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17 歳、更生の船旅へ舵を握る

ジャン君にとって、海の環境を守るためのこの航海は新しい人生の方向を探るためでもある Pacifique / Antinea

「船の方向を調整するのが君の仕事。がんばって」と声がかかる。これから4時間、ジャン君 (仮名、17歳 ) は眠い目をこすりながら1人でこの仕事をこなす。

このコンテンツは 2011/03/16 13:43
里信邦子 ( さとのぶ くにこ), swissinfo.ch

これは、3月16日現在、エジプトのハルガダからヨルダンのアカバに向かうジュネーブのNGOの船「フラー・ドゥ・パッシオン( 情熱の花・fleur de passion ) 」での一場面。ジャン君はつい数週間前までジュネーブで登校拒否をしていた。今は責任のある仕事を与えられ、朝4時起床の毎日だ。

日常から完全に遮断

「もちろん船長がいて指示を与えるが、1日4時間は彼の責任で船の方向を調整する。ほかの船と衝突しないか絶えず周囲に気を配る大変な仕事だ。それが終われば食事も交替で作らなければならない。初めて出会う大人たち8人と24時間一緒の生活。けっして楽な船旅ではない」

と、ジャン君の生活をジュネーブのソーシャルワーカー、パスカル・バローネ氏は話す。

 

バローネ氏は、麻薬常習者、引きこもり、または性的虐待の犠牲者など、「ありとあらゆる」種類の問題を抱える青少年のためのジュネーブ州の機関「未成年の保護サービス( SPMI ) 」で働く。

昨年の10月、フラー・ドゥ・パッシオン号に試験的に乗せた5人の青少年の1人が将来船員になると目を輝かして語ってくれて以来、この3、4週間の船旅が、更生の方法として有効だと確信が持てるようになった。

「とにかく一番良いことは、両親、友人などに取り囲まれた今までの環境から完全に遮断されることだ。次が、責任ある仕事を与えられ、それをこなすことで自分に自信を取り戻すことで多くのことが変わる」

という。

今年はジャン君とアリーヌさん (仮名、15 歳 ) が乗り込んだ。実はもう1人女子が乗船したが、4日後にトラウマが蘇 ( よみがえ ) りこれ以上続けられないと下船。

「しかし、彼女は学校に戻ると決心した。わずか4日間の体験なので何が幸いしたのか正直なところよく分からないが、とにかくこの経験のお陰だと本人は話している」

修復期間も更生に

フラー・ドゥ・パッシオン号は33メートルの小型帆船。もとはドイツが第2次大戦用に製造したモーター船だった。それを1976年にあるフランス人が買い取り、帆船に変え青少年の教育を目的に使用していた。

これを2002年に買い取ったジュネーブのNGO「パシフィック ( Pacifique )」 は、その後7年間かけ修復。もとの使用目的を生かし、修復期間も12~14歳の問題のある青少年をマルセイユまで連れて行き、手を使ったグループ作業での更生を試みた。

修復終了後の昨年10月に船に乗せた青少年の更生プログラムが成功し、今年第2回目の船旅も順調に進行しているため、今回初めて記者会見を開いた。

海域の汚染調査

パシフィックはしかし、青少年の更生だけを目的にしたNGOではない。三つの目的、海の環境などの科学的調査、海の環境保護プロモーション、そして青少年の更生のために帆船を使う。

今回ジャン君とアリーヌさんの旅が単なる「試練の旅」だけで終わらないのは、実は同乗する8人の大人がみんな科学者で、船は紅海での海洋調査に携わるためエジプトのハルガダ ( Harugada ) からヨルダンのアカバ ( Aqaba ) に向かっている点だ。

科学者たちは、人間の手によって汚染され、緊急の保護を必要とする海域を表示する地図の作成を目的にするNGO「アンティネア ( antinea ) 」によって召集された。

紅海では2カ所で汚染調査が行われるが、こうした調査地域と地域の間の移動期間に、問題のある青少年たちを乗船させ、船の操縦だけでなく海の大切さや科学的側面も講義していく。

「責任感や自信を取り戻す更生の旅という目的に加え、同乗した若者が汚染された海に関心を払い、一般の人にその緊急対策の必要性を伝えるメッセンジャーの役も果たしてくれれば」

とアンティネアの所長、デイヴィッド・フレンチ氏は願う。

いわばパシフィックの目的である科学的調査と青少年の更生を兼ね備えた、このプロジェクトは、予算が続く限り行われる予定だ。

「単にバカンスで移動する船に乗るのではなく、きちんとした目的、特に海の汚染を表示するという目的の船に乗り、それに一役買っているという経験は、青少年の人生にさらに大きなインパクトを与えてくれると思う」

とバローネ氏はソーシャルワーカーの観点から付け加える。

この海洋調査はアメリカ東海岸での調査のため2012年秋には大西洋を渡る。そのとき、ジュネーブの若者たちも人生の新しい港に向けて舵を切るのだろうか。

パシフィック ( Pacifique )

「フラー・ドゥ・パッシオン 号 ( 情熱の花・fleur de passion ) 」を買い取った2002年に結成されたNGO。

この帆船を三つの目的、海の環境などの科学的調査、海の環境保護プロモーション、そして青少年の更生のために使う。

帆船はマルセイユで修復された。また出航はいつもマルセイユから。

更生のために、青少年を乗せた科学調査以外に夏の間は、ジュネーブ子どもたちのサマーキャンプにも利用される。

職員は7人。

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アンティネア ( antinea )

アンティネア ( antinea )

汚染された海域の中で、特に緊急の保護を必要とする海域を表示する地図作成を主な目的にするNGO。

このプロジェクトを「チェンジング・オーシャンズ ( Changing Oceans ) 」という。

今後10年間かけて行われる同プロジェクトクトには、情熱の花号が利用され、現在のところ調査地域間の移動に問題ある青少年を乗せて走る計画。

2011年は紅海、レバノンとギリシャ沖、カナリア諸島を、2012年にはギニア湾を調査。2013年には大西洋を渡りカリブ海の調査を予定している。

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未成年の保護サービス( SPMI )

ジュネーブ州の青少年関係局の中の課。

未成年を養育するという保護者の義務をサポートする。

問題を抱える未成年にも援助する。

こうした支援に加え、離婚や別居などに伴い法的サービスが必要な場合は、法的手続きのサポートも行う。

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