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恐竜時代のエアーバッグ

ディプロドクスの化石を電子レベルで分析すると、筋、筋肉のほかに空気の袋が首の脊髄の周りを囲んでいることがわかる (写真 : バーゼル自然科学博物館) Naturhistorisches Museum Basel

長い首がトレードマークの恐竜のディプロドクスは、首の部分に形成された空気袋が脊髄を守り、首が簡単には折れないようになっていた。

バーゼルの自然科学博物館の調査チームが、ニュートロン断層撮影法などを使って、明らかにした恐竜の秘密である。

 ディプロドクスは体長30�b、重さ12�d、高さが4�bと史上最大の恐竜だった。草食で7�bもの長い首を上手に操って、草などの食べ物を捜していた。いくら大型恐竜で強そうに見えるといっても、これほど長い首を優雅に軽々と動かすには、他の恐竜にはない、特別な仕組みがあった。

鳥のように

 優雅に首を動かすことができたのは、筋肉や筋のほかに、首に空気袋が付いていて、肺から息を送り込むことで、首の体積を膨張させ、首全体の重量を2割ほど軽くしていたことは、これまでにも知られていた。

 鳥の肺も脊髄に直接つながる構造を持っている。ディプロドクスの首とは規模が大きく違うものの、同様の原理が働いている。恐竜は鳥の祖先でもあったわけだが、鳥の構造の一部は恐竜の名残なのかもしれない。

 さて、バーゼル自然科学博物館のダニエラ・シュヴァルツ氏は、ディプロドクスの首には空気袋、もしくは空気管というような器官があり、体重を軽くするほかに、別の機能もあったのではないかという疑問から、各方面の専門家とチームを組んで研究を始めた。このほどこの結果は博士論文にまとめられ、発表された。

力持ちの空気クレーンとしての機能発見

 アータール(Aathal、チューリヒ州)にある恐竜博物館が保管する恐竜の化石を、中性子断層撮影法(NT)やコンピューター断層撮影法(CT)なども使って分析し、恐竜の首の構造の再現が試みられた。特に中性子断層撮影法では、樹脂の違いに影響される映像を得ることができるため、化石から恐竜の器官の素材の違いが判別できる。こうした方法は空気袋の分析に大いに役立ったという。

 いろいろある断層影像法の性質を利用し、各界の専門家と共同でディプロドクスの空気袋とその周辺にある首の柔らかい部分を立体的に再現することに成功した。

 「ディプロドクスは、脊髄を囲むようにして3つの部屋に分かれる空気袋を持っていたことが分かりました。この袋は、体積を増やすばかりではなく、首を支える脊髄の負担を軽くするためにあったのだと分析されます」とシュヴァルツ氏。「空気袋はまるで重いものを引き上げるクレーンのようにして動き、ディプロドクスの首は、草を求めて優雅に動いていたわけです」

swissinfo、 クリスティアン・ラーフラウブ 佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳

ディプロドクス
体重12�d 体長30�b 高さ4�b 首の長さ7�b。
ジュラ後紀(1億5600万から1億4400万年前)に繁栄した草食の大型恐竜。
主に現在の米国で繁殖。

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