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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

スイスのメディアが報じた日本のニュース

握手する岸田文雄首相と習近平国家主席
岸田文雄首相は16日、訪問先の米国で習近平国家主席と1年ぶりに首脳会談。東シナ海などにおける中国の軍事活動に「深刻な懸念」を示した Keystone

先週(11月10日〜11月19日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから4件をピックアップ。要約して紹介します。

「日中首脳会談」「7~9月期のGDP、0.5%減」「猿之助被告に両親の自殺幇助で有罪判決」「『闇バイト』の実態」「女性受刑者への虐待」「スイス人選手が日本の車いすマラソンでまた優勝」「高まる日本の空き家需要」「XジャパンのHEATHさんが55歳で死去」「自転車で日本縦断体験記」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「日中首脳会談」「『闇バイト』の実態」「女性受刑者への虐待」「高まる日本の空き家需要」をご紹介します。

処理水と軍事的脅威で応酬

岸田文雄首相は16日、APEC首脳会議などに出席するため訪問した米国で、中国の習近平国家主席と1年ぶりに会談。フランス語圏では「岸田氏、習主席に中国の軍事活動への懸念を伝える」を見出しとする仏AFP通信の記事が無料紙20.minや地方紙トリビューン・ド・ジュネーブに掲載されました。岸田氏が会談後の記者会見で「日本付近での中国の軍事活動の増大とロシアとの協力について深刻な懸念を表明した」と説明したことを紹介。また、日本産海産物の輸入制限の即時解除を求めたことも報じました。でも、これらの記事は習氏側の意見や発言を取り上げていません。

一方、イタリア語圏ではスイスの通信社Keystone-SDAが「汚染水(acqua contaminata)」の流出が「全人類の健康」に影響を与えると懸念する習氏の発言を見出しに取りました。これに対し岸田氏が中国による日本産魚介類の輸入禁止措置の解除を求めたことや、中国の軍事活動への懸念を表明したことにも触れました。ただ主要メディアには掲載されませんでした。(出典:20.min外部リンクトリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/仏語、SDA/伊語)

「闇バイト」 オンラインで募集された犯罪者軍隊

仏語圏の20.minは15日、ソーシャルメディアで犯罪実行者をで募る組織的詐欺「闇バイト」の実態に迫るAFP通信の記事を転載しました。

不審な求人は昔から存在したものの、かつては雑誌広告や公衆トイレのステッカーが媒介していました。しかしソーシャルメディアの出現により、犯罪組織は匿名性を享受しながら「エアコンの効いた部屋でコーヒーを飲みながら、携帯電話1つで強盗集団を組織できる」ようになった、という社会学者の廣末登氏のコメントを引用しました。

日本の警察がこれらの犯罪組織の検挙に苦労している姿も紹介。警察はAFP通信の取材に、犯罪組織は「新兵」を「駒のように搾取し、廃棄している」と強調しました。(出典:20.min外部リンク/仏語)

赤ちゃんから引き離される女性受刑者

人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は14日、日本の女性受刑者に対する人権侵害を追及する報告書外部リンクを発表しました。フランス語圏の日刊紙ル・マタンはこれを報じたAFP通信の記事を転載しました。

報告書は日本で収監されている多くの女性が「受刑者のニーズと権利に対応する刑務所のリソースが乏しい」ために人権侵害に苦しんでいると指摘。2011~17年に拘留中に出産した女性184人のうち、赤ちゃんとの同居を許可されたのはわずか3人だったことなどのデータを紹介しました。(出典:ル・マタン外部リンク/仏語)

空き家となった古民家

日本では空き家となった古民家の需要が高まっている―ドイツの通信社DPAのこんなドイツ語記事をnau.chなど複数のスイスメディアが転載しました。

空き家となった古民家への関心が外国人の間で高まっており、購入だけでなく賃貸という手段も広がっています。ただし何年も人が住んでいなかった空き家では、入居前に高額な維持費や修繕費が係ることも多く、書面での契約が必須だといいます。

日本の素晴らしい伝統建築を用いた木造住宅には、耐用年数が数百年を超えるものもあります。しかし、戦後の好景気や高度成長期にそうした民家は不快で未開なものとみなされ、代わりに建てられたプレハブ住宅が景観を損なってきたといいます。日本で古民家再生に取り組むドイツ人建築家カール・ベンクス外部リンク氏はDPAの取材に「残念ながら日本には文化財を保護する仕組みがない」と嘆きました。(出典:nau.ch外部リンク/ドイツ語)

先週のスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「パーキンソン病患者が転ばず歩けるように 脊髄に電気刺激」(記事/日本語)でした。他に「チューリヒでセカンドハウスが増加」(記事/英語)、「2030年冬季五輪招致目指すスイス 『持続可能な』大会は実現するか」(記事/日本語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は11月27日(月)に掲載予定です。

校正:大野瑠衣子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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