スイス連邦外務省は、今後10年の国の外交政策がどうあるべきかを示す「ビジョン」を策定した。デジタル化、移民、EUとの関係 を重要課題に挙げている。
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カシス外相はビジョンを策定することで、スイスの外交政策に新たな刺激を与えたいと考えている。このため外相は2018年秋、「2028年のスイス外交政策のビジョン」を策定するワーキンググループを設立した。
外務省は、デジタル化、気候変動、政治的権力の変遷、地政学的な緊張の高まり、貿易紛争、移民、政治への信頼喪失などにより、多くの事象が変化し、それがスイスに影響を及ぼしていると強調する。
外務省によると、世界は断片化して複雑さを増し、予測がますます難しくなった。こうした世界情勢の中でスイスが成功を収めることは容易ではない。スイスは明確に確立された立場から行動し、外部とのつながりを堅持しているように見せなければならない。来る課題に備え、同時に世界の秩序の中で自国の好機を逃さないようにしたいという。
極めて「爆発的な」6つの要素に重点を置いた。スイスの国益と価値、外交政策と経済の役割、国民の関与、開発援助と移民、確固たる重点項目としてのデジタル化、そしてEUとの明瞭な関係だ。
ビジョンによれば、スイスの外交政策は主題に添った、地域の優先事項を追求する。外交と国内政策が緊密に組み合わさっていることや「市民サービスとスイス経済との緊密な協力」がこの国の長所だと定めている。またスイス企業の市場アクセスは極めて優先度が高い、と続ける。
経済とEU関連の分野だ。カシス外相はビジネス界に非常に近いといわれる。その一例が、外相がワーキンググループにスイス再保険とABBの幹部2人を招聘したこと。批評家らはカシス外相の外交政策が経済的利益に傾倒していると批判する。
左派の週刊紙WOZは、今回のビジョンが非常に偏向した「危険なものだ」と批判。対して右派は、国益を最優先するカシス外相の「スイスファースト」の姿勢を称賛する。
EU加盟の是非、またEUとの二国間関係についても、ビジョンの立ち位置は明確だ。つまり、関係を持つのは「あり」、結婚(EU加盟)は「なし」。EUは引き続き二国間交渉に門戸を広げているが、スイスは近年、態度を硬化させている。カシス外相は「主権を最大限に尊重した、可能な限りベストな経済的統合」を目指す。
スイスの雑誌Beobachterは、カシス外相はこれまでの方針を全く新しくしたわけではないが、パラダイムシフトを行っていると指摘する。たとえば、開発協力においてスイスの関心をより強く示すこと、などだ。
移民に関しても、人道主義の伝統を維持するが、その「戦略的な意味」にも留意する必要があるとしている。左派政党はスイスが将来、移民政策により厳しい制限をかけるのではないかと危惧する。
このビジョンをめぐっては、メディアや政治で議論が交わされていくだろう。スイスの外交政策が目指す方向は、まだはっきりとは定まっていない。直接民主制が根付く政治文化、そして欧州の真ん中という地理的理由はチャンスにもなるが、ある意味での限界にもなりえる。だが、カシス外相のビジョンは「絵に描いた餅」ではない。実際、政府は開発援助に向けて路線転換し、一定の役割を果たしているからだ。
(独語からの翻訳・宇田薫)
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