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スイスのメディアが報じた日本のニュース

選挙カーに乗って拳を突き上げる岸田首相ら
Keystone

今週(6月23〜29日)スイスの主要メディアが伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。 

日本の政権を担うネポベイビーたち、福島第一原発の処理水放出設備が完了、元力士が開設した介護施設、芸術家にインスピレーションを与える映画「雨月物語」―といったトピックスが取り上げられました。  

この中から今回は「日本の政権を担うネポベイビーたち」「福島第一原発の処理水放出設備が完了」「元力士が開設した介護施設」をご紹介します。 

日本の政権を担うネポベイビーたち 

次の衆議院選挙に向け各党が候補者を発表する中、独語圏の日刊紙NZZは25日「正しい家系のおかげで権力を手中に」との見出しで、日本の政界で増える「ネポティズム(縁故主義)ベイビー」について報じました。 

日本では「自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員で、その多くが既存の人脈を通じて政府の閣僚・党幹部に早くから昇進」しており、1989年以降の総理大臣は7割が世襲議員です。NZZは、こうした世襲制度はこれまで容認されてきたものの、岸田文雄首相の長男翔太郎氏の「公用車で観光」疑惑や、選挙戦で自身のホームページに家系図を掲載した岸信千世氏(岸信夫前防衛相の長男)の一件などで、世襲に対する批判が高まっていると伝えました。 

NZZによれば、このシステムを壊そうとする試みは常にありました。ですが、世襲制は現在も当たり前のように行われています 。同紙は世襲議員が増える理由として、知名度がモノを言う小選挙区比例代表制、そして先代から自動的に引き継ぐ「三バンー 強固な選挙区(地盤)、知名度(看板)、政治資金(かばん)」など、日本独特の制度や慣習に言及。ネポベイビーの多い自民党が勢力を維持する限り、こうした世襲体質は長く続く可能性が高いとしました。(出典:NZZ外部リンク/独語) 

福島第一原発の処理水放出設備が完了 

スイスの複数メディアは27日、福島第一原発の処理水の海洋放出計画で、放出に必要な設備工事が26日に完了し、計画が大詰めを迎えていると報じました。 

ニュースサイトwatsonは、設備工事完了に先立つ22日、同計画について報道。豪カーティン大学のナイジェル・マークス教授(地理学)の「(海洋放出は)合理的で安全」など、処理水の放出は安全とする専門家の声を掲載したほか、韓国の日本大使館前で行われたデモの写真や、ハワイ大学のロバート・リッチモンド・ケワロ海洋研究所所長の否定的な意見など、反対の声も取り上げました。 

いずれも、ドイツ通信社(DPA)が配信した記事を転載する形で報じています。 (出典:NZZ外部リンクアールガウアー・ツァイトゥング外部リンクwatson外部リンク/独語) 

元力士が開設した介護施設 

NZZは26日、元相撲力士が開設した通所介護施設のルポ記事を配信しました。東京都墨田区にある「デイサービス花咲(はなさき)」は、元力士4人が運営する地域の高齢者向けの食堂兼機能訓練ルームです。2012年に開業し、事業は2つ目の施設を開くまでに成長しました。 

大相撲で関取に昇進できるのは一部の力士に限られているため、「花咲」のような会社は、引退後の就職が困難な引退力士にとってまさに第二の土俵。メリットは元力士たちの就職支援や人手不足の業界に貢献できることだけではありません。「引退後の力士は体重こそ落ちるが体力は落ちない」。つまり重労働が求められる職場にぴったりだといいます。(出典:NZZ外部リンク/独語) 

注目のスイスのニュース  

今週、最も注目されたスイスのニュースは、スイス国立銀行(中央銀行)による5回連続の利上げ(記事/日本語)です。また、スイスの観光スポットにある山岳交通で続く運賃の値上げ(記事/日本語)や、民間軍事会社ワグネルの反乱について中立国スイスのメディアはどう報じたのかを探った記事も話題になりました(記事/日本語) 。 

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次回の「スイスのメディアが報じた日本」は、7月7日(金)に掲載する予定です。 

編集:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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