ベルン美術館はトマ・クチュール画「Portrait de jeune femme assise(仮訳:腰掛ける女性の肖像)」を本来の所有者の相続人に返還した
Mick Vincenz © Kunstmuseum Bern / Kunst- und Ausstellungshalle der Bundesrepublik Deutschland GmbH
ナチスによって略奪されたトマ・クチュールの絵画は、美術収集家グルリットが秘蔵していた作品の一つ。この貴重な「グルリット・コレクション」は後にベルン美術館に継承され、今回、ドイツに住むジョルジュ・マンデルの相続人に返還された。マンデルはユダヤ人政治家かつレジスタンス指導者だった。
このコンテンツが公開されたのは、
ベルリンのマルティン・グロピウス・バウ美術館で8日に行われた式典では、ドイツのモニカ・グリュータース文化大臣が19世紀のフランス人芸術家トマ・クチュール(1815-1879)の描いた「Portrait de jeune femme assise(仮訳:腰掛ける女性の肖像)」を紹介した。
専門家は2017年、1944年に暗殺されたマンデルからこの絵が略奪されたことを確認した。戦後、絵画の盗難を届け出た際、マンデルのパートナーは証拠としてキャンバスに小さな穴があることを指摘していた。
8日の式典には、2014年に亡くなったグルリットのコレクションを受け継いだベルン美術館の代表とフランス大使館の特使もグリュータース文化大臣に同行した。
2012年、ドイツ人の故コーネリウス・グルリット氏の自宅アパートで1500点を超える大量の作品が発見された。これらはナチスのアドルフ・ヒトラー政権が退廃芸術だとしてユダヤ人から奪ったりだまし取ったりした作品や、ドイツの美術館から押収した略奪作品を含んでいた。彼の父親、ヒルデブラント・グルリットは、1938年以来ナチスの美術商として働いていた。
グルリット氏の遺言で、氏のコレクションは2014年5月にベルン美術館に寄贈された。ドイツ政府は本来の所有者調査のため、作品を約500点ドイツに保留していたが、時が経過しすぎて所有者の解明が難航していた。
クチュールの肖像画は、グルリット・コレクションから相続人に返還された5点目の作品。6点目の作品もナチスによる略奪が確定している。
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
続きを読む
おすすめの記事
スイス連邦の秘蔵アートコレクション デジタル化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内務省文化局は、これまで芸術支援プログラムの一環で何千点もの芸術作品を取得してきた。従来、一部の関係者しかアクセスできなかったこの秘蔵コレクションは近い将来デジタル化され、公に閲覧することが可能になる。(SRF、swissinfo.ch)
もっと読む スイス連邦の秘蔵アートコレクション デジタル化へ
おすすめの記事
ナチス略奪美術品の返還作業 スイスの歩みは遅く
このコンテンツが公開されたのは、
ナチスに略奪された美術品の出所確認を美術館に求める「ワシントン原則」。スイスも署名しているが、国内での作業の進み具合はまちまちだ。
もっと読む ナチス略奪美術品の返還作業 スイスの歩みは遅く
おすすめの記事
ナチスが略奪?貴重な美術品をベルン美術館が公開
このコンテンツが公開されたのは、
ナチスに略奪されたとみられる貴重な美術品を集めた作品展「Gurlitt: Status Report Part 2(グルリットの状況報告 第2部)」が、ベルン美術館で開かれている。
もっと読む ナチスが略奪?貴重な美術品をベルン美術館が公開
おすすめの記事
ナチス略奪の「退廃芸術」コレクションがついに公開
このコンテンツが公開されたのは、
ナチスに略奪された絵画のコレクション展「Entartete Kunst(退廃芸術)」が、ベルン美術館で2日、始まった。これらの作品が一般公開されるのは初めて。来年3月4日まで。
もっと読む ナチス略奪の「退廃芸術」コレクションがついに公開
おすすめの記事
スイス有数の美術館、ナチスの略奪美術品を所蔵か
このコンテンツが公開されたのは、
出版された本のタイトルからは、「地獄の臭い」がする。歴史学者でジャーナリストのトーマス・ブオムベルガーさんと、美術史学者ギド・マニャグアーニョさん共著の「Schwarzbuch Buehrle(ビュールレ黒書)」が出版…
もっと読む スイス有数の美術館、ナチスの略奪美術品を所蔵か
おすすめの記事
ナチス略奪画 ベルン美術館が遺贈受け入れを決定
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツは今後、遺贈される絵画やデッサン、スケッチなど計1200点の出所を調べていく方針。また、ナチスドイツから逃れたユダヤ人家族の遺族が絵画の返却を求めてベルン美術館を訴えた場合に生じる法定費用は、同国が負担するという…
もっと読む ナチス略奪画 ベルン美術館が遺贈受け入れを決定
おすすめの記事
スイス銀行のホロコースト犠牲者に対する賠償合意はどのように結ばれたのか
このコンテンツが公開されたのは、
第二次世界大戦中、ホロコースト犠牲者がスイスの銀行に保有していた資産が損失した問題で、スイスの銀行が対象となるユダヤ人へ賠償金を支払うことに合意してから20年が経った。スイスの銀行が起こしたこの「休眠口座」スキャンダルをスイス公共放送(SRF)のドキュメンタリー映像が追った。
もっと読む スイス銀行のホロコースト犠牲者に対する賠償合意はどのように結ばれたのか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。