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WHO、米国の資金拠出の実態は?

World Health Organization headquarters
世界保健機関(WHO)には150カ国、7千人の職員が働く。事務所は150カ国にあり、本部はジュネーブにある Keystone / Salvatore Di Nolfi

米国は世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス対応をめぐり、WHOへの資金拠出を当面停止すると発表した。米国はWHOの最大の拠出国だ。最近ではいくら拠出し、どのような活動に使われたのか。

米国の資金が永遠にストップすれば、WHOの財源に多大な損失が生じる。2018~19年のWHO予算総額56億ドル(約5990億円)の約15%が、米国からの資金だ。

18~19年のWHOへの拠出額上位10カ国は次の通り。

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ポリオ、結核

WHOの財源は、各加盟国に義務付けられた分担金と、その他の任意拠出で賄われる。分担金は加盟国の国民総所得などの経済指数から算出される。 2018~19年の米国の拠出額のうち、分担金は約4分の1(2億3700万ドル)だ。

近年、WHOへの分担金は減少し、公的・私的の任意拠出が財源の4分の3以上を占める。

米国は18~19年、特定のプログラム・国に使途を限定し、6億5600万ドルを任意拠出した。

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2018~19年のWHOのポリオ撲滅プログラムに対する拠出額でも、最大のドナーは米国だ(1億5800万ドル、または同期間中の任意拠出総額のほぼ30%)。ナイジェリア、パキスタン、ソマリア、コンゴ民主共和国、アフガニスタン、南スーダン、ケニア、エチオピアでのポリオ根絶活動に使われた。

米国は同時期に、イラク、イエメン、スーダン、シリア、アフガニスタンを中心とした地域保健プログラム、一次医療、救急サービス、病院・その他の三次医療施設を支援するWHOの活動に1億ドルを寄付した。

米国はWHOのワクチン、予防可能な疾患対策にも4400万ドルを拠出したほか、各国のはしか、風疹、B型肝炎などのワクチン接種計画実施を支援している。結核対策にも3300万ドルを提供した。

トランプ米大統領は14日、米国がWHOのコロナウイルス対応を検証する間、資金拠出を凍結すると発表。検証には60〜90日かかる見込みとした。

トランプ氏は、WHOがパンデミック対応を誤ったために感染が広がったと批判。WHOと中国との関係にも触れ、WHOが責任を負うべきだと述べた。米国の決定に対し、公衆衛生の専門家・リーダーたちからは批判が挙がった。グテーレス国連事務総長は、資金拠出の削減は「今ではない」と訴えた。

ジュネーブ安全保障政策研究所(GCSP)外部リンクの公衆衛生の専門家ジル・プムロル氏は「批判の一部はその通りかもしれない」と話す。 「確かに、WHOの反応に遅れはあったようだ」

しかし同機関の自治は限られ、リーダーシップは加盟国の意思に大きく左右されると指摘した。

プムロル氏は「WHOの年間予算は20億ドルと途方もなく小さい。80%は任意拠出に頼っている」と話す。「これが政治的圧力のさらなる引き金になっている」

2018~19年、スイスは3880万ドル(分担金1090万ドル、任意拠出2790万ドル)を拠出した。440万ドルは熱帯病の研究、310万ドルはヒトの生殖研究、220万ドルは国の保健政策・戦略に使われた。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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