バーゼルの機械工場で工具をチェックする職業教育・訓練コースの学生。2021年4月15日
© Keystone / Christian Beutler
スイスの最新統計で、大学などの高等教育課程を修了した労働者の割合が、職業教育・訓練コースのみを選択した労働者の割合を初めて上回ったことが分かった。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは「ギムナジウムで大学進学資格(マチュラ/マチュリテ)を取得し、大学で勉強してから就職する」道を選択する若者が増えている。その方が楽、世間体が良いといった理由だ。しかし、義務教育を終えた子供たちの約3分の2は、依然として職業教育・訓練コースを選択している。同コースを選択した若者の中には、更なるスキルを身につけるために高等教育課程に進む人もいる。
連邦統計局が発表した最新データによると、昨年の25~63歳の労働人口のうち、高等教育課程の学位を取得した人が占める割合は45.3%で、職業教育・訓練コースを修了した人は44%だった。職業教育・訓練コースを最終学歴とする人の割合は20年前の60%から大幅に減少した。大衆紙ブリック日曜版が2日、報じた。
リベラル系シンクタンク、アヴニール・スイスのマルコ・サルヴィ氏は、技術の進歩と国際的な分業がこのような変化をもたらしたと話す。「より複雑な機械を扱うためにより高い資格が必要となる一方で、多くの単純作業は自動化したり、外注したりするようになった」
しかし、バーゼル大学の労働市場エコノミスト、ジョージ・シェルドン氏は、移民など、他の要因もあるという。
「1990年まで、スイスで雇われていた外国人労働者のほとんどは、専門的な訓練を受けていなかった。だがその後、状況は大きく変化した。今日、外国からスイスにやってくるのは、主に数学、科学、技術系の学位を持った高学歴者だ」。
経済学者のルドルフ・シュトラーム氏の見解は少し異なる。高学歴者の多くは事前に職業教育・訓練コースを修了していると説明し、「職業教育・訓練コースを選択する人はここ数十年間で減少してはいるが、一見して数字が示すほどではない」と語る。
スイスの職業教育・訓練コースで一般的なのはデュアルシステム(二元制度)外部リンクだ。同システムでは職場で基礎訓練となる実習を受けながら、理論を学ぶ職業訓練学校にも通う。この仕組みのおかげで、若い人たちは高レベルの職業教育を受けつつ、訓練の終わりに戦力としてすぐに労働市場に飛び込むことができる。若者の失業率は極めて低く外部リンク、スイス経済の潤滑油にもなっている。職業訓練は業種により2~4年続く。
また、職業教育・訓練コースに進んだ人は、続けて次の段階の職業教育に進むことができる。多様なキャリアパスがあり、職業訓練を受けている人は誰もが好きなように選べる。職業マチュラ/マチュリテ外部リンクに合格すれば、総合大学や専科大学で勉強する学生と同じ学業レベルの応用科学大学に進学し、学位を取得することもできる。
シュトラーム氏は、このスイスのデュアルシステムはこれから20年先も非常に重要なシステムになると確信している。「職業訓練や更なる高等専門教育に進んだ人は、スイスの労働市場で需要が高い。大卒者よりも需要が高い場合もある」
おすすめの記事
おすすめの記事
スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは若いうちに自分の職業人生について大きな決断をする。14歳は早すぎるか?それとも妥当か?意見は大きく分かれる。
もっと読む スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?
おすすめの記事
バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
このコンテンツが公開されたのは、
5月11~17日の欧州国別対抗の音楽祭「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」開催中、バーゼルでは「カラオケ・トラム(路面電車)」が運行する。ビンテージ車両で90分間かけて街を走る間、乗客は無料で歌い踊ることができる。
もっと読む バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
おすすめの記事
ジャッキー・チェンさんに名誉豹賞 ロカルノ映画祭
このコンテンツが公開されたのは、
第78回ロカルノ国際映画祭で、香港出身の俳優ジャッキー・チェンさん(71)に生涯功労賞である「名誉豹賞」が贈られることが決まった。
もっと読む ジャッキー・チェンさんに名誉豹賞 ロカルノ映画祭
おすすめの記事
グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
このコンテンツが公開されたのは、
動くクマのグミ、チョコレート味の電池――大阪・関西万博のスイス館では、ロボット工学者とパティシエ、ホテリエが合作した「ロボケーキ」が展示されている。
もっと読む グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
おすすめの記事
スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
このコンテンツが公開されたのは、
日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。
もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
おすすめの記事
フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、21日死去したローマ教皇フランシスコに哀悼の意を表した。
もっと読む フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
おすすめの記事
WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
このコンテンツが公開されたのは、
世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。
もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
おすすめの記事
スイス外相、日本と中国を訪問
このコンテンツが公開されたのは、
イグナツィオ・カシス外相は日本と中国を公式訪問する。
もっと読む スイス外相、日本と中国を訪問
おすすめの記事
TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
このコンテンツが公開されたのは、
米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。
もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
おすすめの記事
ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。
もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
おすすめの記事
ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
このコンテンツが公開されたのは、
2025年大阪・関西万博のスイス館が、13日の開幕日に開館した。没入感のある展示空間でスイスの多様・卓越性を紹介し、150万人以上の来館者を見込む。
もっと読む ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
続きを読む
おすすめの記事
スイスの二兎追い職業訓練制度
このコンテンツが公開されたのは、
スイスではかつて、子供は義務教育を終えた時点で職業訓練に進むか進学するかを選択しなければならなかった。今では事情は異なり、15歳で何を選択しようと、学業にも職業にも後から進路変更が可能だ。
もっと読む スイスの二兎追い職業訓練制度
おすすめの記事
職業訓練・普通高校(後期中等教育)
スイスの若者たちは義務教育の終盤に重要な選択を迫られる。将来の職業に適した職業訓練を受けるか、大学進学を目指す普通高校に進むかを選ばなければならない。
もっと読む 職業訓練・普通高校(後期中等教育)
おすすめの記事
スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは若いうちに自分の職業人生について大きな決断をする。14歳は早すぎるか?それとも妥当か?意見は大きく分かれる。
もっと読む スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?
おすすめの記事
職業訓練生受け入れ、スイス企業にメリット
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの企業は、職業訓練生を雇い、自社で育成すると年間1人当たり3千フラン(約33万円)超の利益を得られるかもしれないという調査結果が出た。
もっと読む 職業訓練生受け入れ、スイス企業にメリット
おすすめの記事
進学派それとも就職派? 就業率は大差なし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで高等教育を受ける人の割合は経済開発協力機構(OECD)平均を上回る。職業訓練も同じくらい人気だ。
もっと読む 進学派それとも就職派? 就業率は大差なし
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。