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11/24国民投票:難民規制強化案、僅差で否決

難民法強化案は僅差で否決 swissinfo.ch

24日に行われた国民投票で、右派・人民党系市民団体から発議されたスイスへの難民流入を事実上拒否する難民法改正案が僅差で拒否された。

総票2、240、000中反対票がわずかに3、422票上回った。が、あまりにも僅差だったため連邦政府は6週間から8週間の間に再集計を行う決定、投票結果は暫定的とされる。

難民法規制強化案は、反対50.1%、賛成49.9%という1891年国民投票開始以来の僅差で否決された。投票率は47%。国連加盟をかけた3月3日の国連投票が57.7%だったことに比べると、平均的な数字だった。

今回、人民党系市民団体から発議された難民法強化案は、1)安全な国を経由してスイスへ入国した外国人の難民申請を認めず、難民審査をせずに経由国へ強制送還する、2)送還までの間は最少限度の住居・食糧を提供し労働は禁止する、を基本としたもの。すらわち、スイスへの難民保護申請者の数を減らし、申請が受理されなかった人々への保護・保証を減らす事で国民(納税者)の負担を削減するという点をうたい文句にした法改正案だった。

連邦当局によると、スイスの難民申請者のうち95%はオーストリア、イタリア、ドイツ、フランスなど近隣諸国を経由して入国する。もし可決されていたら、スイスは事実上難民受け入れ拒否法が成立するにも等しかった。

国民投票の集計法は、全国民の総得票率と州別の多数決で決定する。州別投票結果は、毎度ながら言語圏による差違が濃厚で、スイスの金融センター・チューリッヒ州はじめ独語州では賛成が多数、反して仏語州は全州が反対だったが、州別では賛成が過半数を占めた。

連邦政府の難民法改正案反対キャンペーンを主導したルート・メツラー司法警察相は、投票結果に対し「人道的な難民政策を維持でき、安心した。世界で最も豊かな国の1つスイスが世界初の難民受け入れ拒否国となっていたら、スイスに対する国際的な反響は大変なことになっていただろう。」と語った。

また、投票結果が国民投票史上で最も僅差だったことについては、「これほどの僅差になるとは予想しておらず、ヒッチコック映画のラストのようだった」と手に汗握る展開であったことを打ち明けた。そして、あまりにも僅差であったことにたいして、難民政策についてさらに真剣に取り組む義務が政府にのしかかったと述べた。

連邦政府は、結果は暫定的で連邦中央選管が再集計を行うと発表、再集計結果が連邦当局に提出された後、結果が覆される可能性もあると認めた。連邦選管によると、再集計には数週間かかるという。集計結果は2000票から1万票の修正が行われることがしばしばで、今回の場合は投票結果が覆される可能性が十分ある。

難民法改正案を発議した人民党は、否決はされたものの投票結果には満足しているとのコメントを発表した。「投票結果は国民が連邦政府を信じておらず、我々を信じていることを証明した。ほとんど(我々の)勝利に等しい僅差だったのだから、政府は今度こそスイスの(人道)制度悪用に対して何らかの対処をするだろうと期待している。」と、人民党のアリキ・パナイデス連邦議会議員はswissinfoに述べた。

人民党は、国民総得票では反対票が多かったが、州別で過半数を獲得できたことに勢いづいている。州別で過半数を占めたものが、国民総得票で反対を上回ったのは国民投票史上3回め。

94年から01年の間、スイスは欧州で最大数の難民申請者を受け入れてきた。その数は住民1万人あたり267人で、2位のオランダ(179人)、独96人、英国77人、仏34人をはるかに凌ぐ。

反対50.1%、賛成49.9%、で否決(投票率47%)。投票者総数2、240、000人中、反対票は3、422票上回る。
州別では過半数州が賛成。
難民法強化案が国民投票で否決されたのは10回目。
あまりの僅差のため中央選管が再集計を決定、再集計後結果が覆る可能性も。

スイスの州(カントン):

正確には26州ある。が、準州が6つある。アッペンルツェルのインナーローデン/アウターローデン、バーゼルのシュタット/ラント、ウンターヴァルデンのニトヴァルデン/オブヴァルデンは投票の際には2州そろって1州とするので全23州と数える。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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