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『にじいろのさかな』の生み親、マーカス・フィスター氏を訪ねて

『にじいろのさかな』シリーズは日本でも大人気だが、『ペンギンピート』など絵本によって画風が様々だ

世界で40カ国語、1300万部を超えるベストセラーとなった絵本『にじいろのさかな』。子供たちに大人気のこのシリーズの作家マーカス・フィスター氏(45歳)をベルンのアトリエに訪ねた。

フィスター氏の『にじいろのさかな』シリーズは日本でも詩人の谷川俊太郎さんの名訳で親しまれている。今年、日本では刊行10周年を祝って7月に第5巻『にじいろのさかなまいごになる』が世界に先駆けて出版された。そのうえ、2005年100万部突破を記念して絵本原画展が今年の9月から10月に大阪、東京で行なわれ、フィスター氏も訪日した。

 『にじいろのさかな』シリーズの特徴はなんといっても、美しい透明感のある、虹色と銀色にキラキラ光る鱗(うろこ)だ。この光る鱗はホログラフィーと呼ばれる箔押し技術だが、出版当時は新しく、お金が掛かるため「出版社にとっては賭けだった」とフィスター氏。

 しかし、このノルト・ズート出版(NordSüd)の賭けは見事に「大当たり」となった。現在では欧州、米国、日本、韓国などで人気を博し、世界中でベストセラーになっているからだ。

17冊目で大爆発

 『にじいろのさかな』の第一巻では美しい海底に住む虹色の魚は自分だけが特別なキラキラ光る鱗を持っている。みんなに羨ましがられて、孤独に苦しんだ後、仲間に光る鱗を分けることで幸せを得るというお話。

 フィスター氏は「普通の色だったら他の魚も色があるので特別なものを探していた。このキラキラするホログラフィーを思いついたのはお話からです」と語る。「何か大切なもの(大人にとってはお金など)を分かち合わなけばならない」ということでアイデアが湧いたという。彼の17冊目の絵本だった。

 フィスター氏は今では40冊以上も絵本を出版しているが、そのうち、ホログラフィーの技術を使ったものは10冊ぐらい。「いつも同じことばかりではつまらないから」。作品のアイデアはお話から先に浮かんだり、使ってみたい技術から話が浮かんできたり様々だという。

リズムの良い日本語訳

 ベルン生まれ、ベルン育ちのフィスター氏はベルンの美術学校を卒業後、チューリヒの広告会社でグラフィック・デザイナーとして生計を立てる。カナダ、メキシコ、アメリカなど6カ月の放浪の旅をした後、長年の夢だった絵本作家に挑戦することを決意する。「広告会社の仕事ではいつも絵を描くという訳にはいかなかったから」と半分フリーになる。

 描いた絵本を5社の出版社に送ったところ、現在の出版社であるノルト・ズート社が彼の才能を見出す。デビューしたのは1984年で、1992年になって『にじいろのさかな』シリーズを発行する。完全にフリーになったのは虹色の魚のヒット以来だ。

 フィスター氏に『にじいろのさかな』の人気の理由を聞くと「動物だと国籍、文化など関係なく親しみが湧くからでしょうか」。日本での人気の理由を講談社の幼児出版部の小出和彦氏は「もちろん、谷川俊太郎さんの固定ファンの力も大きいです。文化圏の違う作品を噛砕いて書いてもらえたのは詩人ならではの力量」という。確かに、谷川氏の翻訳は声に出して読むと大変リズムが良い。「お話に儒教的な教訓を感じるところも共感するのではないでしょうか」ともみる。

いつも次のアイデアを抱えて

 次は動物園の動物についての絵本を準備中だとか。欧州では『にじいろのさかな』の5巻は来年まで待たなくてはならないが、新作のクリスマスの本『ルカの星』が発売中だ。『ペンギンピート』シリーズや『うさぎのホッパー』など動物が主人公の話が多いが、作品によって随分と画風が異なる。 

 フィスター氏は『にじいろのさかな』の爆発的人気をどう受け止めているのだろうか。「虹色の魚は僕に世界を開いてくれた。けれど、虹色の魚ばかりやるのは嫌だ。いつも、沢山の新しいアイデアを抱えながら作品を描いています」という。

 フィスター氏は45歳とは思えないほど若々しく、気さくで真面目な感じの人だった。ベストラー作家の家はどんな豪邸かと期待したが、鱗を分けているからだろうか、眺めの良い、大きめとはいえ普通の家の中にアトリエがあった。イタリア人の奥さんとの間には4人の子供がいる。


swissinfo、 ベルンにて、屋山明乃(ややまあけの)

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