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スイス航空を描く 映画「グラウンディング」のすべて

スイス航空CEO マリオ・コルティの努力もむなしく、スイス航空は「グラウンディング」の運命をたどる(写真提供 : Filmcoopi Zürich) Filmcoopi Zürich AG

スイス航空の凋落を描いた「グラウンディング—スイス航空の最期の日々」(Grounding Die letzten Tage der Swissair)の全国ロードショーが1月19日から始まる。事実にフィクションの人間ドラマを絡ませ、アップテンポで描かれる。最初から最後まで緊張続きの映画だ。

現在、独・ルフトハンザの傘下にあるスイス航空は、スイス人が愛し続けたスイスを代表するブランドでもあった。この映画を機会に、スイス航空に対する郷愁が再燃するかもしれない。

 映画はジャーナリストのルネ・レヒンガー氏の二冊の著書『スイス航空 神話とグラウンディング』(Swissair – Mythos und Grounding)と『スイス航空のケース』(Der Fall der Swissair)を元にして作られた、原作同様、関わった企業および経済界の主要人物が実名で登場する。このためスイス航空が「グラウンディング」にいたる最大の責任者として描かれているスイス大手銀行のUBSは、政府およびプロデューサーに対してこの映画の製作を阻止しようと動いたという。

凋落への道

 映画は、スイスの欧州経済共同体(EEA)への加盟が国民投票で否決されたことを伝えるニュースで始まる。国内経済への影響を楽観視する政治家がいる一方、スイスが欧州諸国の中で孤立したと見るスイス航空の経営陣は、外国の航空会社を次々と買収し始めた。スイス航空は買収を通して大企業に変容することで、その生きる道を模索し始めた。

 こうしたドキュメントニュースが何本も流れる中、ドラマが展開する。フィクションの部分では、シングルマザーのフライトアテンダントとアルコール中毒のパイロットとの恋の物語も、情感たっぷりに描かれている。イタリアから移民としてスイスに住み着き、30年もの間、スイス航空の機内食を作ってきた父親とUBSに働く息子は、経済国スイスへに対する希望を裏切られる古い世代とグローバル化を体現する新しい経済の時代を象徴する。

 スイス航空の経営は一向に好転せず、2000年にはついに29億フラン(約2600億円)の赤字を計上した。翌年3月、食品大手のネスレよりマリオ・コルティがスイス航空の救済者として招聘された。しかし「スーパーマリオ」と期待を掛けられたコルティと融資者のUBS、クレディ・スイス、クロスエアー航空の社長、連邦政府との駆け引きの努力もむなしく、金繰りに行き詰まり10月2日、燃料費も払えなくなりスイス航空のフライトは全面ストップした。

インサイダーならより楽しめる

 マリオ・コルティ役を演じたハンスペーター・ミューラー氏が「ジェスチャーなど上辺を真似するのではなく、彼の心理を勉強した」と語るように、役者はメイクで多少は実物に似せているものの、外見での類似点はあまり見られない。ドキュメンタリーの部分と俳優が演じる部分が交錯することや、一貫してスイスの方言で語られることなどから、スイス人でなければ心置きなく映画の面白さに集中できるとは言いがたいのが難点だ。

 200万フラン(約1億8000万円)で1本の映画を作るというスイス映画界では異例の400万フラン(約3億6000万円)の制作費をかけた。このうち125万フラン(約1億1000万円)は連邦内務省の文化局からの援助である。

 「スイス人のために作った。この映画のテーマからして、スイス国外でも成功したいといった思い上がりの気持ちはない」とプロデューサーのペーター・クリスティアン・フーター氏。スイス航空の関係者をはじめ、スイス航空に愛着のあるスイス人なら、是非観たいと思うであろう映画だ。公開前のキャンペーンもみっちりと組んであり、フーター氏は少なくとも30万人の観客を期待するという。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ) 

監督 ミヒャエル・シュタイナー
マリオ・コルティ ハンスペーター・ミューラー・ドロッサルト
マルセル・オスペル ジル・チュディ
上映時間2時間20分
2006年1月19日から全国ロードショー

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