スイス軍は30日、退役処分となった戦車「レオパルト2」25両のうち9両を製造元の独ラインメタル社に引き渡すためドイツに移送した。ロシアによるウクライナ侵攻以降初めて、スイスが欧州国家に間接的に武器を援助したことになる。
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両国間の再販協定に基づき、戦車はドイツまたは北大西洋条約機構(NATO)・欧州連合(EU)加盟国内の軍備を補完するために使われ、間接的であってもウクライナには供与されない。
スイス連邦国防省装備局(armasuisse)の発表外部リンクによると、9両は列車でドイツに輸送した。31日にはさらに9両が列車でドイツに輸送される。残り7両は道路輸送で運ばれるという。
スイス連邦議会は昨年9月、製造元への売却を条件に戦車を退役処分にする案を可決した。同11月にスイス連邦内閣(政府)がドイツによる戦車の輸出申請を承認。これを受けて装備局が独ラインメタル社と売買契約を結んだ。
スイス軍は現在、運用中のレオパルト2を134両保有している。これとは別に96両を保管しており、うち25両を今回ドイツに売却した。
ラインメタルは戦車をオーバーホールした後、戦車や部品をドイツ・NATO・EU加盟国内に納入する。解体された部品の一部はスイス軍にも無償で提供される。
両者は販売額と同額をスイス産業向けにラインメタル社に追加注文することにも合意している。スイス軍の現役部隊の射撃管制コンピューターもメンテナンスされる。
ヴィオラ・アムヘルト国防相は議会で、スイスの中立の観点から戦車の売却は正しく賢明だったと述べた。スイスは欧州の安全保障に貢献しており、パートナー国が防衛能力を強化できることはスイスの利益になると強調した。
議会では右派の国民党(SVP/UDC)が退役戦車の輸出に反対票を投じた。中道右派議員の一部も批判の声を上げ、スイス軍の戦力が不足するとの主張もあった。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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