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バーゼル宝飾展開幕

高級時計や宝飾に魅せられ、8日間で9万人のバイヤーや一般客の入場が見込まれるバーゼルワールド Keystone

バーゼルで毎年開催される時計・宝飾展「バーゼルワールド」が3月30日、開幕した。景気が回復し今年は、高級時計や宝飾のブームになるだろうとの予想があるため、今年のメッセにも多くの入場者が訪れることだろう。

スイスの時計業界は昨年、120億フラン(約1兆円)という記録的売上を達成した。世界100カ国から集まるというバイヤーや一般客にこのメッセで注目されることで、昨年を上回る業績を上げようと意気込んでいる。

 まれに見るデラックスなメッセとして毎年、注目度が高いバーゼルワールド。しかし今年は、メッセ会場前で労働組合員がデモを行い、初日前から通常とは違った雰囲気が漂った。東南アジアで宝石のカット作業を行う労働者が石を磨く際に出る石の細粉を吸うなどして、健康を害していると訴えるものだった。

景気上向き期待高まる一方で・・・

 時計・宝飾業界は、今年に大きな期待をかけている。今年の新作で注目されているのは特に腕時計。文字盤に二つの違った時刻を表示するものと、日にちを大きく表示するものだ。また、昨年に引き続いて注目されているのは、時計の機械が透けて見えるスケルトン。

 金、銀、プラチナ製の高級時計の売上は大きく伸びると予想される一方で、低・中価格の時計はこれまでどおり、伸び悩むことになりそうだ。メッセを運営する責任者のジャック・ドゥシェン会長は「スイスから輸出される時計の多くは高級時計で占められる。しかし、スイスの時計業界が中級時計に力を入れなくなることは、非常に危険だ」と現在の状態を懸念する。昨年の2005年は、スイス時計の総輸出額が120億フランまで達し、記録を作ったが、低・中価格の時計は、この記録にまったく寄与していないという。

 高級時計のブームの裏で実は、業界はまん延する偽造時計に悩まされているのである。偽造技術も上がり、さらにインターネット上での取引が、偽造時計のはんらんに拍車をかけている。「(偽造時計を取り締まらないと)最終的には雇用問題にも悪影響がおよぶであろう」とドゥシェン氏は消費者や政府当局、EUの関係機関に向けて警鐘を鳴らす。

宝飾業界に対する非難

 今年のメッセに合わせ、非政府団体(NGO)がバーゼルでその主張をアピールしていることも注目される。たとえばソリフォンズ(Solifonds)。開発国における社会環境を向上させようとするスイスのNGOである。宝飾業界に対して宝飾業界に携わる人の労働条件の向上を訴えている。

 バーゼルワールドの開催初日、メッセ会場の近くで記者会見を開いた。ソリフォンズによると、特にインドや中国では、宝石を磨く仕事に携わる多くの人が、珪肺症(けいはいしょう)で死亡するという。珪肺症とは職業病の一つで、石の細粉が肺に吸入され呼吸困難や肺性心などを起こし、場合によっては死に至る病気だ。こうした悪条件下での労働を強いる企業は、バーゼルワールドには不参加にするべきであるとソリフォンズは訴えている。また、インドおよび中国の宝飾業界に、珪肺症で亡くなった労働者の遺族に賠償金を支払うことも要求している。

 バーゼルワールドで奢侈を極める高級時計・宝飾に目を見張るバイヤーや一般客が、こうしたNGOの訴えに少しでも耳を傾ける気になるだろうか。いずれにせよ今年のバーゼルワールドは、普段とちょっと違った雰囲気だ。

swissinfo、ロバート・ブルックス 佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳

<バーゼルワールド>
2006年3月30日〜4月6日
出展者 45カ国から2127社が参加。(スイス427社、イタリア361社、香港359社)
面積16万平方メートルの会場でブースの大きさは年々拡大。1ブースの平均は52平方メートル
入場者 100カ国から9万人を予想。

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