銀行員たちは、税務情報の交換にあたって名前が公開されないよう訴えていた
© Keystone / Gaetan Bally
スイス連邦行政裁判所は10日、スイスの銀行が持つ税務データを他の国に引き渡す際に、銀行の従業員、弁護士、会計士などの第三者個人の実名は明記されるべきではないとの判決を下した。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦財務省は昨年、税務情報とともに専門家の名前も外国当局に引き渡すよう決定。これに対してスイス情報保護委員会が行政裁に異議を申し立てた。行政裁は事務的な役割しか負っていない私人のプライバシーは尊重されるべきだとして、情報保護委員会の訴えを認めた。
銀行顧客の脱税を手助けしたともいえる弁護士らの名を明かすべきかどうかは、過去数年大きな議論を呼んでいる。財務省は、個人名もともに提供することは、情報交換制度の文言・精神を守るために不可欠だと主張している。また、名前を加工するために膨大な書類をくまなく精査するのは時間と費用がかかりすぎるだろうとも述べる。
行政裁はこれに対し、個人名の引き渡しは人権やスイスのデータ保護法に基づくプライバシーの権利を侵害すると言い渡した。
判決により、脱税容疑で捜査を受ける銀行の顧客と関係がある第三者の名前を匿名加工するか、該当者に事前の了承を得る必要が出てくる。このルールは、書類に誤って掲載されてしまった第三者についても適用される、と裁判所は明言した。
おすすめの記事
宇宙研究
国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
このコンテンツが公開されたのは、
日本製とドイツ製のロボットが、国際宇宙ステーション(ISS)で「宝探し」をして遊んだ。スイス・ルツェルン応用科学芸術大学(HSLU)もこの実験に貢献した。
もっと読む 国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
おすすめの記事
スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)が、新フラン札のデザイン案12点を発表した。来月7日まで、インターネット上で一般投票が行われる。
もっと読む スイス中銀、新紙幣デザイン12案発表 一般投票募る
おすすめの記事
気候適応
ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブ州では13日、バスやトラム(路面電車)など公共交通機関が終日無料となった。オゾン濃度が急増したことへの対応で、スイスでは初めての措置だ。
もっと読む ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
おすすめの記事
スイスで記録的暑さ 政府が警告
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。
もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
おすすめの記事
文化
知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
このコンテンツが公開されたのは、
ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。
もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞
おすすめの記事
貿易政策
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
貿易政策
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
農業ビジネス
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
続きを読む
おすすめの記事
スイス銀行の秘密主義はゴーン口座を守るのか
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行は顧客の情報を国家権力にも明かさないことで知られ、世界中から資産を集めて金融国家にのし上がった。そのスイスが今、日本の経済界を揺るがした大スキャンダルの捜査協力に乗り出している。秘密主義の看板は10年前に下ろされたが、スイスの秘匿体質は本当に変わったのか?
もっと読む スイス銀行の秘密主義はゴーン口座を守るのか
おすすめの記事
イタリア、スイスに銀行顧客情報の開示を要請
このコンテンツが公開されたのは、
イタリアは脱税調査の一環で、スイス税務当局に対し、2015、16年時点におけるUBS銀行のすべてのイタリア人顧客情報を開示するよう要請した。
もっと読む イタリア、スイスに銀行顧客情報の開示を要請
おすすめの記事
スイス最高裁、仏当局へのUBS顧客データの移転を承認
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所は、スイスの銀行UBSの約4万人の顧客に関するデータをフランスの税務当局に引き渡すべきであるとの判決を下した。この決定は、顧客の情報を口外しない秘密主義を守ってきたスイスの銀行業界にとって大きな意味を持つ。
もっと読む スイス最高裁、仏当局へのUBS顧客データの移転を承認
おすすめの記事
巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
このコンテンツが公開されたのは、
多国籍企業が税制上の抜け穴を利用した課税逃れを防止するため、国際的な課税ルールの抜本的な改革が急ピッチで進められている。6月の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でも、巨大IT企業への「デジタル課税」ルールが焦点の一つになった。ただ、低税率で多国籍企業を誘致してきたスイスは、国際課税ルールの強化で大きな痛手を受ける可能性がある。
もっと読む 巨大IT企業への課税、スイスに痛手か
おすすめの記事
仏司法当局、UBSに約4千億円の罰金命令
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大銀行UBSが脱税と資金洗浄をほう助した疑惑をめぐり、フランスの裁判所は20日、同行に有罪判決を出し、37億ユーロ(約4千億円)の罰金を命じた。
もっと読む 仏司法当局、UBSに約4千億円の罰金命令
おすすめの記事
スイス連邦裁、脱税ほう助告発者は「銀行の秘密保持義務に違反せず」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦最高裁判所は先週、プライベートバンクのジュリアス・ベアの脱税関与を告発した元従業員のルドルフ・エルマー氏は、スイスの銀行に課される秘密保持義務に違反していないとの判決を下した。
もっと読む スイス連邦裁、脱税ほう助告発者は「銀行の秘密保持義務に違反せず」
おすすめの記事
スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)が、国際的な不正取引に関わったとして金融当局の勧告処分を受けた。ただ営業停止や罰金などの処分がなかったことに首をかしげる専門家もいる。
もっと読む スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。