ジュネーブがテクノロジーのメッカに
ウェブ ( world wide web ) 発祥の地、ジュネーブでインターネットを含めたあらゆる技術革新について話し合うシンポジウム「リフト07 ( Lift ) 」が2月8、9の両日に開かれた。
リフト07 ( 生命、アイデア、将来をともに、Life, Ideas, Futures Together ) は情報技術革新の最前線にいる人々を集めて、情報社会の未来への影響を考える。世界中から有名な研究者やブロガー が集まって、将来の問題提起、意見交換をするとともに情報社会のコミュニティーを広げるのが目的だ。
今年で2年目のリフト07のテーマは「移動するテクノロジー」。今年も世界的に有名なブログ ( Microsoft geek bloger ) を持つロバート・スコブル氏など多くのブロガーとともに、文化人類学者、ロボット工学者、アーチスト、民俗学者、建築家、リサーチャーや銀行員などがそれぞれの分野での将来を展望した。
参加型に移行するインターネット
「インターネットやインターフェイス技術は次第に、どこからでもアクセスできる小さいスクリーンに移動しています」と説明するのは主催者のロラン・オーグ氏。「これら情報技術革新が教育、宗教、社会全般にどう影響を与えるか、悪影響も含めて考察する」という。
また、今年のユニークな点は参加者が提案するテーマをネット投票で人気の高い順に選び、最終日には参加者がパネラーになる新しい試みがなされた。「これによって主催者が思い付かなかったテーマも議題にのせることができる」とオーグ氏。
この参加型こそ、情報社会の新しい方向なのか。オープニングはインターネットの参加型無料百科事典「ウィキペディア ( wikipedia ) 」の役員、フロランス・デヴァール氏。会場でウィキペディアを知らない人はおらず、半分以上の人が記事の編集に参加したことがあった。
「全人類の知識をシェアーできるというアイデアのもとから始まった」このウィキペディアの強みは、ネットに接続できる全ての市民が知の集積に自ら石を積み上げられる。現在は250カ国語で600万件の項目がある。
デヴァール氏はディドロなど18世紀の仏啓蒙思想家が集大成した『百科事典』を例に挙げ、「百科事典がフランス革命を導いたように、これらの知の集大成は新しい時代の幕を開ける」と締めくくった。
未来は皆サイボーグ
この他、ローザンヌ工科大学のエーアイ ( AI ) 研究者フレデリック・カプラン氏が自らの経験から学習するロボット犬の実験を紹介。また、スイス人文化人類学者のダニエラ・チェルキ氏が英国リーディング大学サイボーグ教授、ケヴィン・ワーヴィック氏の「サイバネティックス研究(人工頭脳学)」を紹介するなど会場はSF小説の様相を帯びた。この世間を騒がせたワーヴィック教授の実験は自らの左腕にチップを埋め込み、センサーと神経をつないで義手を操作するというもの。
チェルキ氏は「どこまで技術とのインターフェイスが可能で、われわれはどこまで望んでいるのか?」といった倫理的問題を投げかけた。さすがに、このような情報技術エリートの集まりのせいか「技術革新の何が悪い」といった声も聞かれた。この技術崇拝には少々疑問も残った。
swissinfo、 屋山明乃(ややま あけの)
二つのものの間に立って、情報のやり取りを仲介するもの。またはその規格。(IT用語辞典E-Words より抜擢)
人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステム。具体的には人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムのことをいう。(IT用語辞典E-Words より抜擢)
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