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金融規制改革めぐりスイス超党派が妥協案 UBSの負担を緩和

議員らは、UBSがAT1債を利用して海外部門の資本金の半分までカバーできるようにすることを提案している。
スイスの議員らは、UBSが海外部門の資本金の50%までAT1債でカバーできるようにする妥協案を提示した Keystone / Urs Flueeler

スイス最大手行UBSと金融当局との2年にわたる攻防に終止符が打たれる見通しとなった。UBSの追加負担を大幅軽減する妥協案がまとまり、議会審議が加速する可能性がある。

スイスの超党派議員団は今月上旬、政府の当初計画を大幅に骨抜きにする妥協案を提示した。アナリストらの見方では、議員らが提示したロードマップを銀行側は慎重ながらも歓迎しており、政府・UBS間の膠着状態が破られる可能性がある。

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妥協案の主なポイントは以下の通り。

海外子会社の資本

スイス連邦内閣(政府)は6月、クレディ・スイスのような大銀行の破綻リスクを軽減するため、銀行の資本要件を最大260億ドル(約4兆円)引き上げることを提案した。UBSは2023年3月、政府主導の救済措置として、ライバル行のクレディ・スイスを買収した。

政府が提示した「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行規制の改革案は、UBSに対し、国外子会社の資本を親銀行の資本で裏付ける義務を100%に引き上げることを柱としている。政府によると、引き上げによりUBSは約230億ドルの追加的な損失吸収資本を担保する必要がある。

現在、UBSはアメリカやイギリスなどの海外子会社の資本の60%に当たる資本を親銀行で担保することが義務付けられている。

政府案は、海外子会社の全額資本化要件を満たすためにUBSが積むことができるのは、銀行資本の中で最も厳しいCET1(中核的自己資本)に限定されている。

だが議員らは、UBSは海外部門の資本のうち50%まで「その他ティア1(AT1)債」を引き当てることを容認し、全体的な資本への打撃を大幅に軽減することを提案した。

CET1資本(主に普通株式と内部留保)は、銀行が保有する資本の中で最も質が高い。銀行の損失吸収のための重要なバッファーとして機能し、通常は危機発生時に最初に利用される。このため銀行資本の中で最も価値の高い資本でもある。

AT1債は、従来の資本階層においてCET1の下位に位置する銀行が発行する債券。貸し手が経営難に陥った場合、株式に転換されるか、減額される。AT1債は通常、寝室吸収としてはCET1の後に利用されるため、投資家のリスク負担は少なく、銀行にとって安価な資本形態とされる。UBSの7~9月期決算によると、CET1資本を747億ドル、AT1債を203億ドル保有する。

JPモルガン・チェースの上級株式アナリスト、キアン・アブホセイン氏の試算によると、海外部門の資本の最大50%をAT1債でカバーすることが容認されれば、UBSはCET1資本を4億ドルを追加調達するだけで済むことになる。

海外部門の資本を100%CET1資本のみで引き当てるという政府の原案では、推定204億ドルが必要となる。アブホセイン氏は、妥協案ではUBSが新たに約160億ドルのAT1債務を調達する必要があると付け加えた。

UBSの株主の1社であるアクシオム・オルタナティブ・インベストメンツのマネージングパートナー、ジェローム・ルグラス氏は、「子会社の50%をCET1ではなくAT1で担保することは、大きなインパクトをもたらす」と語った。「これにより、必要なCET1の額は(UBSの)現在の水準に大きく近づくことになるだろう」

鬼門のAT1債

だが、UBSの資本増強のためにAT1債の利用を認めるという提案は物議を醸す可能性が高い。2023年のクレディ・スイス買収劇でも、AT1債の扱いをめぐりスイス政府に批判の矛先が向けられた。

スイス政府が主導したUBSとクレディ・スイスの合併では、本来優先されるべき債券保有者が損失を被る一方、株主は33億ドルを回収することが可能だった。

スイスの裁判所は10月、規制当局がクレディ・スイスのAT1債165億フラン(約3兆3000億円)を無価値化した決定は違法であるとの判決を下したが、投資家への償還の是非については判断しなかった。スイス金融監督庁(FINMA)とUBSはこの判決を不服として上訴している。だが債券保有者は、UBSとの和解に向けた方策を模索している。

「もし妥協案が実現すれば、資本増強の大半がこれまで非常に批判されてきたAT1債から賄われる、という奇妙なシナリオに陥ることになるだろう」(ルグラス氏)

資産評価方法

政府のTBTF規制改革案のもう一つの争点は、UBSの資本基盤の「質」の強化に関するものだ。具体的には、繰延税金資産(DTA)、社内ソフトウェア、その他帳簿上の評価が困難な項目といった項目の定量化を厳しくすることだ。

政府案は、UBSにとって資本とみなされるものの定義を事実上再定義した。ソフトウェアとDTAの価値が割り引かれることになり、UBSは約110億ドルを失う。

政府は、変更によりUBS親銀行の資本要件が約30億ドル増加すると見積もる。だが一部のアナリストの推定では、グループ全体への影響は110億ドルに上る可能性がある。

議員らの妥協案は、スイスの銀行は評価が難しい資産の大半についてのみ国際ルールに従うよう義務付けられるべきである、と勧告した。事実上、この点について政府案を放棄するよう迫るものだ。

妥協案は、銀行ソフトウェアの取り扱いはEU規則に従い、DTAは引き続きEU、英国、米国、バーゼルIII規制に従って扱われるべきであると明記した。

「EU、英国、米国、アジアの主要金融センターのルールとの隔たりが、スイスの競争力を損なうほど大きくなってはならない」と勧告した。

投資銀行部門に上限

妥協案は最後に、UBSの投資銀行部門の規模をリスク加重資産(RWA)の30%に制限することを勧告した。

UBSは既に自主規制として、投資銀行部門をRWAの25%に制限している。UBSのビジネスモデルが、リスクの高いトレーディングやM&A業務よりも、比較的安定したウェルスマネジメント業務に大きく依存しているためだ。

UBS幹部は、法的な上限設定に賛成の意向を示している。議員らは、UBSがこの上限を超えた場合には「裁量的資本サーチャージ」を課すべきだと提言した。

今後の動き

UBSの資本状況をめぐる騒動は、同行の株価に重くのしかかっていた。政府の改革案が初めて提示された2024年4月以来、ユーロ圏の大手金融機関の動向を追跡するユーロ・ストックス銀行指数が150%上昇したのに対し、UBS株は約25%しか上がっていない。

妥協案はアナリストや投資家を活気づけている。妥協案の作成に関与した4大政党は、スイス議会両院の過半数を占める。

この点は重要だ。改革の最大の争点である海外子会社の資本要件の変更は、議会の承認を必要とするためだ。改革に関する意見公募手続きは1月上旬に締め切られ、2026年後半に議会審議が始まる予定だ。

一方、資産評価に関する改革は、連邦内閣による政令で決まる。来年上半期にも決定が下される見込みだ。

フォントベル銀行のアナリスト、アンドレアス・ベンディッティ氏は、妥協案に関与した政党が全会一致で賛成票を投じるかどうかは断言できないと警告した。

ただ同氏は、妥協案により議会の審議が加速し、UBSにかかる不確実性を軽減できる可能性があるとも指摘した。

「全員が同意すれば、来年末までにことが片付く可能性がある」

慎重な楽観論もある。JPモルガンのアブホセイン氏は、妥協案は「議論を有益な方向に進める」とみる。アクシオムのルグラス氏は「ゴールラインに近づいているようだ」と語った。

Copyright The Financial Times Limited 2025

英語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子

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