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ユニークな詩の朗読会 ユルク・ハルターさん 谷川俊太郎さんと詩を編んでスイスと日本をつなぐ

11:00
海の香を口中に一つと
少年は小石を舌の上にのせる
ああこれがイワシに変わってくれたらなあ
なんてことを思いながら
空きっ腹で道端に座っている
​「48時間の詩」著・谷川俊太郎&ユルク・ハルターより

11:00
海の香を口中に一つと
少年は小石を舌の上にのせる
ああこれがイワシに変わってくれたらなあ
なんてことを思いながら
空きっ腹で道端に座っている
​「48時間の詩」著・谷川俊太郎&ユルク・ハルターより

(イラスト・Tabaimo / Courtesy of Gallery Koyanagi)

スイスの首都ベルン出身の詩人ユルク・ハルターさん(36)は、谷川俊太郎さんと一緒に創作したユニークな連詩「48時間の詩」の朗読会をスイス各地で行っている。それは、日本の伝統文芸である連詩が、歌で披露されたというヨーロッパ中世の武勲詩のようにハルターさんによって音楽と一緒に朗読される。しかも、ラッパーでもあるハルターさんは、ラップ調に愉快に仕上げていく。

 「48時間の詩」と題する本は、朝6時の詩に始まり翌々朝の5時まで続き、ハルターさんと谷川さんの詩が編みこまれるように連なっている。しかし、実際に朝6時に書かれたわけではなく、1時間ごとに時間が区切られているという一連の時間の流れの詩型に沿っている。ハルターさんが母国語の独語で谷川さんが日本語で交互に詩を綴り、それぞれの詩が2カ国語に訳されているというユニークな本だ。ハルターさん曰く「スイスと日本の文化が融合している」。

06:00

昨日が今日を産み落としたので目が覚めてしまった

太陽がどこにいるのか分からない朝

今が真夜中の国のキャンプで娘がすすり泣いている

と、本は谷川さんの詩で始まり、その下に独語の訳がついている。

07:00

太平洋を飛ぶ飛行機の中

腕時計がチクタク 男に問いかける

「君は朝の顔? それとも夜の顔?」

と、ハルターさんが朝7時の詩を続け、その下に日本語の訳がついている。

独創的な谷川さんとの出会い

 このような連詩をハルターさんと谷川さんが一緒に創作することになったのは、「2002年に南アフリカで行われた詩のフェスティバルで詩を読み上げた時に、(公式な場所で)自分のTシャツに書かれた自作の詩をゆっくりと読み上げる気さくな谷川さんと出会ったのがきっかけ」とハルターさんは語る。一方、当時22歳だったハルターさんは、舞台上を行ったり来たりして「叫ぶ詩人」として登場して谷川さんの目を奪ったという。

 ハルターさんによると、谷川さんは「気ままで、探検に魅了された子供みたいで、ストレートな思考をする詩人」。そして、「自分は詩を書くのに、時間をかけてゆっくりとマイペースで潜考するのに対し、谷川さんは、思いを率直に書き記すので対極的だった」。しかし、「お互いが『思うがままの スタイル』で詩を生み出すという点で、しきたりにとらわれず、現代風で似たもの同士。気が合った」と話す。

ユルク・ハルターさん。3月22日、ベルンにて

(swissinfo.ch)

 そして、谷川さんのアイデアにより、ハルターさんは2014年9月に東京で、中世連歌のように会席で食事やお酒を共にしながら、同じ空間で5日間にわたり思索して詩の創作に臨んだ。そして、ハルターさんは、「伝統的な詩の形式を理解した上で形を崩し、着想したことを別の視点で新たに表現する」ということを原型として詩のユニークさを生み出していったという。その後、2人はこの共同創作の詩集を発行した。

日本語の面白みも取り入れた独語の詩

 例えば、ハルターさんの詩では、日本語の同音異議語「無し」と「梨」の言葉を掛け、日本語の面白みも取り入れて独語で表現している。「〈無し〉にカマンベールを一切れ添えたら もう敵うもの梨ですよ」と。

 また、「挙句」として「今日のような一日ならきっと 最初の一歩を踏み出せるはずーーでしょ?」と詩集の最後を軽く締め括る。

 日本の夏を象徴するような「ラムネ」や「虫の音」も出てくるが、スイスを想起させる「アルプス」や「マッターホルン」といった単語も取り入れられている。

 ハルターさんによると、「谷川さんの詩も自分の詩も、他の人が見ないところを違った視点で見せている」。「文学にスイスと日本の国境は無く、融合されている」

異なる言語や文化をつなげる朗読会

 ラッパーでもあるハルターさんは、韻を踏んで、リズミカルに言葉を紡いで、連詩を朗読する。しかも、ドラマーの即興も詩の朗読の間に交え、まるでヨーロッパ中世の武勲詩のように朗読会を展開する。それは、ハルターさんにとって「異なる言語や文化をつなげる『多様化の祝い』と捉えているからだ」という。

 そして、「連詩の響き合いを感じ、たとえスイス人が日本語の詩が語っている意味を分からなくても、音として詩の朗読を愉しむ。そのようなことをきっかけに異国の言語や文化に耳を傾けて関心を持つということでも、2カ国はつながる。」と説明する。

 だからこそ、本に書かれている谷川さんの問いかけ、「異なる文化を追う耳は 別々の沈黙を聴くのだろうか」という疑問が一番好きな詩の一節だとハルターさんは言う。

 スイスと日本の詩の文化を融合し、丹念に言葉の響きを紡いだハルターさんの詠は、スイスで朗読会をとおして新たな芽を吹いている。

 「48時間の詩」(2016年、Wallstein出版)

著者・谷川俊太郎、ユルク・ハルター

連詩は、東京で2014年9月に5日間で創作されたが、詩集として2016年に出版された。

谷川さんとハルターさんは、2012年に「話す水」と題する本も共作している。

次回の朗読会は、ベルンのパウルクレーセンターで4月23日に開催される。朗読は独語と日本語で、谷川さんの詩は同センターの柿沼万里江さんが代読する。

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