WHOは、中国が新型コロナウイルスの封じ込めができるとしているが、中国当局が発表した感染者数は急増している
Keystone
中国で発生した新型コロナウイルス感染拡大を受け、スイスの航空会社などが中国へのフライトを一時運休するなど各方面に影響が出ている。世界保健機関(WHO)は30日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
このコンテンツが公開されたのは、
WHOは30日、3度目となる緊急委員会を招集。事態の悪化を受け、緊急事態の宣言に踏み切った。ただ、現時点では中国への渡航や貿易の制限は勧告しないとした。
これに先立ち中国で習近平国家主席と会談したWHOのテドロス事務局長は29日、ジュネーブで報道陣の取材に答え、中国とその指導者たちがウイルス封じ込め対策に尽力していることを感謝した。
テドロス氏は「ウイルス発生に関する習主席の深い知識、自発的な関与に勇気づけられた。これが本当のリーダーシップだ」と語った。
一方、ウイルス感染拡大の速度と範囲に加え、ドイツ、ベトナム、日本、米国などで人から人への感染が確認されたことが懸念材料となっている。
中国当局外部リンクは31日、中国本土での感染者は9692人、死者は213人(30日時点)に上ったと発表。ウイルスは中国全土で確認され、WHOの30日付レポート外部リンクによると、国外で感染が確認されたのは18カ国に広がる。国外での感染例は82件だ。
隔離地域のスイス人
スイス当局は、湖北省武漢市の隔離地域から退去を希望するスイス国民に対し、避難措置を検討している。日本、ドイツ、米国政府などはすでに同様の措置を講じている。
北京のスイス大使館は、隔離地域にいるスイス人ら(退去希望者を含む)と定期的に連絡を取り合っている。
連邦外務省のピエール・アラン・エルツィンガー報道官はswissinfo.chに「外務省は、避難を可能にするため、さまざまな州と連絡を取り合っている」と語った。
外務省は26日、中国のスイス大使館の情報として、武漢市在住のスイス人は8人いると発表。その半数はすでに退去し、その他は現地にとどまる意向だという。
ベルン出身で武漢に住む学生、ファビエンヌ・ブラザーさんは、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)のインタビューで、自身は同市内で事実上隔離状態にあると語った。大学は学生に毎日体温を測定し、結果をオンラインで送るよう要求したという。
ブラザーさんはスイス大使館の支援を利用し、中国を出国したいと語った。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーのインタビューで、ブラザーさんは28日に大使館に連絡を取ったが、新しい情報はなかったと語った。
米国政府高官はロイター通信に対し、駐武漢の外交官を含む米国民220人をチャーター機で出国させたことを認めた。湖北省にある人口1100万人の武漢市は事実上封鎖されている。約6000万人が住む湖北省の多くの地域では、何らかの旅行規制が敷かれている。
フライトの運休
欧州では中国発着便の運航を見合わせる航空会社が出てきている。
スイスインターナショナルエアラインズと親会社ルフトハンザは29日、新型コロナウイルスの流行を受け、中国発着のフライトを一時的に見合わせると発表した。ルフトハンザは同日、 「運用上の理由により、中国(本土)へのフライトの予約受付は2月末まで停止する」と述べた。
香港へのフライトは通常通り運航する。ルフトハンザ、スイス、オーストリア航空は、中国に最後の便を飛ばし、中国に滞在中の乗客と乗務員がドイツ、スイス、オーストリアに帰国できるようにする。
アメリカン航空やブリティッシュエアウェイズを含む他の航空会社の多くも、新型肺炎による死者の急増や、中東で初の感染が確認されたことを受け、同様の措置を講じた。
今週末2日から開催されるローザンヌ国際バレエコンクールの主催団体は30日、swissinfo.chの取材に対し、中国人3人が出場を見合わせたと回答した。
スイス国内では
スイス国内では29日午後時点で、新型コロナウイルス感染の疑いがある症例が50件報告され、検体の分析が行われた。連邦内務省保健局のダニエル・ダウヴァルダー氏は、いずれも陰性だったと述べた。同局は、報告を受けた州など個々の症例の詳細は明らかにしなかった。
スイスの通信社Keystone-SDAなどによると、チューリヒ市中心部から約40キロ離れたアインジーデルンの病院で28日早朝、感染が疑われる男性(47)が収容された。男性は24日に香港の空港に数時間滞在していたという。ただ地元メディア外部リンクはその後、検査の結果が陰性だったと報じた。
チューリヒのトリエムリ病院で収容されていた2人の患者について、病院は28日、検査の結果いずれもコロナウイルスは検出されなかったと発表した。現在、国内では新たに感染が疑われるケースは報告されていない。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの患者2人、コロナウイルス検出されず
このコンテンツが公開されたのは、
中国で感染が広がる新型コロナウイルスで、チューリヒ市内の病院は28日、ウイルス感染の疑いで収容していた患者2人について、いずれもコロナウイルスは検出されなかったと発表した。
もっと読む スイスの患者2人、コロナウイルス検出されず
ダウヴァルダー氏は、分析が終わっていない検体数は明らかにしなかったが、そのプロセスが現在も進行中だと述べた。保健局は数日中に、国民向けの相談窓口ホットラインを設置する。
(英語からの翻訳編集・宇田薫)
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
欧州航空会社、中国発着便の欠航を延期
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)と親会社ルフトハンザは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国発着便の運航停止を延長すると発表した。
もっと読む 欧州航空会社、中国発着便の欠航を延期
おすすめの記事
新型コロナウイルスに効果?特殊な糖分子を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスと英国の研究者グループが、糖の分子構造を改良し、人体に害を与えずにウイルスを殺せる仕組みを完成させた。中国で発生した新型コロナウイルスにも適用できるかもしれないという。
もっと読む 新型コロナウイルスに効果?特殊な糖分子を開発
おすすめの記事
新型肺炎 スイス観光業に影響は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの観光当局は、新型コロナウイルス感染の拡大により、今後数週間でスイスを訪れる中国人観光客の数が30〜50%減少する可能性があると語った。
もっと読む 新型肺炎 スイス観光業に影響は?
おすすめの記事
スイスの患者2人、コロナウイルス検出されず
このコンテンツが公開されたのは、
中国で感染が広がる新型コロナウイルスで、チューリヒ市内の病院は28日、ウイルス感染の疑いで収容していた患者2人について、いずれもコロナウイルスは検出されなかったと発表した。
もっと読む スイスの患者2人、コロナウイルス検出されず
おすすめの記事
コロナウイルス検出キットを開発 スイスの病院
このコンテンツが公開されたのは、
中国で新型コロナウイルスによる肺炎が相次ぐ中、ジュネーブ大学病院が同ウイルスの検出試薬キットを開発した。
もっと読む コロナウイルス検出キットを開発 スイスの病院
おすすめの記事
新型肺炎、スイスが国際的な対応策呼びかけ
このコンテンツが公開されたのは、
中国で感染が拡大する新型コロナウイルスによる肺炎をめぐり、スイスのアラン・ベルセ内務相は、スイスは緊急時の体制は整っているとし、パンデミック(世界的大流行)を防ぐための国際的な取り組みを支援する用意もできていると語った。
もっと読む 新型肺炎、スイスが国際的な対応策呼びかけ
おすすめの記事
予防接種を受けさせないスイスの親たち
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは自分の子供に意図的に予防接種を受けさせない親がいる。だがこういった姿勢は、感染症根絶の妨げにもなっている。なぜ予防接種を拒むのだろう?
もっと読む 予防接種を受けさせないスイスの親たち
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。