なが~い夏休みはキャンプで乗り切ろう

「レマン湖を滑るように走るときの感覚は最高」と15歳のエリオット君は目を輝かせた。今年で7年目のヨット講習会参加者だ。
最低5週間、州によっては2カ月はあるスイスの長い夏休み。これを親が乗り切るには、すでに3月1日からサイトに公表される多種ある夏期講習会やキャンプの中から、子供に合うものをいかに素早く決めて申し込みを済ませるかが決め手になる。
ヨットは毎年欠かさない
「1日の終わりにはすでに舵取りを覚え、1週間の終わりには自分たちでヨットを走らせ、港に戻って来れるようになる。そうなると楽しい」
と「ジュネーブ・水上スポーツ協会 ( SNG ) 」の指導員、ヨアンヌ・ルリエーブルさん。ヨットの楽しさを味わいながら、友だちとの連携プレーそして競争心も学んでほしいと願う。
年齢別に3グループに分かれ、3つのタイプのヨットに乗る。14歳以上のグループでカタマラン( 双胴船 ) を操縦するのは、ほとんどが6~7年続けて参加している生徒たちだ。今まで長年テニスや乗馬など、色々な種類の講習会に参加してきた彼らだが、ヨットは一番面白いのでこれだけは毎年欠かさないという。
ヨットは、夏ならではの講習会だがプライベートクラブのものは親の負担が大きい。昼食付きで週680フラン ( 約6万8000円 ) かかる 。一方で市などが主催する、自然の中で山歩きなどを行う伝統的な3食付キャンプは平均400フラン( 約4万円 ) とやや安くなる。こうしたキャンプをジュネーブなど8週間休みがある州では、子供は平均2~3週間はこなしている。
ヨットクラブと同様のプライベートクラブ主催のテニスキャンプに参加したクレマン君は、
「9年テニスをやっているが、今までで一番良いコーチに出会えたし、自分の弱点も分かり最高の講習会だった。来年も絶対参加する」
と興奮気味だ。「オベラー・テニス・キャンプ ( Oberer Tennis Camp ) 」でもらった6種類のTシャツ、テニスラケットのカバーなども披露しながら、4つ星の高級ホテルで合宿できたことも自慢の1つ。
毎日4時間ずつテニスと筋肉トレーニングをこなし、練習後にビデオを見ながら弱点を検討。コーチが毎回コメントしたレポートも最後に受け取ったという本格的なスポーツキャンプだ。これも高額な部類に属し、3食付で週1300フラン ( 約13万円 ) 。
「高いが3食付だし、子供が喜んでくれたらそれが一番。長い夏休みに1~2週間は私も子供なしで過ごさないともたないし」
と母親のロメンヌさん。家族で3週間スペインに行った後、2人の子供にはおのおの2週間の講習会を組んである。
魔法使いキャンプ
「朝起きたらすぐに魔法使いのとんがり帽子をかぶって1日が始まるの。森で集めた木で夕方はいつもキャンプファイヤーをやったし、ある日は散歩から帰ったら泊まっていたお城みたいな建物が魔女屋敷に変わっていて、スリル満点だった」
と話すのは「魔法使いキャンプ」に昨年参加したセゴレンヌさん。魔法使いの帽子や魔法の棒、コウモリ、蜘蛛などを工作したり、手品を習ったりしたが、一番印象に残っているのは、夜指導員たちが話してくれる、魔法によって本当に起こったできごとの話だったという。
こうしたキャンプはテーマキャンプと呼ばれる。
「散歩やプールに行ったり、食事の手伝いやベットメーキングなどを子供たちが行う伝統的な普通のキャンプにテーマを導入したもので、人気がある」
とカトリック系の主催団体「カリタス・ジュネス ( caritas-jeunesse ) 」のアンヌ・ソフィー・ピアショウさんは言う。
ほかのテーマキャンプに、同団体主催の、4~6歳の子供たちが自分たちで料理を作る「レ・プティ・クイスト( Les p’tits cuistots ) 小さなコックさん」や、ほかの団体主催の、森でアーチェリーをしたり、木に登ったりする「ロビンフッドの森」などもある。 テーマキャンプは普通のキャンプと同額の平均400フラン( 約4万円 ) で、親も普通に子供たちが過ごしているという安心感があるという。
ところで、以上はスイスに住む子供向けの講習会やキャンプだが、数あるスイスのほとんどの私立校は、夏空になった寄宿舎を利用して、外国の子供を対象に語学習得とスポーツを組み合わせた2~3週間単位のキャンプを行っている。
宿題もなく「遊べ、そして遊べ」と、楽しくキャンプをこなす子供たちにとって夏休みは短いが、親にとってはひたすら長いからのようだ。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
スイスの夏の講習会やキャンプは、主に働く親を助けるため、また子供にさまざまな活動の可能性を与えてあげたいという理由から、およそ40年前に始まった。
ジュネーブ州では、カトリック系の団体「カリタス・ジュネス ( caritas-jeunesse ) 」、プロテスタント系の団体「サントル・プロテスタン・ド・バカンス ( Centre Protestant de Vacances / CPV) 」、ジュネーブ市主催の「セルビス・デ・ロワジール・ド・ラ・ジュネス ( Service des Loisirs de la Jeunesse /SLJ) 」が主な伝統的で信頼のある主催者だといわれている。
前2者が30~40、SLJは100近い講習会やキャンプを夏休みに提供している。
上記3団体の平均的値段は1週間3食付のキャンプで約400フラン ( 約4万円 )、2週間で800フラン ( 約8万円 )。14歳以上ではアイルランドやギリシャに1週間という企画もあり、これは約1200フラン ( 約12万円 )。
以上に加え、さまざまなスポーツクラブや語学学校、私立学校が夏の講習会やキャンプを開催する。これらは上記3団体より、値段はかなり高くまた、語学習得を必ず取り入れている点で性格が異なる。
例えば私立の名門「ル・ロゼ ( Le Rosey ) 校」では7月28日から8月15日の3週間、毎日200分の語学授業と3時間のさまざまなスポーツを行う。経費は6600フラン( 約66万円 ) かかる。
カリタス・ジュネス主催の「魔法使いキャンプ」は今年も8月16日から1週間ヴォー州の村マントゥレ ( Menteret ) で行われる。

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