女性管理職、スイスでは依然道険しく

スイスは伝統的な家族観が根強く、女性のキャリアアップを阻んでいる Keystone/patrick Huerlimann

スイスで働く女性の雇用率は、昇進のチャンスが最も多い30代になると急激に減少する。伝統的な家庭観と「管理職はフルタイム勤務」という慣例が、依然として女性のキャリアを阻んでいる現状が最新の調査で分かった。

このコンテンツは 2020/09/10 17:16

ザンクト・ガレン大学と男女平等を目指すスイスの企業連盟アドバンスが10日、共同で毎年行っている調査「ジェンダー・インテリジェンス・レポート2020」を発表。この調査によると、非管理職に占める女性の割合は49%だったのに対し、全ての管理職では29%に減少。企業幹部・経営陣では18%に落ち込んだ。

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調査では、企業のリーダーシップにおけるジェンダー平等の成熟度を測る独自の指針を設け、参加企業を4ステージ(段階)に区分け。最も低いステージ1では全体の20%、最も優れたステージ4に入ったのはわずか5%だった。全管理職レベルでジェンダー平等を達成した企業はわずか3社で、女性のキャリアアップをめぐる厳しい現状が浮き彫りになった。

調査の共同著者でザンクト・ガレン大学のグドルン・ザンダー教授は10日、同報告書のオンライン発表イベントで「国際比較では、スイスはまだ幼児のよう。非常に遅れている」と述べた。

「30代の壁」

女性の昇進を阻む要因の1つが、30代における労働力の減少だ。同調査によると、21~30歳では男女ともに雇用率がほぼ同等なのに対し、31~40歳では女性だけが大きく減少している。

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ザンダー教授らによると、国内企業では通常、31~40歳の間に昇進の機会が最も多く、47%がこの年齢の間に起こっている。ただ結婚・出産とちょうど時期が重なるため、仕事の労働時間を減らしたり、退職する女性が増えるのだという。

スイス国内企業のジェンダー・レポート

「ジェンダー・インテリジェンス・レポート」は男女平等を目指すスイスの企業連盟アドバンスとザンクト・ガレン大学が毎年行っている調査で、今年で4回目。国内の会員企業における女性の雇用状況、昇進状況などを独自の指針で分析する。

今年は国内の75企業・団体(従業員・職員数100人~5万人)、被雇用者30万2千人分の匿名データを分析した。多国籍企業も含まれるが、人事データはスイス在住者が対象。

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同報告書は、スイスでは家事・子育てにおける女性の分担が大きいことが関係していると指摘。アドバンスのゼネラルマネジャー、アルキスティス・ペトロパキ氏は同日の発表イベントで「スイスの保育システムが現状に見合っておらず、女性の労働参加を妨げている。伝統的な家庭観がこの国では非常に根強い」と話す。

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調査ではフルタイム勤務の方が昇進のチャンスが多いことも分かっている。ザンダー教授は「それ以外にも税制上の問題がある。これらの構造的な不利益を是正しない限り、問題は解決しない。政治の介入が必要だ」と訴えた。

ベビーブーム退職はチャンス

ザンダー教授らは、管理職候補者リストの男女比を同一にすることや、両親共有型の育児休暇、フルタイム以外の柔軟な働き方の導入などの自助努力が必要だと提言する。

また現在管理職に就くベビーブーム世代の大量退職が始まっていることにも触れ「優秀な女性を雇用、育成、昇進させるまたとない機会だ」と訴える。

ザンダー教授は昨年、国内50万人が参加した女性ストライキについて「社会に意識啓発をしたという意味で大きなインパクトがあった。昨年の総選挙では女性議員の割合が増え、ジェンダーに関する議論の向上が期待できる」とした。



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