スイス中銀コンツェルン、1兆7000億円の赤字に
スイス国立銀行 ( スイス中銀/SNB ) コンツェルンは3月3日、2010年を192億フラン ( 約1兆7012億円 ) の赤字で締めたと発表した。2009年にはおよそ100億フラン ( 約8861億円 ) の収益があった。
一方で、UBS銀行再建のために設立した安定化基金は昨年、26億フラン ( 約2304億円 ) の利益をもたらした。
全体収支に初めて貢献
これにより、スイス中銀および中立の立場の安定化基金からなるスイス中銀コンツェルンの収支に、UBSの分担金を除く16億フラン ( 約1413億円 ) が流れ込んだ。トーマス・ヨルダン副総裁によると、基金がコンツェルンの業績にプラスの影響を与えたのはこれが初めて。
この収益額は前年の損益額にほぼ等しい。自己資本率は現在20億フラン ( 約1767億円 ) 。前年末は4億8200万フラン ( 約426億円 ) の赤字だった。
この資本は将来損失が発生した場合の補填 ( ほてん ) に充てられる。うち10億フラン ( 約884億円 ) はスイス中銀に渡り、残りをUBSとスイス中銀で2分する。
基金向けのスイス中銀の貸付金は、昨年1年間で210億フラン ( 約1兆8562億円 ) 弱から120億フラン ( 約1兆607億円 ) に縮小した。偶発債務も39億フラン ( 約3446億円 ) から20億フラン ( 約1767億円 ) に減少。スイス中銀のリスクはまだ140億フラン ( 約1兆2370億円 ) あるとヨルダン副総裁は見積もる。
州への利益配分は先行き不透明
2010年、スイス中銀自体は1月中旬に発表したとおり、210億フラン ( 約1兆8575億円 ) という記録的な赤字を計上。スイスフラン高が長引く中、昨年は最終的に通貨準備の引当金として7億2420万フラン ( 約641億円 ) が割り当てられた。本来は40億フラン ( 約3538億円 ) の予定だった。
連邦および各州への利益配分は、25億フラン ( 約2211億円 ) と前年と同じ。このほか、やはり前年同様150万フラン ( 約1億3282万円 ) の配当金も出る。
2011年以降も利益配分が実施されるかどうかは、今のところ不明だ。ヨルダン副総裁によると、連邦とスイス中銀は現在これについて交渉中で、配分されることになっても金額は縮小される可能性がある。連邦や州に配分するための準備金は現在50億フラン ( 約4427億円 ) の赤字であり、今後の見通しも不明確だという。
「スイス中銀の業績は依然として強健。2010年の状況は異常だった。損失の大部分は年末最後の数週間、あるいは数日間に出たものだ」
とヨルダン副総裁。
総合的には、ユーロ、ドル、ポンドに対して極端に強くなったフランが、外国為替のポジションに265億フラン ( 約2兆3472億円 ) の損失を招いた。この窮状を多少助けたのが金価格だ。前年からスイス中銀の金庫に眠り続けている1040トンの金は、推計58億フラン ( 約5138億円 ) の利益をもたらした。
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