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公共のためそして企業のために

ルツェルンにある自動車教習所の社員食堂。1976年撮影 gosteli-foundation.ch

1914年創立の「スイス軍人福祉協会 ( Schweizer Verband Soldatenwohl )」はスイス最大のケータリング「SVグループ」に成長した。その頂点に立つスージー・ブリューシュヴァイラー氏は、スイスでは稀な女性トップマネージャーの1人だ。

このコンテンツは 2010/01/27 15:25

8000人以上の従業員を抱え、スイス、ドイツ、オーストリアに数百の支社を持つ株式会社「SVグループ」は、第二次世界大戦中に「軍人食堂」としてスイス全土に知られるようになった。

軍人食堂から株式会社へ

食堂ではいわゆる「軍人の母」が若い軍人の健康のために気を配っていたのだ。こうした食堂は実際1990年代まで残っていた。

先日出版された本『一生涯 ( Ein Leben lang )』には、SVグループがたどった約100年間の歴史と変遷が写真とポートレートで綴られている。

1995年以降は、かつて看護婦で病人看護課の幹部だったスージー・ブリューシュヴァイラー氏がケータリング業界ナンバー1に成長した同企業の指揮を執っている。彼女は経営の厳しい時期を上手く切り抜け、組織形態を株式会社に変更した人物でもあり、1999年以降は、SVグループの最高経営責任者 ( CEO ) を務めている。

「わたしにとって従業員が最も大切です」
と語るブリューシュヴァイラー氏は創設者エルゼ・ツープリン・シュピラーの哲学を信念とし、社会責務と企業経営のバランスを保つよう心がけている。

出会いの場所

ブリューシュヴァイラー氏は事業の重要な点として、従業員援助や社会奉仕を挙げ、1940年から従業員には生涯教育の機会を与えている。
「社会奉仕というのは、企業を経営する上で持続的に利益を上げることでもあります。利益なしでは従業員を雇用することができませんから」
とトップマネージャーとしての責務を強調する。

第一次世界大戦中にツープリン・シュピラーが軍人食堂を創設したのは、服役中の軍人たちに出会いの場を提供するためだった。
「こうした出会いの場は今日も残っています。これは100年前もそうだったように現在もSVグループの目指す未来像なのです。社員食堂では、心身ともに健康になるような食事をしながら社員たちが集まったり、上司とざっくばらんに話をしたりすることができます」
とブリューシュヴァイラー氏は語る。

彼女は、健康的な食事とは「美味しくて、人を喜ばせるもの」と考える。その食事がときにはカツレツとフライドポテトのときもある。
「重要なのは、美味しかったと感じて心が満たされる」ことなのだ。

社会奉仕

ブリューシュヴァイラー氏は創始者ツープリン・シュピラーには先見の明があったと称賛する。
「創始者は軍人食堂を経営する意義は、軍人たちの健康のためというよりむしろ、社会福祉のためだと考えていたのです。なぜならアルコール中毒の軍人は家族や社会にマイナスの影響を与えることに気づいていたからです」
と説明する。

彼女は創始者が築き上げた土台を壊さず、しかも現代のグローバル化した世界で生き延びて行く経営方法を常に考えている。それでも彼女は創始者と比較されたくはないという。彼女にとってそれは僭越 ( せんえつ ) なことなのだ。

ブリューシュヴァイラー氏の経営のもと、SVグループは1992年よりドイツへ事業を拡大し、オーストリアへの参入も果たしている。
「事業戦略を熟慮した結果です。スイスでは1918年来、このケータリングビジネスは飽和状態で新しい市場が必要だったからです」

誠意あるマネージャー

ブリューシュヴァイラー氏にはCEOを務める間、それが全ての社員に理解されないことであったとしても、自ら下した決定を貫徹しなければならないときもあった。
「企業の存続とさらなる発展のために必要なことだと確信しているならば、意見を押し通すことも時には必要なのです」
と経営者としての責務を語る。

1996年から1998年にかけてSVグループの組織を再編成した際に、彼女は大きな決断を下した。
「わたしたちは以前、子会社300社から成り立つ企業を経営するために納入業者1400社を抱えていたので、これらを一カ所にまとめる必要がありました」
と当時をふり返る。

しかし、彼女は概して冷酷なマネージャーではない。
「わたしは常に聞く耳を持っています。従業員たちも、現状に満足している、していないに関わらず、いつでもわたしの所に来て話ができると認識しています。ネガティブな意見を言ったとしても、後のキャリアに影響が出るわけではありません」

次第に現職から退いて

ブリューシュヴァイラー氏は4月末に62歳を迎えるため、15年間勤務したSVグループを退職し、CEOの座を退く。ドイツでは多少経済危機の影響があるものの、スイス、オーストリアではほとんど影響がなく健全な経営状態を保っている企業を後にする。

しかし、企業経営が健全であることは以前と変わらない彼女の一番の関心事。そのため7月にはSV財団の議長を引き受ける予定だ。こうして彼女は「一生涯」ではないものの企業の未来像を育み続け、SVグループの歴史に名をとどめることになりそうだ。

ガビィ・オヒセンバイン 、デューベンドルフにて、swissinfo.ch
(ドイツ語からの翻訳、白崎泰子 )

SVグループの歴史

SVグループの歴史を綴った本『一生涯』( コントラスト出版 )
1914年:エルゼ・ツープリン・シュピラーが非営利組織「スイス軍人福祉協会 ( Schweizer Verband Soldatenwohl )」を創設。
1918年:最初の社員食堂設立
1920年:「スイス国民奉仕協会 ( Schweizer Verband Volksdienst )」に名称を変更
1939年:戦時中に多くの「軍人食堂」が運営される
1973年:「SVサービス」に名称を変更
1992年:ドイツに事業を拡大、介護用ケータリングサービス事業に参入
1996年:スイスで病院や老人ホームの介護用ケータリングやイベント用のケータリング事業に参入
1998年:オーストリアに事業を拡大
1999年:組織を「株式会社SVグループ ( SV Group AG )」に変更
2003年以降SVグループはビジネス、イベント、介護、ホテル、レストラン業務など5分野における関連会社の持株会社となる。

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SVグループデータ

従業員:8129人 ( うち65%は女性 )
売上高:6億2500万フラン ( 約562億5000万円 )
純利益:700万フラン ( 約6億3000万円 )
関連会社数:520社 ( スイス国内320社 )
売上数:9770万品目 ( うち食事が4200万食 )
( 2008年末現在 )

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