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本当のスイスとは何ぞや

スイス名物、アルペンホルンは10km先からでも聞こえる。 WerdVerlag

銀行、時計、チーズにチョコレート、ハイジ、アルプス、武装した永世中立国・・・。スイスほど実態に関係のない決まり文句で語られる国もそうそうないだろう。

実績あるスイス研究家でも、それが昔のことなのか現在でもそうなのか、観光客を呼び込むための戦略で打ち出しているだけなのか、本当のことを知ることは難しい。

クリスティナ・ケルテさんは、2重国籍を持つスイス生まれのドイツ在住写真家だ。「スイスとは一体何か」という問いに答えるのに、おそらく彼女ほどの適役はいないだろう。

ケルテさんが最近出版した本、『私達、実は違うんです』(We’re Different, Actually)は、豊富な写真と共に、誰もが頭に浮かぶ「スイスの事実」を題材にした意欲作だ。

「スイスは世間で言われているように、1つの決まり文句でくくれるほど簡単な国ではありません。この国を理解するには、お金ではなく、時間と労力が必要です」とケルテさんはスイスインフォのインタビューに語った。

どの「スイス」についておっしゃってます?

ケルテさんが旅行者にしたい最初の質問は「どのスイスについておっしゃっているのですか?」ということだ。スイスといっても本当にいろいろあるのだ。

面積はたった4万1000km2。米国でもっとも大きな州であるカリフォルニアの10分の1、フランスと比べても7%のサイズしかないこの小さな国は、驚くべき地理的・文化的多様性を内に抱えている。これだけ多くの多様性があれば、スイスを単純に一言で表すのは、確かに無理というものだ。

「スイスを出て生活をするうち、この国があまりに単純な、使い古された言葉で表現されていることについて何とかしたいと思うようになりました」。ケルテさんは本を書いた動機を振り返る。

「私は、スイスに関する世間一般のイメージが実情とどう違うか、ということを掘り下げたかったのです。つまり、イメージはイメージとして打ち出されているけれども現実は違う、ということや、漫画化された情報などは真に受けないでほしい、ということをはっきりさせたかったのです」

スイスのイメージについて著作を持つペーター・ビクセルの言葉を借りてケルテさんは続ける。「外国の人々は、『スイス人は日曜日になるとみんなマッターホルンにピクニックに行く』などということを本気で思っているようです。スイス人は外国人から『これがスイスだ』というものを初めて教えられてびっくりするのです」

ハイジの国

 スイスのイメージの最たるものは「純朴な少女がアルプスの山で元気よく飛び跳ねている」という情景だろう。だが、ケルテさんの著書はそのイメージを潔く裏切って始まる。「ハイジの国」を予想してページを開いた読者を迎えるのは、高速道路のサービスエリアについての記述だ。この新しいスイスのイメージは、観光客が押し寄せるハイジの山、マインフェルトと共に描かれている。

ハイジほどスイスのイメージを決定的にしたものはない。しかし、編集者のウーリ・ギール氏は「ハイジなんて、もうとっくの昔に消えてしまった夢のようなものです」と語る。「それでも、『夢のハイジ』はスイスの観光業界にとってなくてはならないものなのです」

皆さんの疑問にお答えします

ケルテさんは『お父さん、スイスには、山のない地域もあるの?』の項でスイスの田舎も取り上げているほか、アルペンホルンやスイス・アーミーなど典型的なスイスの製品についても今までとは違った視点から書いている。

もちろんウイリアム・テルに触れずにこの手の本は完成しない。スイス建国のヒーローだが、これも実在したことのない伝説の人物だ。ケルテさんの筆はこのヒーローにも容赦ないが、この「常識を覆す」アプローチは、マックス・フリッシュ氏の「教科書に出てくるウイリアム・テル」(William Tell As A Schoolbook)を土台にしてさらに発展させている。これを読めばヒーローとかけ離れた存在が見えてくる。

「ちょっと1日スイス人をやってみる」の項を読めば、多様な文化が混ざり合ったこの国で、「スイス人」とはどういうことか多くの疑問が出てくるに違いない。この疑問1つ1つに答えも用意されている。

どれが本当の「スイス」だろう?あなたはどんな「スイス」がお好みですか?

swissinfo外電、遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

『私達、実は違うんです』(We’re Different, Actually)は、ドイツ語で出版される

『私達、実は違うんです』(We’re Different, Actually)は、ドイツ語で出版される。

‐著者であるクリスティナ・ケルテさんは、「スイスを理解するのに必要なのはお金ではなくて時間だ」と語る。

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