The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録
世界がスイスの職業訓練制度にもっと注目すべき理由

スイス、高学歴化 政府統計

バーゼルの機械工場で工具をチェックする職業教育・訓練コースの学生
バーゼルの機械工場で工具をチェックする職業教育・訓練コースの学生。2021年4月15日 © Keystone / Christian Beutler

スイスの最新統計で、大学などの高等教育課程を修了した労働者の割合が、職業教育・訓練コースのみを選択した労働者の割合を初めて上回ったことが分かった。

スイスでは「ギムナジウムで大学進学資格(マチュラ/マチュリテ)を取得し、大学で勉強してから就職する」道を選択する若者が増えている。その方が楽、世間体が良いといった理由だ。しかし、義務教育を終えた子供たちの約3分の2は、依然として職業教育・訓練コースを選択している。同コースを選択した若者の中には、更なるスキルを身につけるために高等教育課程に進む人もいる。

連邦統計局が発表した最新データによると、昨年の25~63歳の労働人口のうち、高等教育課程の学位を取得した人が占める割合は45.3%で、職業教育・訓練コースを修了した人は44%だった。職業教育・訓練コースを最終学歴とする人の割合は20年前の60%から大幅に減少した。大衆紙ブリック日曜版が2日、報じた。

リベラル系シンクタンク、アヴニール・スイスのマルコ・サルヴィ氏は、技術の進歩と国際的な分業がこのような変化をもたらしたと話す。「より複雑な機械を扱うためにより高い資格が必要となる一方で、多くの単純作業は自動化したり、外注したりするようになった」

しかし、バーゼル大学の労働市場エコノミスト、ジョージ・シェルドン氏は、移民など、他の要因もあるという。

「1990年まで、スイスで雇われていた外国人労働者のほとんどは、専門的な訓練を受けていなかった。だがその後、状況は大きく変化した。今日、外国からスイスにやってくるのは、主に数学、科学、技術系の学位を持った高学歴者だ」。

経済学者のルドルフ・シュトラーム氏の見解は少し異なる。高学歴者の多くは事前に職業教育・訓練コースを修了していると説明し、「職業教育・訓練コースを選択する人はここ数十年間で減少してはいるが、一見して数字が示すほどではない」と語る。

スイスの職業教育・訓練コースで一般的なのはデュアルシステム(二元制度)外部リンクだ。同システムでは職場で基礎訓練となる実習を受けながら、理論を学ぶ職業訓練学校にも通う。この仕組みのおかげで、若い人たちは高レベルの職業教育を受けつつ、訓練の終わりに戦力としてすぐに労働市場に飛び込むことができる。若者の失業率は極めて低く外部リンク、スイス経済の潤滑油にもなっている。職業訓練は業種により2~4年続く。

また、職業教育・訓練コースに進んだ人は、続けて次の段階の職業教育に進むことができる。多様なキャリアパスがあり、職業訓練を受けている人は誰もが好きなように選べる。職業マチュラ/マチュリテ外部リンクに合格すれば、総合大学や専科大学で勉強する学生と同じ学業レベルの応用科学大学に進学し、学位を取得することもできる。

シュトラーム氏は、このスイスのデュアルシステムはこれから20年先も非常に重要なシステムになると確信している。「職業訓練や更なる高等専門教育に進んだ人は、スイスの労働市場で需要が高い。大卒者よりも需要が高い場合もある」

おすすめの記事
A bicycle mechanic apprentice goes about his work 

おすすめの記事

スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは若いうちに自分の職業人生について大きな決断をする。14歳は早すぎるか?それとも妥当か?意見は大きく分かれる。

もっと読む スイス人は14歳で職業を選択 早すぎる?

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
UBS

おすすめの記事

スイス政府、金融規制改革の最終案を発表

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。

もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
ガザ

おすすめの記事

スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難

このコンテンツが公開されたのは、 パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。

もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
軍隊

おすすめの記事

スイスで放射能測定の合同演習 

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。

もっと読む スイスで放射能測定の合同演習 
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡

このコンテンツが公開されたのは、 自殺カプセル「サルコ」を運営する自殺ほう助団体「ラストリゾート」共同設立者のフロリアン・ウィレ氏(47)が、先月5日にドイツで死去していたことが分かった。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
土砂崩れ

おすすめの記事

スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部レッチェンタール(ヴァレー州)で28日午後、大きな氷河が崩壊し、大規模な土砂崩れがふもとのブラッテン村を襲った。多数の家屋が倒壊し、1人が行方不明。

もっと読む スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部