ユーロの海に浮かぶ孤島 スイスフラン
ヨーロッパの真ん中に位置し、ユーロゾーンに囲まれながら、スイスでは依然としてスイスフランを優先する。新しい単一通貨としてユーロが流通して5年たった。ユーロの中に浮かぶスイスフランの行方はどうなるのか。
ユーロの導入はスイスにとっても自国経済を激変することなくスムーズにいった。むしろ、スイスフランはユーロと安定した関係を築いた。
30年の長いプロセスを経てユーロは2002年1月1日、EU加盟12カ国の単一通貨として導入された。現在では3億人の市民が使用する強い通貨となっている。
なんといってもスイスフラン
通貨の孤島スイスでも、ユーロが使えないわけでは決してない。街中のホテル、空港や店ではユーロで支払える場所も多い。しかし、依然として釣りはスイスフランだったり、レートが不利だったりするのでスイスフランを所持している方が便利だ。
多くのスイス人は近隣諸国に買い物、旅行に行ったりするのでユーロを持っている。しかし、ジュネーブのシズ銀行の経済アナリスト、ジェローム・シュップ氏は「国内ではスイスフランが断然、優先されています。スイス経済がフランとユーロの2つの通貨で支えられているとはとてもいえません」という。
スイス国立銀行の報告によると、ユーロがフランを脅かす立場になるのには重要な雇用契約、貸付けやリースなどといった契約の際に使われるようになった時だという。しかし、このような契約のほとんど全てで今もスイスフランがベースになっている。
シュップ氏は「ファイナンスの分野ではユーロの影響は革命的とまではいえないが、多大なものでした。ユーロはドイツのマルクが担っていた信頼性を引き継いだ」と言う。
安定の優位
ユーロの導入はインフレを招いたためドイツ、フランスやイタリアなど多くの国では手放しで喜ぶというよりも不平不満が多く出た。反対にスイス経済と財政は恩恵を被ったといえる。
これまでは変化しやすかったイタリアリラ、フランスフランやスペインペセタなどに変わってユーロが安定したことでスイスフランとユーロに新しい状況が生まれた。
スイスのように欧州諸国を中心とした対外輸出に頼っている経済ではこの安定は天の恵みだ。弱いスイスフラン−強いユーロに支えられ、昨年の輸出額は12.9%伸び、総額で1772億フラン ( 約17兆円 ) に達した( スイス企業連盟発表 ) 。スイスフランに対してユーロは上がり続け、一昔前までは1ユーロ1.45フランだったものが、今週は1ユーロ、1.62フランにも達した。
「ユーロの中に消えてしまったさまざまな欧州通貨に代わって、スイスフランは一つの金融通貨として強くなった」と前出のシュップ氏。「現在ではスイスフランはユーロ、ドル、イギリスポンドや日本円とともに世界で最も重要な通貨の1つとなった」と分析する。
swissinfo、マルツィオ・ペスカ 屋山明乃 ( ややま あけの ) 意訳
– ユーロはポルトガル、スペイン、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、イタリア、ドイツ、スロベニア、ギリシャ、アイルランド、オーストリアとフィンランドの13カ国で使用されている。
– 最新の「ユーロバロメーター」によるとヨーロッパ市民の48%のみがこの単一通貨を良いものとみている。(2002年には59%だった)
– 2002年には2210億ユーロ相当の紙幣が出回っていたが、2006年12月末には6000億ユーロ が流通している。
– 米国ドルは中央銀行や国の準備金の最も重要な通貨であり続けるが、ユーロ紙幣は世界で最も流通している通貨である。
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