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スイス軍F/A-18戦闘機墜落事故 パイロットの遺体発見

墜落したスイス空軍F/A-18戦闘機とパイロットの遺体がスイス中央部のスステン峠付近で発見された Keystone

今月29日に発生したスイス軍F/A-18戦闘機の墜落事故で、連邦国防省は31日、パイロットの遺体を発見したと発表した。

 パイロット男性(27)の死亡確認をうけ、連邦国防省は「心からお悔やみを申し上げる」と遺族に対する深い哀悼の意を表明。男性の遺族らの対応は現在、スイス軍が行っていると話した。

 これまでに墜落事故の調査委員会が設置され、既にスステン峠付近の山中で発見されている機体は、破片の回収作業が進められている。墜落場所は標高3千メートル以上にある雪に覆われた氷河のくぼ地だった。

 戦闘機とパイロットの捜索活動は行方がわからなくなった29日から行われていたが、捜索初日は悪天候のため事故現場とみられる場所に足を踏み入れることが不可能となっていた。

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スイス軍F/A-18戦闘機 墜落事故

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途絶えた交信

 墜落した戦闘機は29日、厚い雲の中、別の1機と共にF-5タイガー戦闘機との飛行を想定した訓練中だった。マイリンゲン軍用飛行場を午後4時01分に飛び立ったあと、同時刻05分の無線交信には応答したが2度目の応答はなく、パイロットとの交信が途絶えた。29日の夜は悪天候のため捜索が中断されていた。

 捜索が再開された30日朝はウーリ州とベルン州の上空が飛行禁止空域に定められたほか、航空救難隊とチューリヒ州警察による捜索活動に19人の山岳救助専門家が加わり、行方が分からなくなった戦闘機とパイロットを捜索した。

 29日、ベルンで開かれた記者会見でパイロットの安否について尋ねられたスイス空軍のアルド・シェレンベルク司令官は、「我々は希望を持つと共に、祈っている」と話していた。

相次ぐ空軍機事故

 7月には、スイス北部を飛行中のエルアル・イスラエル航空機に爆弾が仕掛けられているとの連絡を受けたスイス空軍の戦闘機が緊急発進した。現在スイス空軍は空域の安全保障を強化しており、2020年までに戦闘機2機で年中無休・24時間体制の警備を目指している。

 空軍機の事故が相次いでいるのは、出動要請の増加によるものではないかという批判も聞かれていた。昨年10月には2人乗りのF/A-18戦闘機がフランスで飛行訓練中に墜落しパイロット1人が死亡、13年には1機が墜落。今回の事故は過去3年間で3度目となり、スイス空軍はF/A-18戦闘機3機を失った。

 今年6月にはオランダの航空ショーに参加していたスイス空軍の曲技飛行隊「パトルイユ・スイス」のF5タイガー戦闘機2機が衝突。パイロットは脱出して無事だった。

 過去20年間、スイス空軍の事故はヘリコプターを含め12件発生しており、21人が死亡している。

現在のスイス空軍機

 スイス空軍は当初、1人乗り26機、2人乗り8機、合計34機のF/A-18戦闘機を保有していたが、今回の事故で30機に減少。その他にもF5タイガー戦闘機36機を保有するが、その老朽化が指摘されている。

 政府は空軍戦闘機の刷新を図り、34億フラン(約3550億円)の予算でスウェーデン製のグリペン戦闘機22機の購入を予定していたが、14年5月の国民投票で否決された。

 

(英語からの翻訳&編集・由比かおり&大野瑠衣子)

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