スイス政府が、新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達、接種をめぐる国の政策にいずれも「ためらい」があったとして批判されている。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省保健庁の元副所長アンドレアス・ファーラー氏は3日付の日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥングに「スイスのやり方はあまりにも戦術的だ。候補に挙がる製造者に注文したワクチンは、本当に必要な量のごく一部に過ぎない」と語った。
同氏は「スイスは一定のリスクを負って、全人口に十分な量を各ワクチンメーカーに注文するべきだった。人は日々死に続け、経済は打撃を受け、1分1分が貴重な時だ。保健庁がなぜ、これほどまでワクチン購入をためらったのか、理解に苦しむ」と述べた。
スイス政府は、今夏までに600万人(スイスの全人口は860万人)への接種を目指す。これは1日あたり最大7万回分を意味する。26の州のうち11州は、昨年末までにワクチン投与を開始した。チューリヒ州などその他の州は4日から接種キャンペーンを始めた。
スイスは、メーカー3社から1580万回分のワクチンを予約済み。第1便の10万7000回分はすでに国内に到着しており、1月にはさらに25万回分が届く見込み。
スイスではワクチン接種を受けた91歳の男性がその後死亡。医薬品承認機関Swissmedicは30日、死因は複数の既往症によるもので、ワクチン接種との関連はなかったと発表外部リンクした。
影響力の強い経済団体エコノミー・スイス(ÉconomieSuisse)のチーフエコノミスト、ルドルフ・ミンシュ氏も、ワクチン接種ペースの遅さと経済への潜在的な影響を懸念する。
同紙は独語圏の日曜紙NZZ・アム・ゾンタークに「スイスの医療システムは世界で2番目に高額だ。夏までに国民へのワクチン投与が完了できないとすると、その高額な医療システムは何のためにあるのか」と批判した。
「許されない」遅れ
同紙の社説は、全国的な予防接種キャンペーンについても痛烈に批判。「予防接種キャンペーンはずっと前に予見できていたはずなのに、複数の州ではいまだに準備段階だ。特に、必要となる予約システム―これは標準的なソフトウェアだ―は、全ての地域で準備が整っているわけではない。これは許されないことだ」と記した。
スイスのギー・パルムラン連邦大統領は日曜紙ゾンタークス・ブリックのインタビューで、「(国内の感染状況がやや落ち着いた)7月から9月の間に、私たちは状況を過小評価した」と述べ、感染防止対策に誤りがあったと認めた。
パルムラン氏は、連邦と州の調整や理解が常に最適であるとは限らないとし 「必ずしも簡単ではなかった。現在もそうだ」と語った。「実施した(コロナ関連)措置は、健康、経済、国民の態度といった事項が絡み合う。すべてが白黒付けられるわけではない」
保健行政を担当するアラン・ベルセ内務相も昨年末、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で「我々は怠惰過ぎた」と述べ、政府の対応に誤りがあったと認めている。
一方、チューリヒ大学の調査外部リンクによると、Swissmedicがファイザー社製ワクチンを承認した後、予防接種を受けたいと考えている国内居住者の割合が41%から49%に上昇した。しかし、回答者の3人に1人が、現時点では接種を受けたくないと答えた。約20%は未定と答えた。
50歳以上では約60%が接種を受けたいと回答したが、15〜49歳では40%にとどまった。男性では約56%、女性は43%だった。
おすすめの記事
重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部アールガウ州で、重度の障がいを持つ娘(3)を殺害したとして、地方裁判所は13日、両親を故意の殺人罪・殺人未遂罪でそれぞれ禁錮8年の実刑判決を言い渡した。
もっと読む 重度障がい3歳女児を殺害した両親に禁錮8年判決 スイス
おすすめの記事
キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの自由緑の党(GPL/PVL)チューリヒ支部に所属するサニヤ・アメティ氏(32)は9日、党の役職を辞すると発表した。自身のインスタグラムでキリストと聖母マリアを描いた絵画を的に射撃の練習をする写真を投稿し、大きな批判を浴びていた。
もっと読む キリスト絵画を的に射撃したスイス議員、辞職
おすすめの記事
スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス検察当局は、国民投票の提起に必要な署名が偽造されたとの疑惑を捜査している。収集代行業者が過去の署名を使い回したり、金銭を見返りに署名を集めた可能性がある。
もっと読む スイス検察、国民投票の不正疑惑を捜査
おすすめの記事
1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのニトヴァルデン準州クレヴェンアルプで31日、1000人以上のアルプホルン奏者が集まり、「アルプホルンを合奏する人数」の世界記録を更新した。
もっと読む 1000人超でアルプホルン演奏 スイスで世界記録を更新
おすすめの記事
社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦監査院(SFAO)が30日、2023年の政治資金報告書を発表した。
もっと読む 社会民主党、収入約16億円で全政党トップ 政治資金報告書
おすすめの記事
スイス政府、原発の新設解禁に前向き
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は28日、「すべての人にいつでも電気を:ブラックアウト(全域停電)を止めよ」と題するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。ただ、新たな原子力発電所建設の解禁には原則として支持する考えを示した。
もっと読む スイス政府、原発の新設解禁に前向き
おすすめの記事
マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイスを代表する名峰マッターホルンの麓町ツェルマットは、日帰り観光客の多さに悩んでいる。 現在、入場料の徴収を検討中だ。
もっと読む マッターホルンの麓町ツェルマット、日帰り客に入場料を検討
おすすめの記事
パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
このコンテンツが公開されたのは、
世界自然保護基金(WWF)スイスは27日、スイスの全ての州でパリ協定の目標達成に向けた十分な取り組みが行われていないとの分析結果を発表した。
もっと読む パリ協定遠く…スイス全州で気候変動対策不十分 WWF調査
おすすめの記事
スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ地方で10日にわたって行われたスーダン内戦の停戦協議が23日、停戦合意に達することなく終了した。
もっと読む スーダン停戦交渉、和平合意なく終了
おすすめの記事
スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
このコンテンツが公開されたのは、
12日にスイス・ベルン州を襲った嵐の影響で土砂崩れなどの被害を受けた人気観光地ブリエンツ村の一部では、依然として閉鎖が続いている。
もっと読む スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響
続きを読む
おすすめの記事
ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が数カ国で始まった。スイスの一部の州では今週始まる。だが世界の需要に見合う量を製造できるようになるまでには、何年もかかりそうだ。
もっと読む ワクチン接種、まだ長く待たされる理由とは
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
ここがポイント 2021年のスイス政治
このコンテンツが公開されたのは、
対EU関係、ブルカ着用禁止イニシアチブ、WTO改革……スイスの内政・外交が抱える2021年の課題を展望する。
もっと読む ここがポイント 2021年のスイス政治
おすすめの記事
さらば憧れの外国暮らし
このコンテンツが公開されたのは、
ロッティ・プフィルさんの夢は破れた。コロナ危機の影響で、5年にわたるドイツ暮らしを諦め、2021年2月に祖国スイスに戻ることにした。帰国に当たっての思いを日記につづった。
もっと読む さらば憧れの外国暮らし
おすすめの記事
コロナ自主隔離の英観光客、数百人が姿消す スイスで
このコンテンツが公開されたのは、
イタリア・フランスの国境に近いスイス西南部の山岳リゾート地ヴェルビエで、自主隔離の対象となった英国人観光客数百人が滞在施設から姿を消した。夜中に立ち去った例が多いという。
もっと読む コロナ自主隔離の英観光客、数百人が姿消す スイスで
おすすめの記事
スイス経済に「スキー場」が重要な理由
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、一部のスイス周辺国はスキー場を閉鎖した。それとは対照的に、スイスはスキー場の営業を原則認めている。アルプス地方の経済は、スキー場と冬場の観光に大きく依存している。
もっと読む スイス経済に「スキー場」が重要な理由
この記事にコメントする