に提訴する。スイスでは重国籍が認められているものの、スイス国籍の取得要件については日ごろ議論の的になっている。

日本の国籍法

日本の国籍法他のサイトへは、①外国人が帰化した場合、外国籍を失う②日本人が自らの意思で外国籍を取得した場合、日本国籍を失う③重国籍者が22歳に達した場合(20歳以上で重国籍になった場合は2年以内)に、どちらかの国籍を選ぶ――と、原則として重国籍を禁止する。

野川等さんを代表とする原告団が争うのは、②を定めた第11条の違憲性だ。訴状は、憲法は「恣意的に日本国籍を剥奪されない権利」や平等原則を保障し、国籍法第11条はこれに違反し無効だとして、日本国籍があることの確認などを求めている。①や③については争わない。

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 「日本国籍を維持しながら現地国籍を取れるようにしなければ、日本人は海外で活躍できない」。こう話すのはスイス・バーゼルに住む野川等さん(74)。1969年からバーゼルに住んでスイス人の妻を持ち、スイスで会社を経営。01年にスイス政府機関の入札に参加するため、スイス国籍を取得した。それにより強制的に国籍を失い、パスポートの更新ができなくなった。

 周りには日本国籍を失いたくないばかりに外国籍取得を諦める日本人が多い。「海外で働くには現地の国籍がないと、就職や昇進でも不利になる。日本人が国際的に活躍するには、日本の国籍法の改正が必要だ」と強調する。ただ「重国籍問題そのものについては、政治の判断に任せたい」と話す。

在外スイス人の75%は重国籍

 人口842万人のうち25%が外国人、国民の1割は国外で活動するスイスでは、重国籍をめぐる現状はどうなっているのか。

 スイスでは重国籍が認められている。連邦統計局他のサイトへによると、スイス国民の17.3%が複数の国籍を持つ。

 国連など多くの国際機関が集中するジュネーブ州では45%と、住民の約半数が重国籍者だ。イタリアと接するティチーノ州や、フランスと接するヴォー州、ドイツ・フランスと接するバーゼル・シュタット準州など、国境に接する州も割合が高い。チューリヒ州は20.5%。

州別重国籍者の割合

スイスの州別の人口に占める重国籍者の割合を示す地図

  重国籍の増加は国際結婚他のサイトへに連動している。スイスで受理される婚姻届の3組に1組はスイス人と外国人のカップルだ。国際カップルの間に産まれた子供のほとんどは二重国籍となる。ただし、血統主義をとるスイスでは、外国人どうしの両親に産まれた子供にはスイス国籍は付与されない。

 在外スイス人も増加傾向をたどる。2016年には77万5千人と、「スイス人」の1割は海外で暮らしている計算だ。その75%は重国籍で、スイス国籍を保持しながら居住先の国籍を取得している。

在外スイス人の推移

在外スイス人の推移を示すグラフ

 重国籍禁止は「民主主義の欠損」

 スイスが重国籍を認めたのは1992年。過去には、外国人と結婚したスイス人女性はスイス国籍を失い、スイス人男性と結婚した外国人女性には自動的にスイス国籍を付与するルールもあった。だがリベラル化や男女同権の思想が広がるのとともに強制的な国籍付与・剥奪は見直され、やがて重国籍容認に舵を切ることになった。

 スイスのシンクタンク「アヴニール・スイス他のサイトへ」は、スイスで重国籍が認められなければ、参政権を持つ人は人口の半分以下になると計算する。ルツェルン大学のヨアヒム・ブラッター教授(政治学)はこれを「民主主義の欠損」と呼び、「二重国籍を認めスイス国籍の取得を奨励することは、この欠損を埋める効果がある」とドイツ語圏の日刊紙ルツェルナー・ツァイトゥングに話した他のサイトへ

 18年1月施行の改正国籍法は、スイス在住の外国人で、スイス人との血縁関係を持たない人のスイス国籍取得要件を緩和。スイスでの居住期間が12年から10年に短縮された。一方、国外居住者に対する要件は厳しくなり、祖母や曾祖母がスイス人というだけではスイス国籍を取得できなくなった。

≫スイスに住む外国人がスイス国籍を取得するには?

≫厳格化する在外スイス人3世のスイス国籍取得

重国籍を禁止するイニシアチブも

 スイスでは揺り戻しも起きている。2015年に保守系右派の国民党が「多国籍者は日和見主義でいいところ取りだ」として、重国籍を禁止するイニシアチブ(国民発議)を立ち上げ、国民投票の実施に必要な有権者の署名11万6709筆を集めた。早ければ18年内に国民投票他のサイトへが実施される。在外スイス人組織(ASO)は「重国籍を認めることで、スイスは他国との架け橋となるネットワークを構築できる」として強く反対他のサイトへしている。

 重国籍への懐疑論が出ているのは、テロリストがスイスのパスポートを悪用することへの懸念や、「自国第一主義」の広がりが背景にある。スイス政府は16年、シリアに渡航し過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘に加わったとされる二重国籍者から、スイス国籍を剥奪した

 その他、重国籍をめぐりいくつかの論争も起きている。

次期外相レース 政治家の二重国籍問題 閣僚に求められる「スイス人らしさ」とは

先日、辞任を表明したディディエ・ブルカルテール外相の後任の候補者は3人。うち2人が二重国籍だ。スイスの政界からは、複数の国籍所持に疑問を持つ声や、別の国籍をあまりにも簡単に放棄しようとする政治家を批判する声が上がり、議論が沸騰している。

▼政治家・閣僚

 法的には、重国籍者が国会議員や閣僚の座に就くことは禁止されていない。昨年、前外相の辞任に伴う後任者選びで候補となった3人の政治家のうち、2人が重国籍者だった。だが、外相に選出されたイグナツィオ・カシス氏はその後、イタリア国籍を放棄。国民党など右派の攻撃を避ける狙いだったが、左派や中道派からは「アイデンティティを放棄するなど痛ましいことだ」との批判も呼んだ。

▼外交官・警察

 スイス政府は16年末、重国籍者も外交官になることを認めた。連邦外務省によると、162人の在外公館大使のうち7人が重国籍者。外務省職員2786人のうち約1割の228人が重国籍だという。

 17年には、トルコ国籍も持つバーゼル州警察の警備係の職員が、職位を乱用して欧州トルコ民主連合(UETD)に便宜を図った疑惑が浮上。同連合はエルドアン大統領の率いる与党AKPと密接な関係があることから、非人道的な同政権を利する行動として批判を浴びた。

▼兵役 

 スイス国籍を持つ18歳以上の男子は兵役義務がある。スイス以外の国籍保有者も同様。スイス以外の国籍保有国で兵役を終えた人はスイスの兵役を免除されるが、その場合は関係機関に報告する義務がある。ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、米国などとは協定を締結しており、重国籍者がスイス以外の国籍保有国で軍事訓練、社会奉仕活動あるいは関連する任務を終えた場合、スイスの兵役が免除される。

「国技」シュヴィンゲン

スイスの国技といわれるスイス相撲、シュヴィンゲン。連邦シュヴィンゲン連盟によると、公式試合の参加や指導者の資格に国籍要件はない。各地のシュヴィンゲン団体に登録している約6千人の選手(15歳以下のジュニアを含む)のうち、約2%がスイス国籍を持たない。3年に一度開催される「連邦シュヴィンゲン&エルプラーフェスト」では、最大10人の外国人選手を招待する。招待選手をかつては「在外スイス人」と呼んでいたが、スイス国籍を持っているとは限らないため、今は「在外シュヴィンガー」と呼んでいる。

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