ペットにチップ埋め込み、EUで7月から義務化 スイスも追随

欧州連合(EU)では、飼っている犬と猫に、飼い主などのデータを記録したマイクロチップ(電子標識器具)を埋め込むことを7月1日から義務化する。迷子・盗難によるペットの捜索が可能になるほか、飼い主の責任を明確化することにも狙いがある。
こうしたマイクロチップの埋め込みは、EUだけでなくスイスでも広がっており、2006年には全国で義務化する見通しだ。
これを受けて、動物用のマイクロチップを製造するスイスのデータマース社は、EUとスイスでの売り込みに攻勢をかけ始めた。
拡大する市場
マイクロチップは米粒ほどの大きさで、動物の首の裏の皮下に専用の注射器を使って獣医が埋め込む。痛みはワクチンなどの予防接種と同じ程度といわれる。体内で移動することはなく、一度埋め込むと25年以上も作動するため、犬や猫の生涯を通じて使える。
中に超小型集積回路(IC)が組み込まれているため、専用の読み取り機でマイクロチップの番号が読み取れる。この番号で、犬の品種、名前から飼い主の住所までわかる仕組みだ。
マイクロチップ本体や施術料などをあわせると、総額80フラン(約6,980円)程度。
こうしたマイクロチップの埋め込みは、義務化でさらに加速する。スイスでは、45万匹の犬が飼われているとの試算がある。それに基づくと、同国だけで3,000万フラン(約26億円)以上の市場規模になる。
データマース社
パルビス・ハサン・ゼイド氏がデータマース社を南スイスのルガノ近郊に立ち上げたのは1988年のこと。従業員はたったの4人だった。
「当時、これがビジネスになるとは誰も信じてくれなくてね」とゼイド氏は苦笑する。立ち上げに必要な資金集めにも苦労した。現在は、従業員も65人に増え、年間の売上高が2,000万フラン(約17億円)になる企業に成長した。
データマース社は今後、マイクロチップをペット以外の動物にも拡げる考えだ。EUでは、羊とヤギのマイクロチップ埋め込みを2008年までには義務付ける見通しで、豚や牛などの家畜にも広がると見られているためだ。
ゼイド氏によると、同じ方法を人間に適用することも技術的には可能だという。ただし、「倫理上の問題をまずクリアしなくてはいけないけどね」と話している。
スイス国際放送 ゲハルト・ロブ 安達聡子(あだちさとこ)意訳
スイスでは、約45万匹の犬と100万匹以上の猫が飼われていると言われる。

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