レディ・スイスは取引損失や訴訟、取り付け騒ぎなどが重なり、2022年に73億フラン(約1兆円)の赤字を計上した
Keystone-sda-ats Ag Switzerland
スイスの金融当局は28 日、クレディ・スイス(CS)と破綻したグリーンシル・キャピタルとの取引に関する調査報告書を発表した。CSが「重大な監督義務違反を犯した」と結論づけ、リスク管理の見直しを命じた。
このコンテンツが公開されたのは、
金融市場監督機構(FINMA)は声明外部リンクで、CSはグリーンシルに対する投資に関して「一部、虚偽や楽観的すぎる」報告をしていたと指摘した。
ある事例では、リスク管理責任者が投資の危険性を警告したが、上級管理職が握り潰したという。
英金融会社のグリーンシルは企業間の売掛債権を証券化する「サプライチェーン・ファイナンス」を営んでいた。CSは2017年から同社に4本のファンドを立ち上げ、総額100億ドル(約1兆2500億円)の顧客資金をつぎ込んだ。
だが資金繰りに失敗しグリーンシルは2021年に破綻。CSがこれまでに回収できた投資は74億ドルにとどまる。
これを受け、FINMAは損失が発生した原因を調査していた。報告書では、クレディ・スイスはグリーンシルに融資も行っており利益相反にあったことも指摘した。
FINMAはCSが最重要顧客(約500社)とのリスクを定期的に執行役員レベルで見直す必要があると指摘。最上級管理職600人の責任範囲を文書化することも求めた。
またCSの元マネージャー4人に対して執行手続きを開始した。スイスの金融業界から最長5年追放される可能性がある。
CSは同日、FINMAの報告内容を認め、すでに複数のマネージャーや行員を解雇し、リスク管理の見直しに着手していると述べた。
目下、業績回復のために経営戦略の大幅な建て直しを進めている。
CSは取引損失や訴訟、取り付け騒ぎなどが重なり、2022年に73億フラン(約1兆円)の赤字を計上した。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
クレディ・スイス巨額損失、銀行の金融リスクを浮き彫りに
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融大手クレディ・スイスが英グリーンシルと米アルケゴスとの取引で巨額の損失を出し投資家に大打撃を与えた問題は、銀行の破壊的な側面を浮き彫りにした。規制当局や政治家はクレディ・スイスがつまずいた原因を洗い出し、今後、リスク査定の失敗から投資家を守るためには何ができるかを追求している。
もっと読む クレディ・スイス巨額損失、銀行の金融リスクを浮き彫りに
おすすめの記事
クレディ・スイスはどこで道を誤ったのか
このコンテンツが公開されたのは、
スイス金融大手クレディ・スイスはなぜ経営危機に陥ったのか?多くの分析で指摘されるのは、グローバルバンクとして慎重であることよりも利益を優先する経営陣に率いられ、スイスというルーツを見失っていたという点だ。
もっと読む クレディ・スイスはどこで道を誤ったのか
おすすめの記事
クレディ・スイス決算にみる6つの悲惨な数字
このコンテンツが公開されたのは、
クレディ・スイス(CS)の2022年決算は失望感の大きい内容だった。大規模なリストラを進めるなか、もはや経営に一分の隙も許されなくなった。
もっと読む クレディ・スイス決算にみる6つの悲惨な数字
おすすめの記事
異色のスイスバンカーが起こした異例の金融犯罪
このコンテンツが公開されたのは、
スイス金融史上最大の刑事裁判が25日始まる。ライファイゼン銀行の元最高経営責任者(CEO)ピアリン・ヴィンセンツ被告による詐欺、横領、贈収賄事件だ。
もっと読む 異色のスイスバンカーが起こした異例の金融犯罪
おすすめの記事
クレディ・スイスの資本不足はどれほど深刻なのか
このコンテンツが公開されたのは、
クレディ・スイス(CS)はここ数日、ソーシャルメディア上で出回る財務の健全性に関する噂に翻弄されている。株価の急落やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の急騰は、銀行の健全性とは無関係だと投資家や顧客を説得するのに必死だ。
もっと読む クレディ・スイスの資本不足はどれほど深刻なのか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。