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銀行の「多様性」、本当に進んでいる?

クレディ・スイスのティージャン・ティアム前CEO(左)は居心地がよかったのだろうか?ウルス・ローナー会長(当時、右)との権力闘争に敗れ、ティアム氏は2月に銀行を去った © Keystone / Walter Bieri

ダイバーシティー(多様性)が企業経営の重要テーマになって久しい。だがその中核は男女平等にあり、肌の色に焦点を当てる企業はまだ少数派だ。スイスの銀行最大手、クレディ・スイスのトップ辞任劇は、そのことを世界に印象付けた。

このコンテンツは 2020/11/05 08:30

大手銀行の多くは年次報告書で、多様性やマイノリティー(少数派)奨励が大切だと謳っている。人材コンサルタントのDHRインターナショナルはこう結論づける。そこでいう「ダイバーシティー」とは、従業員が性別や民族、性的指向、年齢、宗教など様々な要因に関し多様であることを意味する。

クレディ・スイスのCEO辞任劇

ティージャン・ティアム氏(58)がクレディ・スイスのCEOを辞任したのは今年2月。それから8カ月後の10月初め、米ニューヨーク・タイムズ紙がコートジボワール出身のティアム氏辞任の背後に、人種差別的な意味もあったのではないかと疑問を投げかける記事を掲載し、話題になった。

同紙は明言こそしなかったものの、ティアム氏の肌の色が少なからず影響を与えたとの結論を行間ににじませた。ウルス・ローナー会長の誕生日パーティーでは、黒人パフォーマーが用務員に扮するなどティアム氏が人種差別的だと感じた余興があったことを例に挙げた。クレディ・スイスはこの件について英ガーディアン紙で謝罪する事態となった。

クレディ・スイスは昨年、幹部行員を私的に尾行していた問題が発覚。ティアム氏はこの内偵スキャンダルが明るみになった後、辞任した。

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だがルツェルン応用科学大学で企業の多様性を研究するアニーナ・クリスティーナ・ヒレ氏は、銀行の動きは遅いと指摘する。スイスの雇用主、特にスイスの大手銀行は総じて前向きではあるが、多様性の問題を解決するには政治や社会からの追い風が必要だという。

日の当たるジェンダー問題

多様性に関しては、他の業界と同じように銀行業界は主に男女平等に重点を置いてきた。ヒレ氏も「今日『多様性』と言えば、多くの人はジェンダーを連想する」と話す。「おそらく、ジェンダーが近年の大きな政治的テーマであり、また国民の半分が当事者だからだろう」

その点を鑑みれば、ジェンダーの分野で最も多くの改革が進められてきたのも不思議ではない。経営コンサル企業のオリバー・ワイマンは昨年末にまとめた調査で、銀行が男女平等について並べてきた美辞麗句はようやく努力と献身が伴い、具体的な成果に結びついたと結論付けた。今では経営幹部の2割が女性になった。だが銀行員全体では半数以上が女性であることを踏まえると、この割合は明らかに少ないと釘を刺した。

日の当たらない少数派

ジェンダーが光を浴びる一方で、マイノリティーはその陰に隠れている。ルツェルン応用科学大学のアンケート調査では、回答したスイス企業の92%が多様性を巡る経営戦略にジェンダーが含まれていると答えた。だが民族の多様性も含めている企業は49%にとどまった。

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具体的な対策についてはさらに明暗が分かれる。「女性のキャリアアップを促す社内グループ・ネットワークがある」としたのは回答企業の54%だったが、民族的な少数派に関して同様の枠組みがあるのはわずか9%だった。

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「優秀」なクレディ・スイス

クレディ・スイスの現状はどうか?性別の多様性に関しては、業界内では成績が良い方だ。監査役会13人のうち3人が女性で、ちょうど業界平均と同じだ。取締役会はさらに優秀で27%が女性。上級管理職全体でも22%と、業界全体の17%未満(SKEMAビジネススクール調べ)を上回る。

ヒレ氏は多様性に関する取り組みについて、複数の企業を定点観測している。組織全般や多様性戦略のほか、年齢や性別、国籍、宗教、健康・障害別の従業員構成など約50項目をオンラインで調査。その結果から「多様性指数」を算出している。最新版の2018年版で、クレディ・スイスはイケアやポール・シェラー研究所(PSI)を置いてトップの座を獲得した。

スイス第2の銀行UBSは2014年まで同調査に参加したが、上位10位以内には入らなかった。同年クレディ・スイスは4位だった。

ヒレ氏は、クレディ・スイスが多様性において優秀なのは当然だとみる。経験則として、巨大な多国籍企業は基本的に多様性をより意識している。「平等なだけでは経済界で成功できない。だが、労働力をより有効活用できるといった多様性の利点を指し示せば、企業側もそれによく反応する」

まだ道半ば

多様性の議論、そして「#BlackLivesMatter(黒人の命が重要)」運動が起こった米国では、大企業は従業員の多様性に関するデータを当局に提出する義務がある。スイスにはそうした仕組みはなく、大銀行が民族の多様性をおざなりにしても誰も責任をとる必要はない。

米ワシントンポスト紙は昨年、銀行に関するさまざまなデータを分析し、「銀行は黒人管理職の数を増やすのに苦戦している」と結論づけた。

米下院の金融サービス委員会による調査も同じ結論に達した。大手銀行は依然として白人男性に手綱を握られている。やるべきことはまだたくさんあると指摘した。

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