もぐもぐスイス味 第3弾 その7 ― モモヨ隊員とデザイン建築に見とれ ―
イタリア語圏ティチーノ州ルガーノは、世界的に知られたスイスの建築家マリオ・ボッタが生まれた街。彼は今もここを拠点に活躍を続ける。
左手にビル、右手にバスターミナルと、ボッタの作品を眺めながらフランスチーニ通りを真っ直ぐ行くと、代表作の1つである銀行「バンカ・ゴッタルド」に着く。この中にあるレストランで昼食を取るのはきっと素敵だと、モモヨ隊員と勇み立った。
素材にこだわるボッタは、この銀行の外装にティチーノ産の灰色の石とブラジル産のピンクの石を使った。この2種類の石が織り成すストライプ模様はシャープで気品がある。銀行の受付から入り、フィンランド産の白樺の木がかもし出す暖かい雰囲気の内装を楽しみながら、レストラン・クリスターロ ( Cristallo ) はどこかと探すと奥まった右手に案内された。もちろん外からも直接入れる。
素材にこだわり
レストランに入ってみると、インテリアはベージュと白で統一されていた。特にテーブルセッティングはすべて白。パン入れもハイテク風の細長い白の陶器。それにマッチするよう、パンさえ真四角にデザインされ焼かれたのかと疑う。サラダも緑の色鮮やかに白のお碗型の食器に収まっている。
白いさまざまな食器類が光と影を作り、テーブル上は白黒の絵の世界のよう、などと感慨にふけっていると、サッとメインが登場。白身の魚のクレープ包みとシンプルなステーキ。量がちょうど良く、肉は素材が選び抜かれている気がする。
食前酒に飲んだ地元産の白ワインも、サラダにかけたオリーブオイルも味わい深く、厳選されていた。きっとチーズも選ばれた逸品に違いないと注文。チーズワゴンから選ぶと、黒い石の板に、各々のチーズに合うソースやジャムが添えられ、これまた絵のように並べられてサービスされた。
料理そのものは決して凝ったものではなく、むしろシンプル。しかし、ボッタが建築素材にこだわるように、ここも食器の素材にこだわり、食材にこだわり、そのものがもっている真の味を生かして提供しようとしている「素材こだわりレストラン」だと感じた。
・・・でモモヨ隊員は
「楽しんでらっしゃいますか、レイディーズ? 」 営業マンのようなフロアマネジャー ( 若くてハンサム ) が、にこやかに声を掛けてくる。
店内を見回すと、右にはディレクター、左を見れば課長たちが、みな2人一組できびきびとご飯を召し上がってらっしゃる。炒めたてのほうれん草だわ、これ。きちんとお料理されててお肉の質もいいわあ。器もステキ。
隊長、その、ここはご飯おいしいしサービスも気持いいですけど、愛は語れませんよね。愛は。そうかしらね。そっちの魚も凝ってるのにさっぱりしてて良さそうね。
ビジネスランチの牙城ですよ。ええ、いけます、これ、なんだか分かりませんけど。男性好みのインテリアね。あ、あのチーズワゴン見て。おいしそうだわああ。デザートに1切れ2切れもらおうかしら。
ゆうゆうと四種類のチーズを平らげ晴れやかな顔の隊長。ほかに見るものも余り無いので、隊長を見詰め続けててしまう。われわれにもビジネスの話があれば、さぞやどんどん進んだと思われる。決して食べるのは遅くないわれわれだが、それでも時間を無駄にしない銀行マンたちより遅れを取ることかなり。良いお食事をした満足と微妙な緊張感と共にレストランを後にしたのであった。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) & モモヨ
クリスターロ ( Cristallo )
住所 : 8, Viale S. Franscini, 6900 Lugano
電話 : +41 91 923 53 14
予約 : 要予約
時間 : 月~土曜日、12~14時が昼食、19時~22時が夕食
メニュー : 昼はビジネスランチがあり、メインを2種類から選ぶ。メインの白身魚のクレープ包み29フラン( 約2900円 ) 、ステーキ29フラン( 約2900円 ) 、デザートにアイスクリーム12フラン( 約1200円 ) 、チーズはワゴンから選べて12フラン( 約1200円 )
予算 : 2人で120フラン ( 約1 万2000円 )
行き方 : ルガーノ( Lugano ) 駅からホテル「フェデラーレ( Federale ) 」を右手に見ながら下り、ダンテ広場まで行く。そこから左手の大通りVia Pretorioを真っ直ぐ行くと到着。駅から徒歩15分
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