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スイスのメディアが報じた日本のニュース

イルカ追い込み漁のようす
世界で物議を醸す日本のイルカの追い込み漁についてスイス紙は、「海から生計を立てるしかない」という地元漁師の切実な訴えに触れる一方、「イルカの高度に発達した認知能力を証明する科学的知見に鑑みれば、殺処分を正当化することはできない」という米専門家の声も伝えました Keystone

今週(9月1日〜7日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「中国経済は『日本化』する?」「日本のイルカ漁が解禁」「企業家がK-1対戦」「福島の処理水放出で抗議殺到」「親が子のために『代理婚活』」「H2Aロケット47号機、打ち上げ成功」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「中国経済は『日本化』する?」「日本のイルカ漁が解禁」「企業家がK-1対戦」をご紹介します。

中国経済は「日本化」する?

独語圏日刊紙NZZは、東京在住のベテランスイス人ジャーナリスト、ウルス・ショエットリ氏によるコラム「バブル崩壊か?中国は第二の日本ではない」を掲載。現在の中国経済の失速が1989年末のバブル崩壊後の日本と類似する点はあるものの、日本のような長期的な景気低迷が起こることは考えられないと論じました。

同氏は「マクロ経済的には、不動産市場の深刻な危機や個人消費の大幅な後退など、両国にはいくつかの類似点が存在する」と指摘。「ただ、中国は日本よりはるかに多い原材料・エネルギー源があり、そうした重要な経済的差異を見落としてはならない」と論じました。

また一党支配の共産主義国家でありながら、経済開放と近代化によって世界随一の経済大国へ成長した中国が、「そのハイブリッドな発展によって、西欧産業社会に存在する問題の影響を受けやすくなった」とも指摘。そこには日本の「失われた20年」と似ている部分があるものの、「リーマンショック後の2008~2010年にかけて行われた大型景気刺激策のように、恒久的不況が起こる前に中国政府が大規模な介入を行うことが予想される」とし、長期的な景気低迷にはつながっていかないだろうと論じました。

その上で、同氏は中国が現在の経済的困難を克服するためにどの程度の代償を支払うかに注目。「習近平政権下では、世界金融危機時の前回の大規模な救済措置よりも、国家統制色が強くかつイデオロギー的な修正が行われる可能性がある」と締めくくりました。(出典:NZZ外部リンク/独語)

日本のイルカ漁が解禁

世界で物議を醸すイルカの追い込み漁が和歌山県太地町で1日解禁されたことを受け、オンラインメディアのwatsonは5日、「なぜ日本では今でもイルカ漁が行われているのか」という見出しの記事を配信しました。

記事は、イルカの追い込み漁や殺処分の方法、これまでの歴史などを紹介。ほかにも、生きたバンドウイルカは1頭8千~1万ドル、訓練されたイルカは4万ドル以上で水族館や海洋公園に売られているといった米メディアの記事の内容を伝えました。

また、イルカ漁が国際的な批判を浴びたきっかけは長崎県・壱岐島の捕獲の様子を撮影した映像(1978年公開)だったこと、そして2009年の映画「ザ・コーヴ」公開で抗議活動の勢いが増したと説明。ただ、「太地の人々は400年以上も捕鯨を行ってきた。ここでは海から生計を立てるしかない」という地元漁師の切実な訴えにも触れています。

とはいえ「自己認識や社会的認識など、イルカの高度に発達した認知能力を証明する科学的知見に鑑みれば、殺処分を正当化することはできない」という米専門家の声で記事は締めくくられています。(出典:watson外部リンク/独語、ブリック外部リンク/独語)

「日本では成功した企業家が拳を交えるK-1が最新トレンド」

各界で活躍する企業経営者が拳を交える格闘技「EXECUTIVE FIGHT 武士道」第9回大会に、ルツェルンで塗装会社を運営するパトリック・ビュールマン氏(54)が参戦するとスイスの複数メディアが報じました。欧州からの参加者は同氏が初めてです。

独語圏無料紙20min.は「CEOがリングで対決」との見出しでこれを報道。タイキックボクシングセンター・ルツェルン(TKBC)のオーナー、トーマス・フラッキー氏は20min.の取材に対し「成功した企業家が拳を交えるK-1が、日本では最新のトレンドになっている」と回答。2022年末に日本側から打診された際、長い間一緒にトレーニングをしているビュールマン氏のことがすぐに頭に浮かんだと話しました。

ビュールマン氏は若い頃、スイス人K-1ファイター、故アンディ・フグ氏とも知り合いだったとか。8日の対戦を控え「欧州初の勝者になりたい」と意気込みを伝えました。

また同紙の読者アンケート「好きな格闘技は?」には、7日までにスイスの読者1767人が回答。最も多かったのは「格闘技は好きではない(22%)」でした。格闘技が好きと答えた回答者の中で最も人気が高かったのはムエタイ(15%)で、次にボクシングとK-1(14%)でした。(出典:ルツェルナーツァイトゥング外部リンク/独語、20min.外部リンク/独語)

注目のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「コールドケース~氷河に眠る遺物」(記事/日本語)です。ほかに「スイスの高賃金を守る『付随措置』とは?」(記事/日本語)や「『スイスの銀行はオリガルヒの制裁回避を手助けしている』プガチェフ氏インタビュー」(記事/日本語)も話題になりました。

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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は9月15日(金)に掲載する予定です。

編集:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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