北京五輪のメーンスタジアムなどを手掛けたことで知られるスイスの建築事務所ヘルツォーク&ド・ムーロンが、スイスの高速道路上に礼拝空間を手掛けることになった。スイス東部を走る高速道路A13上にできる予定。
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高速道路上の礼拝堂は隣国ドイツで広く普及しており、同国内に46カ所ある。
建設予定地のグラウビュンデン州アンデアーのイェンス・ケーレ牧師はオンラインニュースサイト「クァーツ」に対し、高速道路上の礼拝堂はその匿名性にメリットがあると話した。自分のコミュニティの教会とは疎遠な人たちが気軽に訪れることができるからだという。
スイスでは特定の宗教に属さない人が増えている。高速道路上の礼拝堂は常に空いており、信者は好きな時にお祈りができる。
ヘルツォーク&ド・ムーロンは声明で「アンデアーの礼拝堂は、用地、ロケーション、道路を考慮した」とコメント。「明白な宗教サインやシンボルは極力避けた。十字架やキリストの像といったキリスト教のシンボルもできるだけ減らした」という。
ヘルツォーク&ド・ムーロンは、バーゼル出身の建築家ジャック・ヘルツォーク氏とピエール・ド・ムーロン氏が設立。北京五輪のメーンスタジアム北京国家体育場(通称・鳥の巣)や、独ハンブルクのコンサートホール「エルプフィルハーモニーホール」などを手掛けた。「高速道路の教会」のアイデアは、中世の道端のチャペルから来ているという。
礼拝堂はウーリ州エルストフェルドの高速道路A2にもある。
「人間の耳のように」
高速道路A13は、アンデアー村とクール市、南部サン・ベルナール峠を結ぶルート。この建物は、高さ10メートルの壁4枚が互いに寄りかかるデザインだ。
ヘルツォーク&ド・ムーロンは「高速道路の隣という立地上、騒音対策が必要であることはわかっていた」。「1つのドアで内部と外部の音響・空間を隔てるのではなく、人間の耳のように、異なる部屋の空間を連続させた」という。
地上に立つ礼拝堂の広さは130平方メートル。らせん状の階段を降りると、地下に3つの礼拝堂(計150平方メートル)がある。
同事務所は「奥に行くほど、高速道路からの音が弱まり、自分の足音が強くなる」という。
「最後の部屋に着くと、強い日の光が礼拝堂の中央に降り注ぎ、村や緑豊かな牧草地、森の風景が眼前に広がる。草木の知覚は着色ガラスの赤色によって高められる。沈む夕日が赤いガラスを通して礼拝堂を照らし、それが外の風景とつながる」
この礼拝堂では宗教サービスは提供しない。ケーレ牧師によると、聖書、十字架、礼拝に使うろうそくのほか、自分の思いを書き込める本を置く。
建設資金はすべて個人の寄付によって賄われる。プロジェクトは財団が管理し、順調に行けば2022~23年に着工予定という。
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