スイスの視点を10言語で

スイス企業2社、米国での上場で大成功

Man running up steps
スイスのスポーツシューズメーカー、On(オン)グループの株は米ニューヨーク証券取引所での上場初日、予想を上回る価格で取引された On

近年で最も成功を収めたスイス企業2社がここ1週間のうちに米国株式市場に相次ぎ上場し、数億ドルの資金を調達した。

スイス出身のテニス界のスター、ロジャー・フェデラー選手も出資するスポーツシューズメーカーのOn(オン)グループ外部リンクは15日、ニューヨーク証券取引所に上場した。上場時の時価総額は70億ドル(約7655億円)以上。取引初日に株価が高騰したため、終値では100億ドルを突破した。

前日には、スイスに本社を置く世界最大のスポーツ実況データ配信企業「スポートレーダー外部リンク」が米ナスダック市場に上場し、時価総額80億ドルの評価を得て、同社の歴史の新しい章を開いた。

両社には米国での新規株式公開(IPO)を決めるだけの十分な理由があった。米国では最近、スポーツベッティング(賭博)を合法化する道をつけるため、関連法を緩和する州が増えている。スポートレーダーはその波に乗った形だ。

スポートレーダーは、スポーツのゲームスコアなどのデータをメディアやスポーツベッティング企業に配信する同社の技術を生かして、急成長する米スポーツベッティング市場の約3分の1のシェア獲得を目指すという。

外部リンクへ移動

中小企業向けコンサルティング会社タイガー・リンク・アドバイザーズ外部リンクの創業者レティ・マクマナス氏はswissinfo.chに対し、「どの企業も、最終的には愛国心ではなく経営戦略の中で上場先を決める」と語った。

このことは、スイス生まれであることやフェデラー選手との提携を前面に押し出すオングループにも当てはまる。チューリヒに本社を置く同社がニューヨーク証券取引所への上場を選択したのは、米国が昨年、同社にとって最大の市場になり、売上高の伸びも最も大きかったからだ。

マクマナス氏は「米国は世界最大のスポーツウェア市場だ。米国で上場することで、広告やメディアへの露出機会が大幅に増え、消費者や投資家の間で認知されるようになる」上に、「ニューヨーク証券取引所には、ナイキやアディダスをはじめとする有名スポーツウェアブランドが上場している。だから、オングループが大手企業と同じプラットフォームに上場したいと考えたのは当然だ」と説明した。

外部リンクへ移動

オングループの売上高はここ3年で3倍近く増え、20年には4億2530万フラン(約496億円)に達した。しかし、この金額は、1185億ドル規模の世界のスポーツシューズ市場を支配するナイキやアディダスといったマーケットリーダーと比べると見劣りする。

スポーツウェア業界は全体として新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響を受け、世界中で販売店を閉めた。しかし、英調査会社ユーロモニターは、スポーツシューズ市場は徐々に回復し、2024年には約1800億ドルの規模に達すると予測する。

オングループはナイキが歩んだ道をたどっているように見える。ナイキは1984年、「バスケットボールの神様」と呼ばれるマイケル・ジョーダン選手(現在は偶然にもスポートレーダーに出資している)とコラボレーションしたバスケットシューズを生み出し、大躍進した。フェデラー選手は2019年にオングループの出資者になり、自身の名を冠したテニスシューズのデザインに参加している。

ところで、スイス証券取引所では2010~20年の間に年平均5社弱が上場している。同所を運営するSIXグループは、「スパークス外部リンク」と呼ばれる新しい株式市場区分を導入し、新規上場数の改善を目指す。スイスに約60万社ある中小企業外部リンク(従業員250人未満)の一部に上場を促す狙いだ。

(英語からの翻訳・江藤真理)

おすすめの記事
runner in the Alps

おすすめの記事

スタートアップから多国籍企業へ スイスのシューズメーカー「On」

このコンテンツが公開されたのは、 Onのチューリヒ本社の入り口には、従来の会社にみられるようなフロントデスクや年間報告書の冊子はない。開放的なオフィスルームの奥には、数十のスチール製ロッカーに濡れたタオルがかけられているのが見える。急成長中のグローバル企…

もっと読む スタートアップから多国籍企業へ スイスのシューズメーカー「On」


swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部