
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ

スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジ(Aquis Exchange)を買収すると発表した。SIXは今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
SIXの発表外部リンクによると、アクイス外部リンクは2012年に月額制の手数料を採用した取引所として創業し、本社をロンドンに、EU支社をパリに置く。欧州16市場でMTFを運営するほか、独自の市場インフラ技術のライセンス供与、英中小・成長企業向けのプライマリー(発行)市場の運営、市場データの提供など複数の事業を手がける。
アクイスのアラスデア・ヘインズ最高経営責任者(CEO)は声明で、買収により運営・商業・市場リスクが軽減され、アクイスの株主は大きな上乗せ価値を保証されると述べた。
中小株取引も強化
SIXは声明で、アクイス買収により従来型取引所とMTF事業を併せ持ち、欧州全体をカバーする取引所グループに成長すると述べた。MTFは「Multilateral Trading Facility」の略で、従来の取引所(SIX、スペイン証券取引所=BME、ユーロネクストなど)に上場されている株式やその他の金融商品を売買する取引システム。一般的に、主要取引所ほど厳しく規制されていない。
伝統的な証券取引所は長い間、取引量の低迷に悩まされている。MTFなどの代替取引所が優れた投資手段の1つとして確立しつつあることもその一因だ。今回の買収により、SIX自身がMTF運営者になる。
MTFは欧州連合(EU)が2007年に施行した第1次金融商品市場指令(MiFID1)を機に発祥した。証券取引所が企業の売買注文を独占できなくなり、MTFとの競争が始まった。
SIXは買収により、中小・新興企業向け取引も強化する。同社は2021年に中小企業株を対象としたSparks外部リンク市場を開設し、取り込みを図ってきた。だがこれまで上場した企業は1社だけだ。
買収総額2.7億ポンド
アクイスはSIXによる買収後も同じ名称で運営を続ける。SIXグループはアクイスの発行済み・発行予定の全株式資本を取得する。アクイスの株主は1株あたり7.27ポンド(約1400円)を受け取る権利がある。株式資本の購入価格は約2億700万ポンド。
SIXは2020年夏にBMEを約26億ユーロで買収した。アクイス買収は取引所業界においてそれ以来の大型買収となる。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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